ちょっと道草 210601  写真でGo to西表島17  波照間島の農地からb

 

 

 

 

 

かつてニシ浜は白砂の向こうに珊瑚が広がる秘境の海でした。やがてテレビに見つかり、観光客が集まり、ただの海が海水浴場と呼ばれるようになりました。日本列島の果てまで来ても遊泳客は居るんだと(自分もその一人^^)いくらかガッカリしましたが、夏の湘南に比べれば天国のような清々しさです。黒潮洗う太平洋にポツンと置かれた小島なので透明度は抜群、水生生物にとって澄んだ水が良い水であるとは限りませんが、シュノーケリングにはもってこいの海です。

 

 

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沖合の珊瑚礁

*ホテルの食堂に掲示してあった航空写真より

 

波照間島は果てのウルマ(珊瑚礁)に由来する名だそうです。渚ではしゃぐ海水浴客から離れ、少しばかり沖へ向かうと白砂のカンバスに水玉模様を描いたような造礁サンゴの群落が点在しています。天気よし。透明度はピカイチ。高知の海とは色艶がちがうなと感心していたら大きな海亀に出会いました。陸に上がったカメさんはのろくてカッコ悪いですが、水の中で平泳ぎをさせたら大したものです。肉体改造を終えた大谷翔平のように強靱な腕(なのか足なのか)を櫓にしてゆっくり力強く泳ぎます。

 

 

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亀仙人から休暇をもらったカメ^^!   *食堂に飾られていた写真より

 

悔しいのは、この日のためにAmazonで求めた中古の水中カメラが、使う前から壊れていたことです。安さに負けて中古に手を出した自分がバカだったと反省しきり。仕方なく肉眼レンズと脳味噌メモリをもって亀さんと一緒にこちらの珊瑚あちらの珊瑚と渡りましたが、ヒトの記憶は儚なくて、レンズの解像力もメモリ容量も全然足りません。ネットを探ればプロが撮った見事な写真はありますが、カメラは現場を思い出す道具なので、自分のために自分で撮った写真とは全く意味が違いますね。

 

 

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*ドラゴンボール巻1より

 

沖縄の海にはアオウミガメ、アカウミガメタイマイの三種類が棲息するそうですが、ぼくには見分けが付きません。というより水の中で海亀を見たのは初めてのこと、こちらも亀のように平泳ぎしながらけっこう長い時間ご一緒させてもらいました。浦島太郎は助けた亀に連れられて♪  龍宮城で遊び暮らし、亀仙人は家来の背中に乗って空を舞いました。だからおいらも乗せてくれとは言わないが、もうちょっと近づいてもよいかなと思ったのがまちがいで、ヒトの影に気付いた亀はスピードを上げ珊瑚の向こうへ消えました。

 

 

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波照間島ニシ浜の夕景 170712

 

やまと本土に住む者にとって島といえば海に浮かぶこんもりした山がイメージされます。瀬戸内の島々がそうであり、日本海隠岐の島、東シナ海五島列島もフェリーを降りればとりたてて違和感のない山であり森なのですが、沖縄には鉄板の上のお好み焼きみたいに平たい島がいくつもあります。沖縄本島からフェリーで渡った伊江島、石垣港の目の前にある竹富島西表島からすぐそこに見える鳩間島、歩いて渡れる由布島も平らな島でした。ここ波照間島も山をもたない台地であり、日が落ちたころ宿の屋上から島の中心部に向けてシャッターを切ると下のような絵になります。

 

 

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宿の屋上から見た夕景 170712

 

早起きして自転車に乗り8時の朝食には戻るべくカメラを提げてペダルを漕ぎました。あちらで止まり、こちらで止まり、写真を撮りながら島を一周して何とかご飯にありつけたので小さな島です。迷子になる心配はありませんが、山がないので位置把握できず、自分がどこに居るのかさっぱりわからない不安に駆られます。山だらけの高知から来た者には、ちょっとした驚きでした。

 

 

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宿に飾られていた波照間島の航空写真

 

向こうが港、手前の白い線は空港

むかしは緑に包まれていたはず

 

かつて田んぼや畑は人の手で畦が切られ、石川県は輪島の棚田、愛媛県宇和島市遊子ユスの段々畑のように遠景として見れば手書きの味がありました。いつしか農機が発達し1990年代のガットウルグアイラウンドあたりを境に、田んぼや畑は集積化・直線化し、四角四面の碁盤になりました。北海道ではアメリカや北欧のどでかい機械が行き来する広大な区画の中で農業が営まれています。

