いっぷく8号 200802 台湾 阿里山 昭和新山 羊蹄山 百名山ひと筆書き

 

 

 

 

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台湾嘉義市の森林鉄道181029

出発前の記念撮影があちらでもこちらでも

 

「おはよう。ありがとう。あんたきれいね」の三語を知っていれば世界のどこを訪ねても生きて帰れるそうです。SNSに人物写真を置くことは常に警戒していますが、ここはひとつ「あんたきれいね」ってことでご勘弁くださいな。たまたま切符が取れた人気の森林鉄道に乗って阿里山の麓に向かいました。

 

 

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阿里山の手前にある奮起湖駅181029

 

小枝が窓を打つ鉄路を明治大正的な速度でたどり着いた奮起湖駅にはChina語とEnglishと日本語の表記がありました。日本国内ならどこにでもあるKorea語がないのは台韓関係に問題があるからでしょうか。両者とも日本にとっては微妙な歴史を背負う国であり、こちらは親日あちらは反日とややこしいのです。あちらの国の人たちとは長くお付き合いしてきたので、散々考えてきたことをいつの日か文字で整理したいとは思っていますが、ここにきて大きく左傾化ないし先祖返りしそうな今はまだちゃんとした言葉が掴めません。

 

 

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海抜1403mの奮起湖駅 181029

 

奮起湖の湖は盆地の意、弁当で有名な駅だそうです。メシ食って奮起せよってことでしょうか。この山の向こうに新婚さんの聖地=阿里山があり、その向こうに台湾一の高峰=玉山があります。

 

台湾は九州とほぼ同じ面積ですが、山地山脈が連なる東部の背骨には標高3952mの玉山を頂点に、富士山より高い山が7座、3000m級の山が253座もあります。玉山は明治天皇によって新高山命名され日本統治時代には日本一高い山とされました。昭和天皇の時代に「ニイタカヤマノボレ1208」という暗号が発せられたことは余りにも有名です、、とネットで拾ったネタを並べるとなぜか白々しい作文になりますネ。

 

「山高きが故に貴からず」の伝でいえば、秀峰を高度だけで説明するのは片手落ちです。本栖湖精進湖あたりから見上げた富士山は、葛飾北斎が描いた赤富士ほど尖ってはいないものの裾野から頂上まで山全体が目の前に広がる独立峰の迫力があります。雲つく巨人が両の掌ですくい上げた土を高いところから少しずつ落して綺麗な円錐形を作ったかのごとくです。

 

 

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羊蹄山 141023

 

富士山に似た成層火山は、香川県の讃岐富士、山形秋田の鳥海山青森県岩木山、北海道の羊蹄山と全国いたる所、また世界各地にあります。そんなことは何も知らない若いころフェリーで小樽に入り、400㏄のバイクで走っていると突然、富士山が現れ、何でここに!? とアタマの理解が戻るまで目をこすったことを覚えています。

 

 

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ある日、麦畑に生えてきた昭和新山 141024

 

御嶽山が噴火した2014年の秋、北海道は昭和新山からロープウェイで有珠山に上がり、火口をぐるりと廻る遊歩道をたのしく歩いていると地元テレビ局の取材を受けました。「怖くないですか?」と訊くから、こんなに美しい景色の中で何を怖がるのだろう、、「御嶽山があんなことでしたが?」御嶽山の噴火は知っているけどここは関係ないじゃん、、と質問の意図が分からぬまま適当にはぐらかすと肩に置いた大型ビデオでこちらを狙っていたクルーはガッカリした様子でした。

 

 

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有珠山火口 141024

 

忘れもしない2011年3月11日、北米プレートと太平洋プレートの境が東北沖でずれました。その3年後の2014年に起きた御嶽山の噴火は、ひょっとすると3.11に刺激されたからかも知れません。するとここ有珠山も危ないわけで、テレビ局のみなさんは、ぼくが「怖いことは怖いけれどせっかく北海道までやって来たのだから、、」といくらか緊張した面持ちで返答してくれたら絵になるがと期待していたのかも、、が愚かにもぼくは有珠山が2000年に噴火したことを知らなかったのでした。

 

鹿児島県霧島の新燃岳は2011年1月19日に「空振を伴った小規模なマグマ水蒸気噴火」を起こし、2月1日には「愛媛県高知県でも家屋の振動が報告された*wiki」とあります。日本ジオパークの指定を受けた神奈川県箱根は2015年に大涌谷で小規模噴火を起こし、2016年には熊本県阿蘇中岳が噴火しました。新燃岳では2017年、2018年と噴火が続き、鹿児島県桜島はしょっちゅう噴煙を上げ、東京都小笠原西之島は今も噴火、拡大を続け、、プレートの境が4つも集まった日本列島は地殻変動にさらされた天災の島でもあります。

 

しかし悪いことがあれば良いこともあるわけで、日本列島の地形は変化に富み、登山家を興奮させる山岳は生涯をかけても登りきれないほどあります。「日本百名山ひと筆書き」をやってのけた若き登山家、田中陽希は今「日本三百名山ひと筆書き」に挑戦しています。ひと筆書きだからバスやヒッチハイクは禁止、大隅海峡津軽海峡カヤックで渡らねばなりません。

 

テレビの前に寝そべって、ようやるわと呆れながら、思いますに氏はヒトが筋肉を使ってどこまでやれるかというスポーツの原則に一人で挑戦しているのでしょう。旅の支度だけでも大変なことだろうと推察しますが、体力と精神力を集中し、「日本百名山」の深田久弥も知らなかった新世界を今日も歩いています。いらんことですが、わが座右の愛読書「ドラゴンボール」は筋肉とハンドパワーの物語です。あの闘いでインチキな機械力を使った日には即刻、読者に愛想つかされるでしょうね。

 

この段「ひと筆書き」で台湾をやっつける予定でしたが、

紆余曲折したのでいったん置きます。

200802記 つづく

 

 

 

追記

通常の登山家は短期決戦で高い山を狙いますが、「ひと筆書き」で300もの山を渡るとなるとマラソン+旅の要素も入ります。あの体力ならきっと踏破してのけることでしょうが、嵐の夜の山小屋でふと行為の意味を見失い、オレはいったい何をしているのだろうと空虚感を覚えることだってありはしないか、ひとりぼっちの夜中にSNSの大笑いとはちがう表情で考え込むことだってあるだろうし、その孤独をどうやって紛らわすのか、ぼくなどむしろそこに興味があります。ともあれ「ひと筆書き」で300だなんていう登山は人類初の挑戦にちがいありません。オリンピックは消えたことだし、MLBも遠からず中止になるかもしれない。怪我せずに終いまでやってくれと祈ります。

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