ひとり旅 220427 ロシア編(12 巡洋艦モスクワ バルチック艦隊 知床半島

 

 

 

 

 

ロシア海軍の旗艦モスクワ

 

CNNによると「米国防総省の高官は2022年4月15日、ウクライナの対艦ミサイル”ネプチューン”2発が(ロシアの巡洋艦モスクワに)命中したことを確認した」米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると「露海軍で艦隊の旗艦が戦時に沈没したのは、1905年の日露戦争日本海海戦で、バルチック艦隊の旗艦が日本の連合艦隊の攻撃により撃沈されたのが最後という」

 

 

対馬北部「日本海海戦」の海 2021.10.01

 

かつてこの沖で東郷平八郎率いる連合艦隊

圧倒的戦力を誇るバルチック艦隊が衝突し

東洋の小国日本が軍事大国ロシアに対し

信じがたい勝利を収めました

 

 

バルチック艦隊の残存兵が上陸した対馬北部西泊 2021.10.01

 

1905年5月27日、日本海海戦の翌日、対馬北部の西泊に流れ着いた100人以上のロシア兵は「井戸で体を洗い」「傷の手当を受け」「六軒の二階建ての家に分宿」する等「土地の人々から手厚いもてなしを受けた」と碑に記されています。西洋の騎士道と東洋の武士道が生きていた時代の話ですが、異国の漂流兵を迎えた対馬の人たちの気持ちが、現代のわれわれと大きく違うことはないでしょう。

 

 

殿崎公園に設置されたレリーフ下の文言 2021.10.01

 

皇国の荒廃ハ

此ノ一戦ニ在リ

各員一層奮励努力セヨ

 

 

同上 2021.10.01

 

「敵艦見ユトノ警報ニ接シ、連合艦隊ハ直チニ出動、之ヲ撃滅セント欲ス」との檄文は司令長官東郷平八郎の意であり「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」は当日の天気予報です。この海戦に敗北しておれば日本国の歴史は違っていたはず、まさしく「皇国の荒廃」はこの一戦にありました。「坂の上の雲」の主人公・秋山真之がさりげなく置いた「天気予報」は決死の覚悟の檄文と情緒深く重なります。

 

 

ネットより

 

砲撃を受けた瞬間死を迎える場にあってなお秋山参謀が「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」と韻文めいた一文を付加したのは、万葉集古今和歌集以来のヤマトの伝統なのでしょうか。秋山真之のふるさと愛媛県松山市は、正岡子規が句を詠み、夏目漱石が「坊ちゃん」を書いた土地でもあります。軍事と文学が違和感なく溶け合った不思議な時代でした。司馬遼太郎が40代を捧げた大変な労作「坂の上の雲」は、ひょっとしてこの一文に支えられてのことではなかったかとも、、

 

 

対馬町西泊殿崎公園の慰霊碑 2021.10.01

 

「2005年5月27日ロシア政府が建立」とあり

ロシア兵5045人、日本兵117人の名が記されています

 

1979~1989年のアフガニスタン侵攻において旧ソ連軍は7000人ほどの死者を出したといわれます。2022年4月現在の特殊軍事作戦⇒ロシア・ウクライナ戦争におけるロシア兵死者数は5000人とも15000人とも伝えられますが、「日本海海戦」ではわずか1日の海戦でロシア兵5045人+日本兵117人の命が失われたことになります。板子一枚下は地獄でした。

 

それにしても露日の死者数の差をどう捉えればよいのかと碑の前で戸惑いました。図を拡大すれば3枚のプレート上縦29列がロシア兵であり、右端1列のみ日本兵の名が記されています。意欲、戦力、状況において日本側有利ではあったにせよ全く一方的な戦いに終わりました。これだけの大敗北を喫した艦長ないし司令官は船とともに沈むのが筋かと思われますが、ロシアの司令官ロジェストベンスキー中将は、自軍兵士5000余名の死者を出しながら捕虜となり、日本の病院で手当を受けています。戦争以前に日露の民族性のちがいを考えざるをえません。

 

 

殿崎公園の国道脇に置かれた巨大なレリーフ 2021.10.01

捕虜となったロジェストベンスキー中将を見舞う東郷平八郎

 

戦争とは国家と国家の争いであって個々人に恨みがあるわけではありません。知らない海で、知らない敵に砲を向け、敗れた敵兵を対馬の漁民はあたたかく迎えました。いくさが終わればひとりの人間であり、昨日まで敵対した日本国軍人に敗残兵を蔑む気持ちは全くなかったはずです。ましてや奴隷として強制労働させようなどという発想は日本人にはありません。

 

肉弾戦をともなう陸戦とちがい敵と味方が砲弾のやりとりをする海戦は、一種の舞台ともいえ、個人の恨みは発生しにくい戦闘です。芝居がはねたら互いに人格を尊重すべしという暗黙の諒解が、海軍軍人の心にはあるように思うのです。

 

このレリーフは、捕虜となった敵将ロジェストベンスキー中将を見舞う東郷平八郎の図です。ベッドから上半身を起こしたロジェストベンスキー中将と立ったまま手を差しのべる東郷平八郎の間には、角度があります。(読み返す時間が惜しいので記憶曖昧ながら)「坂の上の雲」では、相手と水平の目線をとるため、東郷は椅子に腰を下ろしたのではなかったかと、、

 

日清戦争日露戦争で清とロシアを打ち負かし、台湾を取り、朝鮮を取り、満洲へ侵攻し、アジア太平洋戦争の緒戦で真珠湾およびマレー沖海戦で米英に圧勝した日本軍は一時期、太平洋一円を支配しましたが、1945年の夏2発の核爆弾をくらい、軍民あわせて300万柱の死者を出し、敗北しました。

 

前号で述べたことの繰り返しになりますが、凶暴な悪魔アメリカは、終戦を境に柔和なマリア様のお顔に変わり、戦後のわれわれは、奴隷として扱われることはありませんでした。かつて白人国スペインが南米で、イギリスがインドで、フランスがインドシナ半島で行った強烈な搾取が、大東亜戦争(アジア太平洋戦争)下の日本国になかったとは言えませんが、縄文の昔からのんびりと平和を食んできたヤマト国は、鬼のごとく悪辣な国家ではなかったはずです。