 

 

 

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山がないから溜め池は必須 170712

 

農地の大規模化は波照間島も襲い、かつて島人が精魂込めて鍬を振った農地・農村に定規が当てられ、この上もなく合理的な機械農法が始まりました。農夫は小さな点になり、昭和30年代の農村を知る自分には、寄り掛かる木陰さえない大規模農地にさみしい思いがします。都会暮しの皆さまにはピンと来ない話かも知れませんが、鍬ひとつ提げて広大な農地の片隅に立ってみればすぐにも分かる感覚です。

 

それが時代の流れであることは、農を営む者として否定できませんが、時代の流れが人間にとって正しいかどうかはまた別の話です。そのようなことを考えながらGoogle Mapを覗いていると五島列島に行き当たりました。

 

 

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五島列島福江島三井楽の水玉模様=丸畑マルハタ

*民宿の壁に飾ってあった航空写真より 200828

 

 

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バイクで訪ねた丸畑 200828

 

さすがに鍬一本では厳しいですが

小さな耕運機があれば闘えます

 

この数日後、過去最大の台風が接近し

丸畑を囲む樹木が欠くべからざる

防風林であることが分かりました

ほうほうの体で逃げ帰りましたけど^^

 

 

 

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波照間島 170712

キビ畑に置かれた塩化ビニールの雨受け

 

農地におけるヒューマンスケールが失われ、代わりに機械が幅を利かし、その機械の無賃労働から果実を搾取した農業者は幸せになった、ということもないとは言えませんが、時間に追われひたすら忙しいのが現代農業としたものです。そのようなことをここ半年、深夜の月を仰ぎつつ「雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ」クリスマスも正月もなくやってきて少々ダレました。肥タゴかついだ田吾作の時代よりオレらは豊かなのかどうか、まだ結論が出ていません。

 

 

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砂糖黍は島の特産 170712

 

南の島にはどこにでもキビ畑があります

というより吹きさらしの農地で

台風の風に対抗できる作物は

丈夫でしなやかな砂糖黍くらいのものかも

 

ぼくのトシの人間はMS-DOSの昔から今に至るパソコンの進化過程を経験しています。あんなことができる、こんなこともできるという期待を振りまかれWindows95の頃はドキドキしたものです。3Gが4Gになりデスクトップが掌に入ったときには、つくづく自分は21世紀の住人なんだと驚きましたが、これが5G 6Gになれば、それは過剰な技術ではないかという気がします。

 

2017年に波照間島Google Mapは使えなかったのですが、スマホがなくても自分の目があり足があり、道に迷えばそれもまた現実の一部であって、あえて掌の仮想現実に頼る理由はないのかも知れません。

 

 

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波照間島 170712

 

むかし「幸せって何だっけ」というCMがありました。「ポン酢醤油のあるウチさ♪」というのが落ちで、幸せは必ずしも文明的利便とつながらないことを示唆してヒットしました。モノとカネを追加すれば、ヒトはもっと幸せになれるという幻想のもとに資本主義は突き進んできましたが、それも限界に達したようです。マンション暮しの都市生活者が、リュック背負って山奥で原始生活をたのしむ不思議な現象が起きていることからも、現代人は生きる手応えを不便と非合理の中に探っているのかもしれません。サザエさんちで卓袱台を囲んだカツオやワカメがいちばん幸せだったのかなと、さほど遠くない昔が懐かしく思われたりします。

210601記 つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  # # #高知の今# # #

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栗の花 210530

 

いつしか年はまわり

今年も栗の花が咲きました

 

 

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仁淀川河口の河川敷に接する田んぼ 210530

 

知らぬ間に稲は太り

空を映した鏡の田んぼが

緑で覆われました

 

 

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水辺の紫陽花 210530

 

 

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田んぼの畦に植えられた百合の花 210530

 

コメを採ることと

花を愛でることの間には

何の関係もありませんが

春野の農家のおばさん方は

空き地とみれば花を植えます

 

 

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路地裏の亀 210530

 

YAMAHA-VMAXとかHarley-Davidsonでは

入る気にならない路地裏を行くと

亀仙人の家来が迷子になっていました

 

 

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210530

 

月のスッポンの違いは誰でもわかりますが

亀とスッポンの違いは都会の子にはわからないでしょう

悟空は亀を背負って海へ連れて行きました

ぼくはこいつを山に放してやりました

けっこう重かったです