220513 ひとり旅 220513 ロシア編(16 ロシア 中国 津軽海峡 大隅海峡 サハリン 香港 台湾 宗谷岬

 

 

 

 

 

北海道オホーツク海沿いの放牧場  2015.10.10

 

南アフリカを旅した友人から「とても広くて帰るのがイヤになりました」という葉書が届きました。高知の土佐湾沿いで暮らしていると太平洋が広いのは分かりますが、車で30分も走ると山の谷間に畑があり村があり、空は三角、山は壁です。乳牛が遊ぶ北海道の大地を見て胸がスカッとしました。南アフリカもこのような風景なのでしょうか?

 

 

富山県人が作った地図

 

ウクライナ侵攻の4カ月前、2021年10月19日にロシア軍と中国軍の艦艇10隻が津軽海峡を越え、伊豆諸島から足摺岬沖の海域を航行し、大隅海峡を抜けました。両海峡とも国際海峡であり違法行為ではありませんが、これ見よがしに日本列島の首と足を切る航路は、明らかに軍事的意図をもちます。

 

日本地図を横に寝かせて大陸から見ると、いかにも日本は列島だなという気がします。北海道は樺太の延長であり、南シナ海に点在する南西諸島は、その気になればいつでも突破できる薄い壁です。

 

日本列島をロシア中国から見れば点在する島々にすぎません。大なるものをよしとする上下関係でいえば、広い面積をもつ大陸が偉く、間宮海峡で切られた樺太(サハリン)は文化文明の果つる地となります。序列を尊ぶ「大陸儒教」でいえば大陸⇒半島⇒海に浮かぶ小島は小日本(シャオリーベン)として低く見られます。▼フェイクかも知れませんが、ウクライナで投降した兵士や民間人は連れ去られてサハリンへ運ばれるというニュースを見ました。

 

2022年4月1日ロシアの政党党首が「ロシアは北海道にすべての権利を有している」と言明しました。「ふざけんな!」と思うわけですが、ウクライナに侵攻したロシアの議員にあってみれば、上掲ヨコ地図のごとく樺太(サハリン)の目と鼻の先にある北海道はロシアの領土だと考えることもありそうです。逆にいえば、1905年の日露戦争で敗北したロシアは、樺太の南半分を日本に取られていたわけでもあり、その土地を誰のものとするかは時代の力関係が決めることなのでしょう。

 

「ひとつの中国」とは、台湾が中華人民共和国に所属するという意味ですが、蒋介石が日本軍と戦ったという史実をもって言えば、むしろ中華人民共和国が台湾に所属します。しかし歴史の正論ではなく目の前の軍事力でいえば、中国が上、台湾が下であり、下は上に従わねばならないとするのが大陸儒教朱子学としたものです。それにしてもつい数十年前まで香港・台湾の経済力は大陸を圧倒していたにもかかわらず、変われば変わるもの、ぼくの頭の中では1980年代に中国を歩いた残像がビデオの早送りごとくです。

 

 

宗谷岬の歌碑 2015.10.10

 

1976年にヒットした「宗谷岬」は、いかにも長閑な平時の歌であり、戦時を想起させる文言はどこにもありません。戦後31年目の当時、憲法前文で言うところの「平和を愛する諸国民」は「公正と信義」をもって戦後復興にいそしんでいました。「流氷とけて春風ふいて」「外国船の煙もうれし」と北の暮らしを誇らかに歌う「宗谷岬」は豊かな文明に支えられた高い文化性をもちます。文化は経済・軍事の上に立つものだからです。その仕合わせも賞味期限が近づいたかなという気がして悲しいです。

 



千葉紘子の宗谷岬

 

2022.05.13記