戦後世代のぼくらは、GHQが布石した無言のバリアに封じられ、自由な思考を失い、かつ幸せでした。その幸せも今次ロシア・ウクライナ戦争の行方によっては終わりかなと漠然と考えています。

2022.04.27記 つづく

 

 

 

 

< 2022年の現在史 >

2022.04.23知床半島の観光船がカシュニ滝の近くで消息を絶ちました。乗員乗客26名中「3歳の女の子を含む11名の死亡が確認された」「観光船でプロポーズを予定していた男性もいた」と涙を誘う記事もあります。高知でいえば、年間を通じて3月の水温が最も低く、頭から爪先までウェットスーツで身を覆っても長時間の遊泳は危険です。ダイビングのお師匠さんに「正月の朝、車のフロントガラスが凍った日に珊瑚の海を眺めてきました」と報告したところ「低体温症に気をつけなさい」とマジ声で注意されました。事故現場は3mの波、海水温は5度というから船が傾いたときの乗客の恐怖が想像されます。美しい半島の海で(恐らく)26名の幸せが失われました。合掌

 

 

世界遺産知床半島  2016.09.24

 

 

 

 

 

ひとり旅 220423 ロシア編(11  イマジン ロシア・ウクライナ戦争 大谷翔平

 

 

 

 

 

 

ジョンレノンが Imagine を書いたあと妻オノヨーコは「当初これほど大きな歌になるとは思わなかった」と語りました。静かな曲に乗せた非戦のイメージが、ベトナム戦争に嫌気が差した若者の心に浸透したのでしょう。歌の価値はファンがつくります。

 

ジョン・レノン

 

イマジン(想像しなさい)は平和を願う人々の聖書であり

異論を挟むことは許されないほど「大きな歌」ですが

ロシア・ウクライナ戦争の現在から読むかぎり

夢想家の寝言でしかありません

 

Imagine there's no Heaven
It's easy if you try
No Hell below us
Above us only sky
Imagine all the people
Living for today...

 

天国はない

地獄もない

ひとは今を生きる

 

いきなり天国を否定された宗教家は困惑したことでしょう。悪いことをしたら地獄へ落ちるぞと脅されてヒトは良い子に育ちますが、この世に地獄も監獄もないとなれば、本能の赴くまま何をしたってかまわないことになります。

 

高知県須崎市の廃高校に「今を生きる」という碑があります。かつて橋本大二郎高知県知事が揮毫したものですが、大ちゃん若かりしころ日本武道館ビートルズのライブを観たそうなので氏の記憶にLiving for todayというフレーズがあったのかもしれません。

 

Living for todayという不思議なフレーズには過去も未来もありません。昨日がなければ明日もなく、ビデオの瞬間を切り取ったような「今」を生きることが、果たして人間にできるのだろうか?

 

 

Imagine there's no countries
It isn't hard to do
Nothing to kill or die for
And no religion too
Imagine all the people
Living life in peace
 

国家はない

殺し殺されることもない

宗教さえない

 

国家がなければ戦争はありません。宗教がなければ宗教戦争はありません。戦争原因を除去すれば殺し殺されることもありません。しかし国家も宗教もない絶対平和の空間でヒトは幸せに生きられるのだろうか? 仏教的な平和状態にあって平和という言葉は意味を成すのだろうか? 世界がひとつになれば、むしろ新たな争いがつくられるのではないだろうか?

 

 

You may say I'm a dreamer
But I'm not the only one
I hope someday you'll join us
And the world will be as one

だからI'm a dreamer(だと伏線をはり)

その夢を皆で見れば(と他者をさそい)

「世界はひとつ」になるだろう(と願望をのせて)

平和がもたらされるという流れ図です

 

 

Imagine no possessions
I wonder if you can
No need for greed or hunger
A brotherhood of man
Imagine all the people
Sharing all the world
 

所有せず欲張らず

すべてを分かち合えば

飢えることもない

 

それは宗教家が肉体を痛めつけて到達しうる悟りの境地であって常人が参加できる場ではありません。ひょっとするとそれは終戦時12歳だったオノヨーコが空爆下の東京でつちかった非戦のイメージかも知れず、あるいは彼女の体に染みついた仏教的涅槃のイメージが、ジョンレノンに感染したのかもしれません。

 

 

You may say I'm a dreamer
But I'm not the only one
I hope someday you'll join us
And the world will live as one
 

みんながそう思えば

世界は「ひとつ」になる

 

平和願うジョンレノンの心に偽りはないだろうし、なればこそ世界の人々はイマジンに共感したのでしょうけれど、世界が「ひとつ」になれば逆に悪徳を迎え入れることだってあるのではないだろうか?

 

集団には引力と斥力が同時に働きます。それが身近な仲間であれ、国家群の統合状態であれ、分散した小集団が「ひとつ」になれば、すぐにも内部分裂が始まります。

 

かつてソ連という社会主義共和国連邦がありました。1991年に12の独立国家共同体に分裂したさい「ウクライナにはICBM176基、戦略爆撃機46、核弾頭は実に1592発が存在していたが、第一次戦略兵器削減条約のリスボン協定に基づいて、全てロシアの管理下におかれた」「こうしてCIS(独立国家共同体)内にロシアを中心とする統合派と、ウクライナジョージアなどからなる反統合派の2つのグループが成立することとなった」wikiとあります。

 

経済においてはルーブル圏を離脱し、西側を志向するウクライナに対し、ロシアはウクライナを引き寄せようとして「ロシア・ウクライナ戦争」を始めました。いまロシアと長い国境を有するフィンランドにも同様の動きがあり、ロシアの出方によっては新たな悲劇が作られるかもしれません。

 

 

「全ロシア将校協会」イヴァショフ会長

 

国家間の斥力はどこに発生するのか?

