旅は道草 200829 Go to 福江島




上五島から大波に揺られて福江島に移りました。



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Google mapを広げているうちに福江島に鹿の子まだらの圃場を見つけました。今どき耕地整理していない田畑はないので、ひょっとするとこれは日本最後の田んぼの秘境かもしれない。四角四面の将棋台にされる前に見ておかねば、えいやGo to となった次第です。




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福江島三井楽の民宿に飾っていた写真のコピー


この丸畑は輪島の棚田にも匹敵する観光資源になりそうですが、観光パンフで紹介されていないのが不思議です。地元の観光産業はその価値に気づいていないのだろうか、それとも観光地として売り出せない深い理由があるのだろうかとトシを食ってイヤなものを見過ぎたせいかついヒネたことを考えてしまいます。



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隣村、岐宿の農地は大型農機の要求に合わせ既に直線化されています。してみればここも近い将来、農業資本の餌食(キツい言葉ですね)にされるかもしれない。その伏線として、という憶測も可能です。


自分自身が土を離れた農に携わりながら言うのもナンですが、山も川も農地もどんどん改変され、表情豊かな農村風景はいつしか長方形の寄せ集めになりました。今の若い人は田植えだ稲刈りだと聞いても広い農地を孤独なマシンが往復する風景しか想像できないでしょう。


農地の直線化と機械の導入は時代の流れではありますが、あらゆる産業が連携して成り立つ現代社会は何かの拍子に一瞬で崩壊するガラスの城でもあります。仮に石油が止まれば現代農業はたちどころに終わります。いよいよ追い詰められたとき最後に頼れるのは輪島の棚田や五島列島の丸畑に残された先人の知恵であるのかも知れません。



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上から見れば丸い模様ですが、中に入ると緑の壁に囲まれ、ほどよい安心感に包まれます。狭い農地の特権で野良仕事をして振り返ったとき作業の手応えが感じられそうです。背の高い木が影を作るので作物が受ける光の量は減衰するものの代わりに島に吹く強い風を防いでくれます。耕作直後に大雨が降ると表土が濁水となって川へ流れ込みますが、ここでは木々の根っこがしっかり受け止めてくれます等々、今ある美徳は失って初めて見えてくるものでもあります。

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