ひとり旅 220212 China編(6 中華思想と小中華

 

 

 

日本語で同胞といえば全人口1.2億人を想像しますが、東で震災があれば西の人々が誠心誠意で駆けつける国家共同体は、世界の常識でいえば珍しいのではないでしょうか。気がつけば10年も前の出来事になった東日本大震災の夏、韓国の友人と連れ立って津波の痕を訪ねフクシマ宮城岩手と上がりました。

 

 

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岩手県平泉中尊寺の参道 20011.08.18

 

ウクライナに火を放つより

巨樹のトンネルを行く方が

人生は愉しい

 

岩手県の宿で早起きした彼が朝の散歩から戻って言うことに「川沿いを歩いていたらヒトとすれ違った。知らない人なのに誰もが挨拶してくれる。韓国ではないことだ」としきりに感心していました。そんなん当たり前じゃんと思って聞き流したことですが、ふと韓国を歩いた自分の経験を思い出し、知らないヒトがオレに対して心を開いてくれたって経験はないなと思いました。

 

 

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中尊寺にて芭蕉翁と友人 20011.08.18

 

いずれは心ある韓国の人たちに

俳句のひとつも紹介しようと

後半人生を夢みていましたが

諸々の事情ですべてはおじゃんになりました

 

たしかその年のこと、Chinaの路傍で事故に遭った子どもが倒れていた。その前を多くの人が流れたにもかかわらず誰も助けようとしなかったことが監視カメラの映像付きでニュースになりました。可哀相な少女を前にひどい話だ。日本ではありえないとヤマト共同体のわれわれは憤りましたが、大陸的思考でいえば倒れた少女に哀れを感じぬわけではないにせよ、彼女が農村戸籍の貧しい家庭の子だったら病院に運んでも診てもらえないだろう。助けた相手に逆恨みされ訴えられることだってある。さわらぬ神に祟りなしという事かなと思ったことでした。

 

Chinaに14億人(一説に9億人とも) Koreaに5000万人強が存在し、それを一括りに国家と呼びますが、国家構成員だから皆平等に権利と自由が保障されているかといえば、そんなことはありません。Chinaにおける都市戸籍農村戸籍は明確に分離されており、ミヤコとヒナの関係は宗主国と属国くらいの違いがあるはずです。

 

 

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友人女性に案内してもらった

Koreaの田園風景 2002夏

 

すべての投資はソウルに集中し

山と田んぼに囲まれた韓国の農村には

いっそ清々しいほど何もありません

 

かつて女子卓球をリードした丁寧選手が平野美宇に破れたとき怒り狂ったChinaの丁寧ファンが「おまえはクニに帰って子を産め」と書き込みました。その「クニ」は東京に対する田舎の高知というレベルではなく、都市文化の影もない広漠たる貧困の大地を意味するはずです。「クニ」と訳した原語が何であるかは知りませんが、それは序列を原理とする朱子学が導いた中華思想に発する言葉であり、うまい訳なのだろうと思いました。

 

親方Chinaの中華思想をもらって「小中華」を自称するKoreaもまた上か下かの序列で世界を組み立てます。自分が上下のどこに位置するかで秩序が決まり、話はそこから始まるわけです。Koreanの誇りは親方の中華思想にありますが、その親方がモンゴルに滅ばされた元の時代ひそかに中華思想をあたためたことも彼らの誇りです。小中華の「小」はChineseが小日本シャオリーベンと呼ぶときの蔑称の小ではなく、中華思想を「純粋」に守ったという誇り高い意味です。

 

ついでにいえばモンゴル「元」は、漢民族「明」に代わり、つづいて満洲族(女真族)「清」に移ります。現代Chinaはむろん漢民族の国です。よしんばそれが歴史上の事実であれ王朝の交替にあたって他民族の支配を受けたことはメンツにかけて許しがたく習主席の今、異民族の「清」は漢民族の文化によって薫陶された⇒したがって清は漢民族の国であるという教育が行われているのだとか。このあたり万世一系のヤマト国民には想像の埒外です。

 

歴史は言葉だ。言葉は必要に応じて書き換えればよい。それが不可なら意識を切り換えれば事は済むという魔法を使った小説が魯迅の「阿Q正伝」です。シバかれてボコボコにされた男がむっくと立ち上がり「しゃあねえ今日はこのくらいにしてやるか」とうそぶくギャグはこの小説がルーツかも、、

 

世界を7つの文明に分けたハンチントン教授によるとKoreaは儒教圏に括られます。ChineseとKoreanは似たような精神世界の住人であり、すべての存在に上下があり、中心と周縁があります。Koreaにおいてはソウルが世界の中心です。中心から遠い全羅南道は差別の対象であり、海の向こうの日本列島に至っては蛮族の住処だという意識上の落差があります。「おいおいふざけんなよ」とオレら日本人は思うわけですが、それが「小中華」思想なので筋立てて理を説いても無駄です。だからドクト、イアンフ、チョーヨーコー、佐渡のキンザン等々蔑視の対象は次々とあらわれ、消えることはありません…という出口のないハナシは場を変えて論じます。

2022.02.12記 つづく