海事つれづれ五目めし200622 渚の原子力2 小鶴津から大鶴津へ

 

 

 

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四万十町小鶴津の廃屋200607

断崖の小道を降りると人の住まない農家と雑草がはびこる農地があります。道路と車が発達した今なおひっそりとした佇まいの農村です。言葉は悪いですが棄てられて間もない頃とみえ、家屋の庭は掃き清められており、トラクターを入れれば田んぼはすぐにも回復しそうです。

 

 

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小鶴津の渚200607

入り江の向こうは太平洋、背後に標高607mの六川山が聳え、21世紀の今なお切り立った断崖に細い道が一本しかないこの地こそ平家の落人部落に相応しいように思いますが、残念ながらそのような伝説はなさそうです。都会暮らしの女性を案内し「ここオレのプライベートビーチだから好きなようにしていいよ」と言ったら悪戯っぽい目で冗談に付き合ってくれました。(SNSに人物写真は要注意ですが人がいないと風景が締まらないので後ろ姿でご登場くださいな)

 

もしもここに国道規格の道路が抜け、高知市からのアクセスが良くなれば秘かな海水浴場として賑わうことでしょう。迷惑施設が立ち上がると一方で罪滅ぼしのように遊び場が整備されるパターンは全国どこにでも見られます。

 

 

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蜂の巣箱 170428

小鶴津からひと山越えて大鶴津へ向う途中で蜂の巣箱を見かけました。

 

 

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巣蜜スミツ 200612

スーパーの生産者コーナーで見付けた正真正銘のハチミツです。養蜂家はこれを輪転機で廻し遠心力で蜜をとります。なんせ手間がかかるので小瓶ひとつが何千円もしますが、ひょっと水飴とかで増量していないかと疑われるフロムChinaの激安蜂蜜とは一味ちがう本物の蜜です。舌にのせると猛烈に甘く鼻の奥に蜂蜜特有の香りがツンと立ちます。150グラム500円でした。

 

 

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更に行くと道沿いにイノシシを捕獲する檻が設置されていました。この檻にもぐり込んで泣き叫ぶ人間はいませんが、森の中に踏み込んで「ワナに注意」の標識を見たときには恐怖を覚えますね。

 

 

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大鶴津の廃屋170428

くねくねと曲がる杣道のトンネルをくぐり、たまに開ける緑の切れ間から青い海を望んで歩くと大鶴津へたどり着きます。山裾に残る農地は狭くどう考えても大人数を養える広さではありません。

 

 

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ここにも忘れられた家が 170428

棄てられた家というものを多く見てきましたが、どの家も内部は荒れ果て生活雑器が散らかし放題というパターンが殆どです。そこが人生の長い時間を費やした場であれば別れに際し、いささかの礼を形にのこしてはどうかと思うのですが、気力も体力も失うとそうもいかないのでしょう。ワケあってぼくは今お隣さんが残した仕事場を整理しています。飲んで捨てたペットボトルが山のように残されており、ラベルを剥がし、水で洗って90ℓのごみ袋4杯分をスーパーの回収所へ運んだことでした。

 

 

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大鶴津の浜 170428

コンクリートのレールは船を揚げるためのものです。嵐の日には凄いことになりそうな海に塞がれ、背後を切り立った山に囲まれ、車一台通るのがやっという細い道で町とつながる2軒の農家兼漁家の暮らしはどのようなことであったのか、、人の姿とてない渚に腰を下ろし、わずか30年ほどの過去でよいからタイムマシンに乗ってこの地に降りたら今どきの海外旅行よりずっとスリリングな光景が見えるだろうと夢想しました。ここが窪川原発の設置予定地であったことを知ったのはごく最近のことです。

200622記 つづく