ウクライナ侵攻の8日前2/16(水) 6:03に配信された「全ロシア将校協会が“プーチン辞任”を要求…!」と題する記事においてイヴァショフ会長は「ロシアは、ウクライナを自分の勢力圏にとどめておきたい。どうすれば、そうすることができたのか?」「ロシアの国家モデルと権力システムが魅力的なものである必要があった。しかし、ロシアは魅力的なシステムを作ることができなかったので、ウクライナは、欧米に行ってしまった」と、恐らくは身の危険を省みず、堂々たる分析をしています。

 

上記記事は★220222ひとり旅(番外編)で引用したものです。フェイクではなかろうと思われますが、局所拡大的な記事ではあるのかもしれません。嘘と本当の境が見分けられない時代なので自分を信じる他ありませんが、「ロシアは魅力的なシステムを作ることができなかったので、ウクライナは、欧米に行ってしまった」の一文は見事です。

 

国家間の引力は「魅力」がつくり、「魅力」のなさが斥力を生みます。しかしその「魅力」が自由主義国にあるのか、社会主義を標榜する独裁国にあるのかは、にわかに判断できないところがあります。独裁者プーチンは、所得の極端な格差をもたらしたアメリカ的資本主義は、もはや公序良俗を逸脱したレベルにあり、矛盾にみちていると語ります (アメリカ人は反論できないでしょう) 。しかし旧ソビエト社会主義共和国連邦は崩壊すべくして崩壊しました。ぼくは真の社会主義は人類の理想だと思う者ですが、今のところ社会主義が独裁の別名であることは誰だって知っています。

 

仲間⇒ムラ⇒マチ⇒県と広がる最大規模の集合体が国家であり、国家が安定するためには敵性国家が必要です。ロシアという敵を迎えた今、ウクライナの民心は強固に結ばれたそうです。大戦時、米軍による空襲下の東京都民も互いにいたわり不足を補いあったそうです。

 

国家の壁が溶け

世界が「ひとつ」になるには

地球をゆるがす大災害が発生するか

宇宙人の来襲に対抗すべく

否応なしに結束するほか考えられません

 

過去も未来もなく

殺し殺されることもない

安寧を想定するのは自由ですが

仏教的涅槃のような平和は

夢想家の夢でしかありません

 

林芳正外務大臣がG7の夕食時ビートルズ博物館で「イマジン」を歌いました。即興でピアノが弾けるなんてカッコいいなと感心しつつも日本国を代表する方が、調子にのって「no countries」などと歌って大丈夫か?  氏は「イマジン」のもつ無政府主義をどう捉えているのだろう?   更に言えば報告会において日本メディアから質問も批判も出なかったのはなぜか?  まさか記者たる者がイマジンの歌詞内容を知らないわけはないだろうにと疑念は尽きません。

 

とかくネットの評判はよくない人ですが、ぼくは林芳正氏の話を聴いたことも書いた文を読んだこともないのでネット情報が嘘か本当かは判断できません。何をしても批判されるのが政治家の宿命ではありますが、本居宣長が言うところの「やまとごころ」は忘れてもらいたくないですね

 

Imagine / John Lennon & Yoko Ono

 

2022.04.23記 つづく

 

 

 

 

 

<2022年の現在史>

大谷翔平があんなことをするので

大リーグの超絶選手の間でバントが流行っています^^

投げて打って「疲れないか?」と問われたShohei君は

「疲れるってどういう状態のことですか?」と逆質問しました

なんともはや…

 

それにしても

4月21日の対アストロズ戦にはしびれました

スポーツネットの書き込みがたのしいです

 

 

 

 

ひとり旅 220419 ロシア編(10  Country roads, take me home  おいらの船は300トン コロナ サハリン2

 

 

 

職場にいたころアメリカから来た青年がぼくの隣に席をかまえました。生まれはWest Virginia州というからJohn DenverのCountry Roadsが連想され「おれも知ってるぜ」って言ったらニヤと笑って親指を立てました。

 

Country roads, take me home
To the place I belong
West Virginia, Mountain Mamma
Take me home, country road

 

カントリーロード 故郷へ連れて行け
僕が居るべきあの場所に
ウェストバージニア 母なる山
故郷へ導け カントリーロード

 

 

John Denver 訳詞ともネットより

 

世界のどこで生まれても

79億の人々には79億とおりの故郷があります

ネットの書き込みを見ていると

故郷を思う人の心はみな同じだなと思いました

 

This song is not about people that left West Virginia only. It is about everyone that left back their home, their family, friends and the place where they spend their childhood.

I am not from West Virginia but this song speaks directly to my heart. What a diamond...

 

Take me home, Country Roads

  



ひるがえって高知のCountry Roadsは何だろうと考えるとき、寄っちょれよ♪の「よさこい鳴子踊り」はありますが、ふとした拍子に祭りの歌が職場で口をついたりすると仕事ぶりを疑われそうだし^^! わが古里の「宿毛音頭」ときたらローカルすぎて人前ではちょっとナなのです。

 

しかしマグロ船のふるさと室戸市の「おいらの船は300トン」は素晴らしいです。手拍子に合わせて歌われる「むかし親父も来て働いた」「海はみどりのインド洋」なんて文句にはうなりますね。時間と空間をさらりと日常語で言い切った船乗りの歌です。初めて聴いたとき詩ってこれだと目からウロコの思いでした。

 

長い航海のあと大漁旗をなびかせて故郷の土を踏み、ドヤ顔でマイクを握ったおっさんのダミ声がよく似合います。カウンターの向こうで笑顔のママも拍手をくれるでしょう。Country roadsのようにしんとした情緒を明るくうたう歌ではありませんが、今となっては寂れた港町から離れて暮らす人たちに帰るべき故郷を指し示す悲しい歌でもあります。

 

 

室戸岬 ネットより

 

春爛漫の4月5月に

大海原と照葉樹の森に挟まれた道を

バイクで走るとサイコーの気分です

 

ちょこっと地質学をおベンキョして

ここ室戸が恐ろしい速度で隆起する

世界ジオパークであることを知ると

見えないものまで見えてきます

 

