ひとり旅 220819 バイク編(2 よさこいソーラン祭り

 

 

 

 

今となっては昔の話ですが、1991年NHKの人気キャスター橋本大二郎氏が落下傘で高知に降りてきました。澱みない語り口で高知県民をとりこにし知事選で圧勝したあと「官官接待」廃止、公設民営方式で「高知工科大学」を開設する等、次々と荒技を繰り出しました。そのかたわら文化行事や市民運動にも積極的に関与し、おっと知事さんこんなとこまで来てくれるかよと驚いたものです。

 

 

祭りの日の小樽運河 2022.07.24

 

1952年生まれの「よさこい鳴子踊り」は、1992年「Yosakoiソーラン祭り」と名を変え札幌へ飛び火しました。もとはといえば北海道から高知へ遊びにきた大学生の長谷川岳氏が、鳴子踊りを見てビビッと来るものがあり、これを札幌に持ち込めないかと考えた末、橋本知事の出勤時に「待ち伏せ」したという逸話から始まります。フットワークの軽い知事がどのような反応をしたかは容易に想像できます。

 

 

おたる潮まつり 2022.07.24

祭りの日には浴衣姿がよく似合う

 

小樽港へ降りた7月23日から降りみ降らずみの空模様、バイクの旅はヤバイかなと戸惑ったのが幸いし、たまたま「Yosakoiソーラン祭り」の小樽版に出くわしました。何も知らずに歩いていると「よっしゃこい」の掛け声が聞こえ、誘われるように近づくと観客に取り巻かれた特設舞台で各チーム思い思いの衣装と振り付けで「Yosakoiソーラン」を踊っているのでした。

 

 

鳴子両手にソーラン節で♪舞い踊る「おたる潮まつり」 2022.07.24

 

長谷川岳氏が高知の「よさこい」を見た翌1992年、10チームの参加をえて第1回「Yosakoiソーラン祭り」が札幌で開かれました。10回目の2001年には何と408チームにふくれあがり、祭りの規模でいえば人口200万人の札幌が30万人の高知「よさこい」を軽く抜きました。(かりに1チーム50人とすれば)2万人を超える踊り子が札幌の特設舞台で舞ったことになります。時宜を得たイベントが若者の心を鷲づかみにしたのでしょう。2020〜21はコロナで休みましたが、今年2022年に復活し、気がつけば29回目の開催です。長谷川岳という名を知った日からはや31年が過ぎました。

 

2022.07.24

 

Yosakoiソーランのルールはとても簡単「鳴子を握ってソーラン節が入れば」あとはどうでもよろしいのだそうです。「ソイヤ」の掛け声を聞いたときには、これって高知のパチンコ業界「セントラルぐるーぷ」が開発したものだよなと懐かしい気持ちでした。

 

 

2022.07.24

 

某編集長から「最近の若い子はほんとダンス上手ですね」とのメールがありました。世界のダンス文化が急速に結ばれつつある今、おれらラジオ体操世代の不自然な動きって何だろうと改めて思います。ウチの隣の小学校でこんなダンスやってくれたら喜んで見に行きますが…

 

 

積丹シャコタン半島  2022.07.25

 

「ソーラン節」の発祥は小樽に接する「積丹半島から余市郡にかけての地域」だそうです。北海道は広いからソーラン節が道内くまなく共有されているかどうかは不明ですが「ニシン来たかとカモメに問えば」の名文句は道外に散った北海道人に故郷を思い出させる歌ではあるのでしょう。「ニシン」を「カツオ」に置き換えれば高知のぼくらにもピンと来るものがあります。(音韻的には歌になりませんけど^^)

 

本家「よさこい」の歌詞は「土佐の高知のはりまや橋で」「坊さんカンザシ買うを見た」ことに始まります。なぜ坊さんがカンザシを必要としたかといえば、彼女にプレゼントするためであり、それは坊主の修行と相容れない行為ではありますが、その辺りの人間感情を南国的にとらえ、野暮なことは「言いなや」と「よさこい」⇒夜更来⇒夜早来⇒夜は (飲み屋に) 早く来て楽しく盛り上がりましょうという歌詞内容です。今年のチームには坊主の名を冠した「純信連」というのもありましたけど...まあ真面目な話ではありません。

 

一方「ソーラン」は鰊漁の「ソーレ」という掛け声から生まれたものらしく、待ちに待った鰊の群を網にさそい船縁に並ぶ漁師たちが一斉に「ヤーレ」「ソーレ」と声を合わせたのではないでしょうか。ソーラン節が北方の労働歌を起源とするなら大漁の喜びを言祝ぐ「ソーラン」節と酒が匂う「Yosakoi」の間にはやや乖離があるのですけども^^ そこを強引にくっ付けた長谷川岳氏の力技におそれ入ります。

 

噂に聞く「Yosakoiソーラン」に小樽で遭遇し、やたら元気な踊りっぷり、力まかせの舞いっぷりはビデオで見た札幌よさこいと同じだなと思いました。ゆれるフラフ(大漁旗)を背景に若者の群が鋭く動いたかと思えばピタリと止まって観客を驚かせます。体育会系の集まりかよと見まがう精鋭集団は、やれと言われればストリートダンスでもやっちまいそうな勢いですが、どのチームもリキ一杯にビンビン押して来るので、あまりの気合に圧倒され、長く見ていると辛くなりますネ。「Yosakoiソーラン」と「よさこい鳴子踊り」は似て非なるものがあるなと直感しました。

 

文化人類学によると文化は伝播先で進化するのだそうです。それが進化なのか変化なのかは知りませんが、北海道「Yosakoi」は北の風土にあわせて変容していくのでしょうし、すでに長いことやってきた高知「よさこい」は南の風土に合わせ、あるべき所に収まったように思われます。

 

文化人類学でいう参与観察

はやり言葉でいえば「踊ってみた」

ことがあるので元祖「よさこい鳴子踊り

については次回レポートします。

2022.08.19記 つづく