ひとり旅 210731  道草の寄り道「スズメバチでお困りの方に」

 

 

 

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キイロスズメバチの巣の丸い外枠 2021.07.17

陶芸家が見たらデザイン的に刺激されるかも

 

ハチにも種類があり、蜜や花粉をたくわえて幼虫の餌とする「ハナバチ」や獲物に飛び掛かって麻酔注射する「狩りバチ」がいます。ウチのトマトハウスでは交配のため(黒くて丸い)クロマルハナバチを飼っています。性質は穏やか、ずんぐりむっくりの黒い塊が次の花へ移るときの動作はどこかユーモラスです。ミツバチやアシナガバチなら刺されても命にかかわることはありませんが、スズメバチを怒らせると大変なことになります。

 

拙宅の周辺にはスズメバチの巣があるらしく夏になると分蜂が行われ、数年前ふと見上げた書斎の天井に虎の縞々をもつスズメバチが30匹ほど群がっているのを見てビビりました。新居探しの途中でひと休みしていたのか、たんにサボっていたのかは分かりませんが、近づいてよくよく見るとスズメバチって怖い顔をしていますね。

 

 

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ドラゴンボール巻1

 

ぱんと叩かれて飛んだハチは

脚が短いのでミツバチみたいですが

巣の形から見てアシナガバチですね

翅が4枚しっかり描かれています

それにしても亀仙人の爪先が ^^!

 

ミツバチのお尻には釣針のようなアゴの返しがあり、刺したら抜けず、攻撃後は自分も死にます。一方、スズメバチの毒針には返しがなく、何度でも刺し、強力な毒液を注入します。蚊や虻とちがって蜂は刺激しなければ大人しいものですが、いくらなんでも狭い居室でスズメバチと一緒に昼寝するのはイヤだから、薬局でバルサンを求め、缶から白い煙を立てました。ガラス戸を閉め、暫くすると異変を感じたスズメバチは飛び始め、透明ガラスの外へ出ようともがいていましたが、やがて力尽き、床へ落ち、痙攣したあと動きを止めました。

 

2度目は、窓の格子にソフトボールくらいの大きさの巣がぶら下がっていたので、百均でメッシュの箱を買い、頭からすっぽり被って完全武装し、恐る恐るビニール袋に包みました。相当数が袋の中でブンブン唸っており、さてどうしたものかと考えた末、有機リン系の殺虫剤を使うのは可哀相な気がしたので? マイナス85℃の冷気を噴霧する「凍殺ジェット」で固めました!?

 

 

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掃除機改スズメバチ吸引器 2021.07.17

 

3度目の今回は、縁側の奥まった物置で巣を見つけました。YouTubeで駆除プロの手口をパクリ、A4ファイルを加工して掃除機の吸い取り口をラッパにし、

 

 

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スズメバチの巣取り器 2021.07.17

 

百均で買った網袋に

紐を引っぱると口が閉まる

仕掛けを作りました。

 

 

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完全防護 2021.07.17

 

スズメバチは黒いものに反応し

瞳を狙って真っ直ぐ飛び

当たる瞬間に尻を向けるという

恐ろしい一文を見たので

 

これまた百均でゴーグルを仕入

去年の今時分スーパーからマスクが消えたころ

aiさんが送ってくれた手作りの布マスクを2枚重ね

フード付きパーカーの上にヘルメットを被り

さらに厚手の防寒用コートを着込んで

 

ズボンの上に雨合羽のズボンを穿き

登山靴の隙間はガムテープで埋め

仕上げに厚手のゴム手袋を付けたら

汗だくになりました~~!

 

 

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掃除機の回転タンク 2021.07.17

 

掃除機をブン回すと

巣の破片と一緒にスズメバチ

回転箱に収まりました

猛烈な勢いでぐるぐる回され

目が回ったようです

 

タンクからビニール袋へ移したとき

逃げ出した1匹が

酔っぱらったように大きな円を描きながら

柿の木の向こうへ飛んで行くのを見て

 

亀仙人が、ガメラの背に乗り

くるくる回りながら降りてきて

あっち向いてゲロ吐いたコマを

思い出しました

 