岬の西岸を徳島方面へ向かっていると

捕鯨船のふるさと和歌山県太地町

海岸風景に似ていることに気づきました

マグロ船のふるさと室戸市太地町とならぶ

クジラ船のふるさとでもありました

 

おいらの船は300トン

https://www.youtube.com/watch?v=TQETA-_fCW8

 

2022.04.19記 つづく

 

 

 

 

 

<2022年の現在史>

コロナ「2類相当→5類」指定に見直しへ、岸田首相が決断

DIAMOND ONLINE 2022.04.09 6:01配信

 

今更感はありますが、やっと動きそうです

ネット上の発言さえ封じられた井上正康医師は2年前から「2類を5類」に移せばコロナ対策は完了すると説いてきました。その後の動きはほぼ氏の予想通りに推移しています。▼ウチで働いている方が一昨日3度目のワクチンを打ち、予定通り発熱して(~~ 昨日は仕事を休みました。これまた発熱と肩痛で仕事を休んだ別の方は「4度目はえいワ」とのこと。かしこいお母さんは「あたしは元から打ってません」とおっしゃいます。

 

トランプ前大統領に「中国ウイルス」と呼ばれた本家本元の上海2000万人都市が今ロックダウンされています。おそらく朝日もNHKも伝えないニュースかと思われますが、ネットでは大変な騒ぎです。で感染の実態はといえば、蚊に食われたていどのことだから、かの国はいったい何をやってんだろと考え込んでいたところ、どうやら権力闘争の一環のようですね。主席がゼロコロナと語ったからには感染(陽性)者はゼロでなければならない。神をもたない国ではトップの口からもれた言葉が神にかわるお告げであり、そのコロナ原理主義を利用し、権力をめぐって丁々発止なのかどうか、よく分かりません。

 

一方わが国トップは、体を揺らし、頼りなげに原稿を読むのが常ですが、だらだらとした仕事ぶりを点検すると、結果として、やっとんちゃうかと思うこともあります。ロシアに制裁を加えながらも天然ガスのサハリン2から「撤退せず」2022.03.31との方針を出しました。灰色の海を泳ぎながら概ね正しい方向へ国を導くのが政治なので100点はありません。でも紙の新聞を見てオヤと思うことが度々あります。

 

 

 

ひとり旅 220415 ロシア編(9 国家共同体 大谷翔平 憲法前文

 

 

 

 

 

国家共同体とは何か? 分をわきまえぬ大テーマですが、そこを避けては話が先に進まないので正面突破する他ありません。GHQは文武両面において占領国を弱体化させました。武器はあっても弾がないのが自衛隊、武ではなくスポーツが讃えられ、教育の中で棘を抜かれたのが平和ボケ世代のぼくらです。敗戦後GHQにもらった憲法前文「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」(変な日本語文ですね) 経済特化した日本はものつくりに於いて20世紀を勝ち抜きました。

 

 

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東京大空襲wiki

 

アメリカ合衆国は、戦争好きの悪魔と慈愛に満ちたマリア様の両面をもちます。一夜にして東京都民10万人を焼き殺し、2発の核を撃った国でありながら懐に入った窮鳥に対しては、あっけらかんと技術も市場も明け渡し、敗戦国が戦勝国より豊かになるという人類史初のマジックをやってのけた国でもあります。1980年代後半にはパックスジャポニカが謳われ「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などという本も出版されました。

 

 

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TIMEの表紙を飾った大谷翔平

https://time.com/6165003/shohei-ohtani-baseball/

 

開拓者精神をもつアメリカの人々は

誰もやっていないことをやるのが好き

リスクを背負う挑戦者には惜しみない拍手を送ります

 

そのアメリカも、ここまで日本に勝たせては不味いと思ったか1990年代には、やっかみ半分の日米半導体交渉他で日本経済を弱体化させ、その後の日本は「失われた10年」が20年30年とつづきました。(端折って言えば) 教育、経済、軍事の3面において日本国は今なお(心地よい)被占領状態にあるといえます。主権国家が軍事的に自律することは当たり前ですが、わが日本国は憲法論議さえままならぬ「茹で蛙」状態です。

 

普通に考えて日本をふくむ「諸国民」が「公正と信義」に満ちているわけはありません。国が富み軍事力が溜まると為政者の目は外に向かいます。鎌倉時代にはモンゴル元軍が手下の高麗軍を率いて何も悪いことをしていない日本を攻めました。安土桃山時代には豊臣秀吉軍が、朝鮮半島経由で、何も悪いことをしていない明に攻め込もうとしたわけです。

 

真珠湾をやられて激怒したアメリカは、軍事産業に大規模投資し、日本帝国をこてんぱんにやっつけました。大戦後も軍事経済の自律運動はつづき、ざっくり3年ごとに他国に介入または戦争を作ってきました。以下そういえば聞いたことがあるぞという戦争名がずらりと並びます。

 

ブリーガー作戦、朝鮮戦争ベトナム戦争レバノン危機、ドミニカ内戦、朝鮮DMZ紛争、レバノン介入、グレナダ侵攻、パナマ侵攻、湾岸戦争イラクの飛行禁止区域施行作戦、ソマリア内戦、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争、ハイチ介入、コソボ紛争アフガニスタン紛争、イラク戦争ソマリア内戦へのアメリカの第二次介入、オーシャン・シールド作戦、リビアへの国際介入、オブザーバント・コンパス作戦、リビア介入、イラクへのアメリカ主導の介入、シリアへのアメリカ主導の介入等々呆れるほどです。 (アメリカ合衆国が関与した戦争一覧でネット検索)

 

それを称して「世界の警察」と呼んだわけですが、さしものアメリカも2008年のリーマンショックを境に凋落し、トランプ大統領アメリカファーストという格好のよい言葉で内向きの政策をとりました。あやしい選挙を勝ち抜いたバイデン大統領は、まことに格好の悪いやりかたでアフガニスタンから撤退し、今ロシア・ウクライナ戦争に関与してはいますが、かつての勢いはありません。

 

