ひとり旅 210925  海の病院(2) 若狭湾高浜原発 北海道泊原発

 

 

 

 

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高浜原発の裏手から大飯原発方面を望む埠頭の釣り客  2021.09.05

 

北海道は泊原発から鹿児島の川内原発までほぼ全ての原発を訪ねました。訪ねたからといって何が見えるわけでもありませんが、そこに共通しているのは、海沿いの鄙びた集落の向こうに巨大な円筒が見え隠れし、悪いことは何もしていないのに背中のあたりに妙な気配が感じられることなのでした。

 

かつて高知の太平洋岸でも原発計画が現れては消えました。須崎市横浪半島、旧窪川町の大鶴津、佐賀町の熊野浦、さらには四万十市中村市と呼ばれていたころ中村原発まで構想されていたそうです。立地場所は何処を想定していたのだろうと太平洋を望む海岸をバイクで走りました。おそらく四万十川河口の名鹿の浜から布岬方面だろうと思われます。伊方原発の電気を使いながら、矛盾といえば矛盾ですが、わが故郷のすぐそこにも原発計画があったことを知り、理屈を超えた「おそれ」を覚えたものです。

 

3.11フクシマから10年後の今年9月14日、廃炉作業中の福島第一原発で「原子炉格納容器のフタのあたりで毎時1.2シーベルトという高い放射線量を確認した」との記事を見ました。シーベルトの1/1000がミリシーベルト、その1/1000がマイクロシーベルトです。フクイチの作業員は、ぼくのロシア製小型線量計がレッドゾーンに入る100万倍の単位で今も闘っていることになります。▼ちなみに放射線の影響表には「1シーベルト⇒吐き気、死亡率は低い。10シーベルト⇒1~2週間でほとんど死亡」とあります。

 

ヒロシマはウラン型原爆、ナガサキプルトニウム型原爆です。両都市とも核攻撃され灰になりましたが、しかし復興しました。キノコ雲が立ち上がるおぞましい爆発力とは裏腹に核爆弾で使われるウランやプルトニウムは原子炉のそれとは比較にならないほど少量だからでしょう。

 

中規模の原子炉でさえヒロシマに撒かれた「死の灰」3発分の放射能量を毎日つくり出すそうです。その核廃物が積もりに積もった今、しかし移動先のアテはありません。使用済核燃料は各発電所の施設内に保管されておりトイレなきマンションという暗い比喩が説得力をもちます。

 

 

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拙宅の石のコレクション 210924

 

中央の丸石は太古のむかし

室戸の海底で波にゆられ

角を削られ、丸められ、地震で隆起した

世界ジオパークの海岸段丘にごろごろしていたものです

 

丸石の後ろには北海道遠軽町白滝

島根県隠岐島島後島」久見

九州姫島の断崖で拾った黒曜石もあります

縄文人が矢や槍をこさえた材料です

値打ちものは手前の緑がかった四角い石で、

 

北米プレートとユーラシアプレートが衝突し

盛り上がって生れた日高山脈の南部に

アポイ岳世界ジオパークがあります

このジオの売りは、地球深部のマントル

ちらと顔を見せたところにあります

 

 

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室戸世界ジオパークセンターにて 160224

 

そのプレート活動の名残が

庭先コレクションの四角い緑の石なのです

ところが学芸員若い女性はとても真面目で厳しくて

幌満峡に行けばマントル⇒かんらん岩に出会えますが

そこは世界ジオだから「草木ひとつ動かしてはなりません」

とおっしゃるわけです、でも道端にごろごろしてんですよね

 

初代「はやぶさ」が宇宙の果てから持ち帰った

極微量の石のカケラを分析したところ

かんらん石(橄欖石)が見つかったと新聞にありました

まあそのように価値のある石らしいです

プレートと地震の産物です

 

 

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室戸世界ジオパークセンターにて 160224

 

四万十川にちなむ「四万十帯」南帯は室戸にもかかります

四万十帯を南北で分ける構造線が「安芸・中筋構造線」

四万十帯北帯と秩父帯を分ける構造線は

須崎市仏像にちなんだ「仏像構造線」です

 

そのように地元の地名に由来する地質学的名称が

3つもあるから高知はえらいということは全然なくて

まあオレらには覚えやすい名前ではあります

 

で、土佐沖に南海トラフが沈み

室戸岬足摺岬が両手を広げて津波さん

いらっしゃいという図になっています

 

断層といえば今にもズレ落ちそうな気がしますが

断層にも生きたものと死んだものがあるのだそうです

四国には吉野川から伊方原発のある佐田岬半島沖を抜け

大分、熊本までズズンとつづく中央構造線があります

 

フツーに考えてこの線上の原発はヤバイわけですが

地質図を見れば日本列島はヒビだらけ

ヒビのないところにも地震で割れ目が入ることはあり

そもそもプレートの境目が4つもある日本列島に

原子力は似合わないのでしょう

 

そのむかし国のためなら一肌脱ごうと気合を入れた高知県旧東津野村が「高レベル放射性廃棄物」の処理場(埋設場)を誘致しました。わが日本国において自治体の自由意思に逆らうことは誰にもできません。が、当時の橋本大二郎知事は「それほどまでに国のことを思うのであればカネの話はするな」と釘を刺し、この話は終わりました。

 

つづいて高知県東洋町で誘致論が起こり、すったもんだで首長の交代劇もありましたが、これも消えました。東洋町は、フィリピン海プレートが潜り込み凄い勢いで隆起を続けることから「室戸世界ジオパーク」に指定された室戸市の隣町です。南海トラフが揺れたら最短5分で室戸岬津波が来ます。その隣町が安全だとは素人目にも思われませんが、国は喜びました。既にある高レベル放射性廃棄物は日本国のどこかに置かねばならないからです。

 

 

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泊原発寿都スッツ町 ネットより

 

昨年9月、北海道寿都町で誘致の手が上がりました。好んで核のゴミを引き受けるバカはいないので町長は悩み抜いた末の決断であったろうし当然のごとく町は賛否両論の声で割れました。手を挙げたからといって直ちに廃棄物が持ち込まれるわけではなく、文献調査⇒ボーリング調査と進みます。その過程で中断される可能性もありますが、当面20億円ほどの交付金が入り財政難の町は潤うカネと故郷の悲しい方程式がここにもあります。

 

 

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北海道 泊原発2014.10.23

 

2014年に物寂しい泊村の泊原発を覗いた帰り、海沿いの道路を車で走りました。人口2900人ほどの寿都町は、そういえば道沿いに家並みがあったかなという微かな記憶しか残っていません。この町が手を挙げるとは、、

210925記 つづく