都市で仕合わせを実現しようとすれば、それなりに物入りです。だから田舎暮しに憧れ夢のような絵を描く人もいますが、下準備もなく田舎に入った人は、やがて異文化に戸惑い、後悔することになるでしょう。都市と田舎の良いとこ取りをして後半人生をたのしもうとお考えの方は、それなりの覚悟もって早めに構えをした方がよろしいというのが四国の山間で6年暮らしたぼくの結論です。
西表島星立(干立)の保存家屋 140425
縄文時代の竪穴住居が
カッコよく立ち上がったような家です
障子と襖でゆるく仕切られた空間だから
家人の気配がビンビン伝わります
日が落ちたら炉端で鍋を囲み
魑魅魍魎が跳梁する闇に包まれ
子どもはお母さんにひっついて
みんなで寝ましょって設計ですね^^!
森の別荘
人生の一時期にドンと儲けた人が、別荘を建てようが、クルーザーのオーナーになろうが、どうぞご勝手になんですけど、別荘を持ったことのない者の空想でいえば、やめといた方がよろしいのではないかと、、理由は、別荘が持てるほどのカネ持ちは仕事が忙しくて別荘へ行く暇がない。やっと別荘が手に入って嬉しいという程度の金持ちだと自分が管理人になってしまう。自然の中で悠久の時間に身を任せようとか何とかいう土建屋のキャッチコピーに釣られて甘い夢を描き、確たる目的をもたずに別荘へ行っても、そこで何をしてよいか分からない。別荘には足がないのでご近所さんとトラブっても逃げられない等々まあ持てない者のやっかみなのでテキトーに読んでくだされば有り難いです。
蛇口の受け皿は
シャコ貝の片割れ!
昭和30年代の農村を知る自分には
違和感のないつくりですが若い人が
住みたいかと問われたら
ちょっとでしょうね
なんと礎石は
造礁サンゴ!!
夜が明るくなり
みんながスマホをもって
違う世界を意識する時代には
そぐわない設計ですが
ひとりになりたければ
家のまわりに森があり海があるから
イヤになるほど個人主義が味わえます
都市のマンションと田舎の在来家屋と
どっちか選べと言われたら
それはもう一も二もなく
民宿なら飯付きで7~8000円が相場だから仮に1日1万円とし丸1年プー太郎しても365万円⇒車1台買ったと思えば安いものです。ピンキリながら別荘と名が付けば車より1桁上の物入りなので、庶民よりちょっと上ていどのカネ持ちには覚悟が要ります。モノは考えようだし人それぞれ目的があるわけだから他人が意見するようなことではありませんが、そもそも遊び暮らして本当にたのしいかどうか、心の満足にはカネや別荘とは別の問題があるように思います。
高知市浦戸湾 210318
むこうは湾と太平洋を同時に見渡せる浦戸大橋
海の別荘
拙宅の裏山を下りると紀貫之が土佐日記した浦戸湾が広がります。向かいにマリーナがあり、ずらりと並んだ小船にびっくりするほど高いマストが波に揺られています。中には加山雄三が火事で失った船もこんなものかなと思われる立派なクルーザーがあり、所得ランキング最下位を低迷する高知にも金持ちはいることが分かります。
浦戸湾のマリーナ 200222
しかし龍馬像が睨みを利かす桂浜沖が、ヨットやクルーザーで賑わっているかといえば、青い海にセールが揺れ、白い航跡が行き交う日はめったにありません。舟遊びは人生最高の時間ですが、せっかくの贅沢船が埠頭にもやう海の別荘では寂しいような気も、、オーナーはたまの休暇を盗んで訪れ、船室でパソコン叩いたりして「冬ごもり妻にも子にもかくれんぼう」 (蕪村)を決め込むのでしょうか。
浦戸湾に咲く雑草の花 210318
遊ぶ訓練
どの国のヒトも法曹界でメシを食うには青春を犠牲にする必要があるらしく、以下はKoreaの友人弁護士が同業者について語った言葉です。「高校時代に必死で勉強し良い大学に入った。大学時代に徴兵義務を終え、死に物狂いで勉強し弁護士資格を得た。事務所を開き、人を雇い、それなりのトシになってやっと暮しが安定した。カネはある。ヒマもある。晴れて自由を鷲掴みしたけれど、さて何をして遊ぼうかと考えたとき、自分は遊びを知らないことに気がついた。だから用もないのに事務所に顔を出し、椅子に座って家に帰るのが日課だ」等々、それは弁護士仲間を指してのことか、あるいは問わず語りに自分を語ったのか、よく分からないところはありますが、学ぶことと遊ぶことが背中合わせの関係にあることは確認できました。たまの休暇に別荘へ向かっても遊ぶ訓練をしていなければ遊べないわけです。
心の別荘
ではKoreaにおける遊びとは何か? 観光産業が提供するフツーの遊びならなんぼでも思い付きますが、江戸期260年の町民文化が育んだ艶やかな遊び乃至オタク的趣味の数々を念頭に描き、それを彼の国に折り畳むとき、日本にあってKoreaにないもの又はKoreaにあって日本にない遊びとは何か、長く考えてきましたが、まだよく分かりません。写真は山ほどあるのでいずれ整理したいと考えています。
ロシアのメディアは根性があると見えプーチン大統領の秘密の別荘を写真付きですっぱ抜きました。森に埋もれた宮殿のような別荘のトイレのブラシ1本の値段がオレの月給と同じであることに気付いた庶民から不満の声があがったそうです。プーチンは自分が所有主であることを否定していますが、余所の国の話だから興味本位で思いますに、独裁国家の経営者には相応しい別荘なのかなと、それにしても、
プーチン宮殿 *ネットより
なんぼ偉ろうても
こんな別荘を欲しがるもんかね(~~!
そのむかし中曽根康弘首相がレーガン大統領を茶室に招いて持てなしました。きらびやかな構造物を好む元ハリウッドスターが、ワビ、サビを旨とする茶室に坐らされて何を思ったかは知りませんが、茶であれ武であれ、道を極めた人の立ち居振る舞いは、それ自体が他を圧する文化力です。背骨を正しく伸ばした茶道家が、茶碗を回し、クッと傾けるカッコよさには惚れ惚れしますね。
にじり口 *ネットより
腰を曲げて
狭い入り口から
覗き込むと
茶室 *ネットより
びっくりするほど
広い空間が開けます
政治家に対する好悪はさておき、帝大法学部卒、内務省官僚という特殊な訓練をされた中曽根康弘氏は背骨がピンと立った人物ではありました。聖徳太子が「日出ずる処の天子」と称して以来13世紀を経た日本国は、建国169年の若い国と武で争って敗れました。ならば茶で圧倒しようと企んだかどうか(^^! 武と文化が外交の両輪であることは確かです。
茶室 *ネットより
元はといえば
竪穴住居が進化し
ここまで来ました
飛び石の打ち方にさえ
雁掛け、千鳥掛け、大曲りと
様々な呼び名があります
組立式茶室と夜桜 *ネットより
桜が美しいのは桜を
美しく見る文化があるからです
新緑に包まれた組立式茶室 *ネットより
都市と地方が互いに関係するように
人為と自然も必要不可分の存在です
あれかこれかではなく
人間には両方必要なのでしょう
西表島の民宿 170703
亜熱帯植物がつくる結界の向こうで
扇芭蕉が揺れる一棟貸しの民宿は
ひとときの別荘であり
茶室でもありました
自然と文化がほどよく調和した
庶民の宿でしたが惜しいことに
今はありません
210419記 つづく