プーチン大統領によると、国家こそがすべてであり、国家間の集まりは何の役にも立たないそうです。所詮は戦勝5大国の集まりにすぎない国連は、ウクライナ戦争に対し口を鎖したままであり、ゼレンスキー大統領は国連がこの戦争に介入しないのであれば「解散せよ」と激しいことばを投げました。コロナ禍にあって国連傘下の世界保健機関は真っ先にたち働くべきでしたが、WHO議長テドロス氏は、金づるの中国に配慮するあまり初動でたじろぎ、コロナウィルスを武漢で封じ込めることに失敗しました。

 

 

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Photo libraryより

 

そのようなことから

チーム⇒ムラ⇒マチ⇒県と拡大する共同体は

国家をもって最終体となります

 

もしも宇宙人が攻めて来たなら

ただちに内輪の争いは停止され

国家を超えた地球防衛軍が成立するはずですが

まあそのようなことにはなりません

 

してみれば僕たちは日本国を共同体の最終単位として大切にまもる他ないわけです。敗戦後に強要された憲法には、武器を棄て皆で幸せに生きようやという人類の理想がこめられています。しかし残念ながら先進国は例外なく武器商人であり、隙あらば他国の富を奪おうとする国だらけです。かつての日本は、四海にまもられ特殊な文化を発達させてきましたが、ジェット機が飛びミサイルが行き交う今、荒くれた大陸文化に巻き込まれ、考え方を変えざるを得ない時代に入りました。

 

220415記 つづく

 

 

 

<2022年の現在史>

ろくでもないニュースばかり配信されるいまオータニ選手の活躍が唯一の救いですが、4月15日のレンジャース戦は満塁ホームランを喫してピッチャー降板です。打者オータニは生きていますが、去年が去年だったので徹底的に研究されたはず、外野席上段に飛び込む胸のすくホームランは今のところお預けです。

 

上げて書き落して書いて2度おいしい記者の仕事とは別にぼくらは、落ちたところから這い上がる選手の姿に感動します。ここまで落ちればクニへ帰るほかないと思われた筒香選手は、昨秋からヒトが変わったように打ち始め、崖っぷちから生還しました。出だし絶好調の鈴木選手はよしとして戦力外の悲哀をかこつ秋山選手は今後どうなるのでしょう。ファンはスポーツという舞台のむこうに自分の影を見ているのかもしれません。

 

 

ひとり旅 220412 ロシア編 (8  故郷 国家スポーツ共同体 隠岐本新古今和歌集 サリン

 

 

 

 

 

故郷とは何か?

サケが帰巣本能をもつようにヒトもまた生れ故郷にこだわります。さみしくなったら帰っておいでと招くのは母が待つ狭い故郷です。一方「堺事件」の箕浦猪之吉がフランス人公使に向け「日本男子の切腹を好く見て置け」と云ったときの故郷は、潮江村でも土佐でもなく、故郷を最大限にひろげた日本国です。箕浦猪之吉以下11名は、フランスが意識させた日本人として国家共同体に所属したわけです。故郷とは、自分が所属する集団と対立する集団との関係の中で生まれる概念でもあります。

 

 

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オホーツク海 河口で鮭釣り 2015.10.11

 

ハチマキ締めて「国の為」と言えば「あいつ右翼かよ」と白い目で見られますが、バットを握って「フォアザチーム」なら仲間の賞賛をあびます。チームは語ってもよいが国家を論じてはいけないという無言の縛りの中で、ぼくら戦後世代は生きてきました。

 

天皇」を意識させる「国歌」はよろしくないという議論もあります。古今和歌集で「君が代は千代に八千代に」と歌われた君とは天皇のことであり、天皇を言祝ぐ歌は、議会制民主主義にそぐわないという考え方です。が、そこまで否定されると高等学校で古典文学を学ぶことさえいけないことになります。世界史を横に見て源氏物語ほど緻密かつ長大な恋愛小説は他にないようであり、その古典文学を支える精神的支柱は天皇を中心とした秩序にあります。

 

源氏物語を読めば(拾い読みするだけで^^)すぐにもわかりますが、全編ことごとく恋愛がテーマであり、裏をあばいてカネをとる週刊誌でさえ手を止めそうな、あやしくも美しい領域に踏み込んだ愛の物語です。つまるところ天皇家のみなさまは御所にこもって恋をし、歌を詠み、文化をつくって世に広めて来たのであり、ウクライナを苦しめる国家元首のごとく権力をほしいままにする独裁者ではありません。

 

 

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隠岐新古今和歌集 哀傷歌 太上天皇(後鳥羽上皇)

 

思いいづる折り焚く柴の夕煙

                     むせぶも嬉し忘れ形見に

 

その書体の見事なこと

文字とは即ち絵だなと

眺めるたびに惚れ惚れします

 

その天皇が本気でいくさを起こしたのは承久の乱くらいのものでしょう。鎌倉幕府に対抗した後鳥羽上皇は乱後、隠岐島へ流され、息子ふたりは佐渡島と土佐へ流刑されました。四万十川のほとりを住処とし「幡多郡中村の新町に常照寺を開基され井戸を掘って用水とされた」土御門上皇もまた歌の名手であり、中村(いま四万十市)の御座所から月を眺めた歌が残っています。

 

行きつまる里を我が世と思へども

                              なほ恋しきは都なりけり

 

土佐の高知の西の果てにあたる幡多郡は、21世紀の今でも東京からの時間距離がいちばん長い地域です。都から遠く離れた「行きつまる里」で土御門上皇は故郷を「恋しく」歌いました。苦労するのはイヤだけど「配所の月罪なくて見む」と罪人でなければ見えない月の美を安全地帯で味わいたいものだと書いたのは兼好法師です。「あらあら日本恋しや見たや」と故郷を懐かしんだのは天草生まれの唐行きさんだったような。先ごろ逝去されたカヌーイスト野田知佑氏に四万十川で出逢ったことがあるという東京在住の某編集長もまた故郷をなつかしむ人なので「これを食べて泣きなさい」と四万十川河口でとれた文旦を送ったところ、どうやら唇のサービスだけではないような感想が戻ってきました。要するに天皇から一般庶民まで誰にとっても故郷はなつかしい存在のようです。