ちなみにaiさんは

ご自宅でスズメバチの巣を見つけ

業者を呼んだら、ハチと一緒に

福沢諭吉が飛んで行ったそうです

こちらはゴム手袋390円+網袋とゴーグル220円=610円ナリ

かなり得した気分です

 

スズメバチの幼虫 2021.07.17

 

美しい球形の外枠が剥がれると

ハニカム構造の巣の中で

幼虫が蠢いていました

 

さて図書館の子どもコーナーは知の宝庫です

お幼稚や小学校低学年の子をかき分けて

中村雅雄著「おどろきのスズメバチ講談社を借りてきました。

著者は小学校の先生、「スズメバチ研究者」「日本昆虫学会会員

「カーリットの森を守る市民の会代表」他の肩書の持ち主でもあります

 

本書によると、スズメバチの幼虫は「女王バチや働きバチが身の回りの世話をしてくれるから幼虫には脚がない」とのこと、なるほどビデオを見ると六角形の揺りかごの中でうごめく幼虫には脚がありません。

 

面白いのは「ハナバチ」のミツバチが花の蜜をエネルギーとするのに対し、「狩りバチ」のスズメバチは「幼虫のために昆虫やクモをつかまえてはエサとして与え」「とらえた昆虫の胸などの肉は大あごで、やわらかいかたまりにして幼虫の口元に置いてあげる」幼虫は「いくら食べてもすぐにエサをさいそくするので、女王バチは休む間もなく狩りに出かけなければ」ならないそうです。

 

では女王バチ自身の食事はどうしているのか、「よくよく観察してみると、女王バチは狩りに出かけるとき、大きな幼虫ののど元を大あごで刺激して、透明な液のようなものをもらって」おり、「これが女王バチの栄養ドリンクになっているのです」「この透明な液は、幼虫だけが出すことができるものです。女王バチや働きバチの栄養になる飲み物で、彼女たちが活動するためのエネルギー源になる糖分などがふくまれています。その栄養は、1回受け取ると2時間近くも活動ができ、一説には、1日に100㎞も飛べるエネルギーの源になると言われ」「この液をヒントにして人間向けのスポーツドリンクが商品化されているほどです*」同書p42

 

というワケでハチの親子の栄養のやりとりが

ヒト世界の商業主義さえ巻き込み、われわれは

複雑きわまりない網の目のなかにいます

 

むだ話をもうちょっと

じつは「スズメバチはたいへんなごちそう」で「中国南部の雲南地方では、市場でスズメバチが食糧として大々的に取り引きされています」「日本でも、長野県や岐阜県ではスズメバチは珍味として、当たり前のように食べられています。とくにスズメバチの幼虫である”はちのこ“は、スーパーでも瓶づめや缶づめが売られるほど人気があります*」同書p42

 

「空を飛ぶものはヒコーキ以外、足の4つあるものは机以外」何でも喰っちまうのがChineseの凄いところで、それは過酷な状況下における生存の欲求と美味を求める飽くなき探究心の賜物でしょう。おれら高知の人間はイナゴの佃煮を見たら引くし、生きたハチノコは蛆虫みたいでイヤなんですけど、、

 

むだ話その2

ジョギングの途中スズメバチに刺されて病院送りされたヒトは可哀相ですが、見つかるやいなや毒虫あつかいされ1~3万円ほどの謝金で駆除されるスズメバチだって可哀相です。農家の伜たるぼくは小学校で、スズメは害鳥、ツバメは益鳥と習いました。スズメは空気銃で打たれたものですが、ツバメは屋敷に入り込んで巣をかけ、お構いなしにウンチしても新聞紙でトイレを作ってもらえます。スズメだって害虫も食べるだろうし、害虫だって悪いことばかりしているわけではありません。害とは何か、益とは何かとまじめに考えるとワケが分からなくなります。

 

スズメバチは益虫の一面をもちますが、ヒトを刺すこともあります。昆虫界のチータと呼ばれたり、ハイエナと蔑視されることもあります。スズメバチにしてみれば人間どもが勝手な価値観で何か言ってるけどウザいわと思っていることでしょう。この世のすべては網の目のようにつながり、あらゆる存在に意味があります。生態系の一部がこわれたらどうなるかは、図書館の子どもコーナーに集まるよい子のみなさんはフツーに知っています。

210731記 つづく