 

その故郷にも大小があり、最大規模の形体が国家であるわけですが、国家⇒軍事⇒天皇制⇒戦争反対という流れ図で思考するのは、いささか無理があるように思うのです。むかし職場の日の丸君が代会議において「さざれ石の巌となりて苔のむすまで」という文句が気にいらないとみえ「岩石がくだけてさざれ石になるのであって、ビデオの逆回しみたいに小石が巌に成長することはない。非現実的だ」と難癖をつけた人がいました。それもそうだなと思っていたところ後年、さざれ石が巌となることはあることを知りました。砕石が堆積し炭酸カルシウム他によって凝結するのだそうです。

 

 

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さざれ石 舞鶴のホテルにて 2021.09.06

 

地質学はさておき、戦争反対氏の話は日本から武を削がんとするGHQの思想に由来したものでしょう。昔といっても数十年前の話ですが、あのころは軍事を連想させるモノコト考え方はすべて否定されました。憲法前文「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」みんなで仲よく生きようやとし、それで20世紀は無事に生きて来られたから「平和を愛する諸国民」がいなかったわけではありません。しかし21世紀の今「ロシア・ウクライナ戦争」はあのような事態にまで進展しました。ウクライナの状況を日本に置き換えて、どう説明するかと問い詰められた某政党の委員長は、

 

「党本部での会合で、ウクライナ情勢を踏まえ、急迫不正の主権侵害が起こった場合には、自衛隊を含めて、あらゆる手段を行使して、国民の命と日本の主権を守りぬくのが党の立場だ」と述べました。2022.04.07

 

自衛隊を否定しつつ「自衛隊を含めて、あらゆる手段を行使」するとは何ごとか、狐につままれたぼくらは、選挙むけの甘言かよ、もうちょっと分かるように説明してくれんかと思うわけですが、最も困惑したのは自衛隊否定党の信奉者ではなかったかと、、

 

日本中のメディアが、ロシアを悪と決めつけ、一斉にウクライナを向いたことに不気味な流れを感じないでもありませんが、ネットをめぐる恐ろしい映像を(眉に唾を付けながら)観るにつけ、核保有国ロシアが「公正」でも「信義」に足るものでもなかったことは確かです。恐るべきは独裁です。

2022.04.12記 つづく

 

 

 

<2022年の現在史>

2022.04.12午前 「ロシア軍がドローンから有毒物質を投下か」と伝えられました。マリウポリ市長は「死者数は2万人を超えるおそれがある」とも。1995年のオウム真理教よる「地下鉄サリン事件」を想起します。

 

ひとり旅 220407 ロシア編(7 堺事件 森鴎外 高知県西部の配所 世界人口 窒素固定技術

 

 

 

 



 

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堺事件「堺表土佐藩士攘夷記」 ネットより

 

左側に仏側の軍人が並び

右側の屋根の下で切腹が行われている

南国市県立歴史民俗資料館蔵

 

江戸と明治が交差した1868年、フランス人水兵11人を殺傷した「堺事件」において土佐藩兵20名が切腹を命じられました。立ち会ったフランス人の前で次々と自刃する中、11人目を終えたときフランス公使が席を立ち、切腹という名の処刑は中断されたと伝えられます。覚悟を決めて死に臨んだ12番目の人物は、いきなり死世界から光降る世に連れ戻され爾後、仲間の墓を護りつつあの世とこの世の境を行き来したようです。土佐といえば司馬遼太郎が歴史の片隅から表舞台へ引き揚げた坂本龍馬が有名ですけれど、作家という名のタイムマシンに出逢わなかった無数の若者の魂魄は今なお草葉の蔭に漂っていることでしょう。

 

堺事件の6年前に生れた森鴎外は、事件後46年目52歳の年に小説「堺事件」を描きました。日清・日露に従軍し、のちに軍医総監となる森林太郎は、一切の感情を交えぬ筆で切腹の経緯を外科医のごとく描いています。このような文を恣意的に引用するのは失礼なので、やや長くなりますが自決部を転載します。

     * * *

元六番歩兵隊長箕浦猪之吉は、源姓、名は元章、仙山と号している。土佐の国土佐郡潮江村に住んで五人扶持、十五石を受ける扈従格の家に、弘化元年十一月十一日に生れた。当時二十五歳である。

~中略~

呼び出しの役人が「箕浦猪之吉」と読み上げた。寺の内外は水を打ったように鎮まった。箕浦は黒羅紗の羽織に小袴を着して、切腹の座に着いた。介錯人馬場は三尺隔てて背後に立った。総裁宮以下の諸官に一礼した箕浦は、世話役の出す白木の四方を引き寄せて、短刀を右手(めて)に取った。忽ち雷のような声が響き渡った。

「フランス人ども聴け。己は汝等(うぬら)のためには死なぬ。皇国のために死ぬる。日本男子の切腹を好く見て置け」と云ったのである。

箕浦は衣服をくつろげ、短刀を逆手に取って、左の脇腹へ深く突きたて、三寸切り下げ、右へ引き廻して、又三寸切り上げた。刃が深く入ったので、創口は広く開いた。箕浦は短刀を棄てて、右手を創に差し込んで、大網を摑んで引き出しつつ、フランス人を睨み付けた。

馬場が刀を抜いて項(うなじ)を切ったが、浅かった。

「馬場君。どうした。静かに遣れ」と、箕浦が叫んだ。

馬場の二の太刀は頸椎を断って、かっと音がした。

箕浦は又大声を放って、

「まだ死なんぞ、もっと切れ」と叫んだ。

この声は今までより大きく三丁位響いたのである。

 初めから箕浦の挙動を見ていたフランス公使は、次第に驚がいと畏怖とに襲われた。そして座席に安んぜなくなっていたのに、この意外に大きい声を、意外な時に聞いた公使は、とうとう立ち上がって、手足の措所(おきどころ)に迷った。

 馬場は三度目にようよう箕浦の首を墜した。

森鴎外著「堺事件」青空文庫キンドル版69%

     * * *

そのようにして次々と切腹が続き、殺害されたフランス人11名と同数が自害し、12番目の橋詰愛平が「衣服をくつろげて、短刀を腹に立てようとした」とき、立ち会っていたフランス人が退席したことにより切腹は中断され、橋詰は納得のいかない一命をとりとめたと綴られます。

 

 

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堺事件 wiki

 

切腹とは何か?

フランス人水兵を射撃、殺害した咎をもって「下手人二十人差し出すよう仰せ付けられた」土佐藩兵は「死刑」になるより「フランス軍艦に切り込んで死のう」「一同刺し違えて死のう」と死のかたちを案じた結果「死ぬるのは構わぬ。それは兵卒になって国を立った日から覚悟している。しかし恥辱を受けて死んではならぬ。そこで是非切腹させて貰おうと云うことに、衆議一致した」(同書)そうです。

 

死には様々なかたちがありますが「切腹」となれば通常の自殺とはちがう強い意志が試されます。かくも恐るべき自害法が他国にあるかどうか寡聞にしてぼくは知りません。「恥辱を受けて死んではならぬ」ことから名誉のために切腹を選んだことが堺事件の本質であり、森鴎外はまさしくそこに注目したのでありましょう。

 

名誉とは何か?

自分より家族⇒仲間⇒ムラ⇒マチ⇒国家共同体の存続を願う気持ちは(じつは)誰もがもっています。寄り添う共同体のために命を捧げ、共同体から尊敬を得れば、死したのちも故人の名誉は存続します。名誉は時間軸のなかに在るわけです。堺事件の20名が「死刑」でも「切り込み」でも」「刺し違え」でもなく「切腹」を選んだのは、死の空間において個の恨みを晴らすのではなく、名誉をもって大いなる存在に寄り添ったからでしょう。

 

そういった思考の延長線上で大戦末期に「特別攻撃」が着想され、飛行機、高速艇、潜水艇が使われ、あるいは「万歳突撃」といった自滅作戦が展開されました。退路を断って死に向かう「特攻」は日本人の発明であり、(おそらく)その特攻にヒントを得、自死を覚悟の上で他者を巻き込む中東の自爆攻撃が展開されたのであろうと思われます。死をふたつに分けるとすれば、恨みを晴らす個人の死と、共同体に寄り添う名誉の死があります。

 

 

▼以下、高知県西部の地理に詳しい人のために

覚悟した死から生還した9人は「浦戸の港に着いた」「松が鼻から西、帯屋町までの道筋は、堺事件の人達を見に出た群集で一ぱいになっている」「南会所では目付けの出座があって、下横目が三箇条の達しをした。扶切米召し放され、渡川限西へ流罪仰せ付けられる」「実子のないものは配所に於いて介補として二人扶持を下し置かれ、幡多中村の蔵から渡し遣わされる」「九人のものは流人として先例のない袴着帯刀の姿で出立したが、久しく蟄居して体が疲れていたので、土佐郡朝倉村に着いてから、一同足痛を申し立てて駕籠に乗った。配所は幡多郡入田村である」「横田一人は西へ三里隔たった有岡村の法華宗真静寺の住職が、俗縁があるので引き取った」「入田村は夏から秋にかけて時疫の流行する土地である。八月になって川谷、横田、土居の三人が発熱した。土居の妻は香美郡夜須村から、昼夜兼行で看病に来た」

 

上記、「浦戸」湾は拙宅の裏手に開け、ぼくは「帯屋街」から「宝珠院」脇を抜け「夜須」の手前の仕事場へ通っています。「朝倉」には高知大学があり、四万十市と改名された幡多「中村」の「入田」村は四万十川沿いにあります。四万十市宿毛市の境の「有岡」に真静寺があると知ったので帰省の際は寄ってみます。「妙国寺で死んだ十一人のためには、土佐藩で宝珠院に十一基の石碑を建てた。箕浦を頭に柳瀬までの碑が一列に並んでいる」とあるので先日28番札所大日寺入口にある宝珠院を訪ねましたが、それらしい碑は見当たらず、問うにも人影はなく、清められた札所がひっそりと佇んでいるばかりでした。

 

罪人が向かう遠流の地は「伊豆、安房佐渡隠岐、土佐」が代表格?です。鎌倉時代承久の乱において、敗れた後鳥羽上皇隠岐島順徳上皇佐渡島土御門上皇はみずから望んで土佐の西の果ての幡多郡に配流されました。

 

島根県生まれの森鴎外は高知に来たことはないはずなのに土地の人さえよく知らぬ地名を事細かく記述したものです。評論家の小林秀雄が「晩年の鴎外は考証家に堕したのではない。彼は歴史の魂に推参したのである(記憶曖昧)」というようなことを(いつものように)高いところから下す文体で断定していますが、なるほど集めた資料を腑分けし淡々と並べた「堺事件」は鬼気せまるものがあります。

2022.04.07記 つづく

 

 

 

<2022年の現在史>

ロシア・ウクライナ戦争の影響でGold が高値に昇りつめました。

有事となれば「円買い」のはずが4.07現在1ドル123円と低迷しています。

人口1.4億のロシアは人口0.5億の韓国ほどのGDPしかなく、国民の平均所得は7万円/月ていどだろうと言われます。軍事産業のみ突出したロシアは、スマホも車も西側から輸入しているようであり、農業資源と地下資源がロシア経済を支えていると伝えられます。西側の一員たる日本政府はロシアに対し各種制裁を課しましたが、ロシアとの合弁事業である樺太天然ガス開発「サハリン2」は今後もつづけることを決めました。

 

あっと驚いたのはウクライナ侵攻後に暴落したルーブルが今ほぼ元の位置に立ち返ったことです。ロシアの武器を使うインドがロシア産石油の輸入を決めたことが大きな要因らしいです。西と東の両面作戦をとる人口14億のインド、人口13億?の親ロシア中国、およびアフリカ、南米他を合わせ、西側に対抗する新たな冷戦構造がつくられつつあるようです。世界は再び核を突きつけていがみ合うのでしょうか。

 

ぼくが生れたころ世界人口は25億ほどでした。それが2000年に61億、2022年の今はなんと78億!  2050年には97億に達し、2100年に110億で頭打ちになると予測されます。わずか一世代のうちに人口が3倍にふくれるなんて信じがたいことですが、1972年にローマクラブが「成長の限界」で予測した人口推移とだいたい同じ形のグラフを描いたことに改めて驚きます。

 

人口増加を可能にした理由をひとつだけ挙げよと言われたら「石油」と答える他ないでしょう。燃料と化学製品が文明を支えていることは疑いようもありません。食糧生産を可能にした理由をひとつだけ挙げよと言われたら、1906年にドイツのハーパーとボッシュが空中の窒素固定技術を開発したことに起因すると農業関係者は言います。

 

ウチはトマト農家です。China産の肥料袋をほどいてタンクにぶち込み、仕上げに劇物の硝酸液(触れたら大火傷)を入れるのですが、窒素リン酸カリの三要素を水に溶かして根に送るとあら不思議、真っ赤なトマトが実を付けます。これって鉱物を使った化学実験みないたものですが、その向こうに生命体のヒトがいます。合成肥料がどんどん人口を増やし、かくて地球はヒトで満杯になり、土地をめぐっていがみ合い、ウクライナ(のみならず世界各地で)争いが絶えません。もしも地球が木星くらいデカければ100億が200億になってもどってことないのになと思ったりします。

 

ひとり旅 220403 ロシア編(6 プーチン 死の手 相互確証破壊

 

 

 

 

 

<2022年の現在史  >

ウクライナでは、短期決戦の予定が狂い、苦戦を強いられたロシアが苦し紛れに大量破壊兵器を使うのではないかとの観測が流れています。戦時の流言飛語かも知れませんが、ロシア軍は既にクラスター爆弾、燃料気化爆弾を使ったようであり、考えたくないことですが、あとはABC兵器のC⇒B⇒Aとエスカレートする可能性が無いわけではありません。

 

 

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ANN ニュースビデオより(以下同)

 

ヒトに内在する凶暴性が国家レベルで解放されると相互確証破壊Mutual Assured Destruction(奇しくもMAD気違い)という名の核戦略につながります。やられたらやり返す。核には核で対抗するという破れかぶれの戦略です。そのためにロシア、アメリカとも5000発を超える核爆弾を保有していると伝えられますが、地球文明の破壊が目的ならそれほどの数は要らないという説もあり、われら人類の日常はMAD状態の中で営まれていることになります。

 

 

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熱核戦争を防ぐ最期手段として相手国トップを暗殺する方法もありますが、それを見越したロシアには「死の手」があり、最高意思決定者の不在をAIが認識すれば、自動的に核ミサイルが世界各地に向かうとも言われます。その後の地球がどうなるかはメキシコ湾に衝突した巨大隕石を思い浮かべればよいのかもしれません。

 

 

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三島由紀夫

世界を否定するために自分を殺しました

ところが「死の手」は

恨みを晴らすために世界を殺すという

恐るべき思想の産物です

 

 

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ついに日本でも核の共同保有という相互確証破壊論が議論され始めました。やったらやり返されるので、やることはないとする考え方ですが、それは相手に正気が残っている場合に有効な戦略です。MADなトップが頭に来て核ボタンを押せば、報復のミサイルが撃ち戻され、この世は終わります。双方とも自滅するわけだから、それで恨みが晴らせるのかどうか、死屍累々たる光景の中でいったい何が残るのか、まさかこのような事態を本気で心配せねばならない時代が来るとは思いもしませんでした。武器技術の進展に生存の哲学が追いつかない悲劇です。

 

 

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チェルノブイリ原発の操作室 News Weekより

 

2021年5月21日付News Weekの見出しに「チェルノブイリで再び核反応くすぶる。中性子線量が上昇中」とあります。2022年3月現在ロシア軍の管理下に置かれた同原発敷地内で、ロシアの兵隊が侵入禁止区域に塹壕を掘り、強い放射線を浴びたというニュースを見ました。20代前後の若い兵士は、36年前の核事故を知らなかったのか、教えられていなかったのか、そもそもロシア軍は何を考えてチェルノブイリ(チョルノービリ)原発を制圧したのか、その目的がよく分かりません。▽4月3日現在ロシア軍は当原発から撤退したようです。

 

愛媛県伊方原発で出力調整実験が行われていたころ

ぼくが見た操作室もずらりと計器が並ぶ静かな空間でした

 

建屋の床を震動させて唸る蒲鉾状のタービンを横目に

とりたててすることもなさそうな操作員がたむろする空間に案内され

「これが出力調整のメーターです」と

どこにでもあるような計器を意味もわからず見せてもらい

温排水が河口のように海へ流れるさまをみて

そのことをどう考えるべきか

整理がつかぬまま今に至ります

 

 

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ANN ネットニュースより(以下同)

 

相互確証破壊は核の応酬を意味しますが、核爆弾はなくとも世界に434基あるという原子力発電所を通常弾頭で狙えば手軽に核報復できます。(その可能性をロシア軍がウクライナ南部の原発で実証しました) 核爆弾と原子炉のちがいは、瞬時に吹っ飛ばすか、じわじわ殺すかの違いにすぎず、ヒトが住めない世界がつくられることに変わりはありません。▽もしも福島第一原発が、水素爆発による原子炉建屋の崩壊にとどまらず、原子炉そのものが露出していたとすれば、東日本の住民は西日本または他国へ逃げる他なかったわけです。今おそろしい数のウクライナ難民がわずかな荷物を提げて周辺国へ移動していますが、あれは11年前に日本人が見るはずの風景だったのかもしれません。

 

 

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文明は人間に幸福をもたらすはずでしたが

むしろヒトの野蛮性が剥き出しにされ

破壊の規模は拡大し

文化は痩せ細ったように思います

 

2022.04.03記 つづく