ひとり旅 221002   大型バイク編(2 イージーライダー ウラジーミル・プーチン 高市早苗

 

 

 

 

イージーライダー」 ネットより

 

ヤクザっぽい兄ちゃんが鼻で白い粉を吸い、長いフロントフォークのバイクに跨がって大地を行く映画「イージーライダー」が封切られたのは1970年のことでした。当時はベトナム戦争の最中であり、地球の裏側の知らない国との戦争に駆り出されたアメリカの若者が「ウッドストック」で大規模な野外コンサートを行い、反戦・反体制を唱えたのはその前年1969年の出来事でした。

 

 

今なお残るラオスの爆弾池 Photo/Stephan Wilkes    日経新聞より日付不明

 

ベトナム戦争において最も多く爆弾が投下されたのはラオスです。ホーチミンルートを塞ぎパテトラオを攻撃するため「空爆回数58万回、落した爆弾200万トン」⇒ラオス人1人あたり1トンになるというから無茶苦茶です。

 

 

ラオス北部メコン川の宿場町ムアンパークベンにて 2018.09.27

 

緑の館入口の柱は二つに割った

不発弾が支えていました

 

米ソ冷戦の代理戦争の場とされたインドシナ半島は有り余る軍事物資の捨て場であり、自由の国アメリカの若者が自身とは関係のない戦争に駆り出され5万人ほど命を落としました。怪我人は死者数の数倍に及びます。

 

 

Harley-Davidson Lehman Trikesを駆る

プーチン大統領  ネットより

 

2010年クリミア半島セヴァストポリ

ウラジーミル・プーチン(当時首相)が

バイク仲間の先頭を切った

 

それにしてもこの写真はうまい!

イージーライダー」を想起させる左端の

長いフロントフォークが絵に速度を与え

野郎の背中にロシア国旗が流れて

視線はプーチンの顔に誘導されます

 

漫画「ワイルド7」で見たような

三輪車(Trikes)が爆音を轟かせ

男が夢みる勇ましさを演出していますネ

 

ロシア大統領ともあろう者がハーレーダビッドソンに乗ってはいかんやろと思いますが、今から12年前、世界が平和に包まれていたころの風景だから「まあ堅いこと言うなよ」と言ったかどうかは知りません。一説にプーチン大統領カワサキを隠し持っていたそうな⇒川崎重工が母体のカワサキは、他3社と微妙に異なり、無骨なデザインが特徴です。軍事を一手に握った独裁者の心に響くものがあったのでしょう。この写真が撮られた4年後の2014年ロシアはクリミア半島に侵攻します。

 

 

馬上のプーチン   ネットより

 

ウクライナ侵攻後NATOのメンバーが

「俺らも裸で馬に乗るか!」

 という黒いジョークを飛ばしました

 

マッチョが売りのプーチン

上半身裸で乗馬したり

真冬の屋外で冷水に浸かったり

山下泰裕と親交を結ぶ柔道家でもあります

 

ネットには、メドベージェフ前大統領と共にジムで鍛えるプーチン大統領の姿に加え、射的、F1、アイスホッケー、潜水艇さらにはモーター付きハングライダーを操るスポーツ選手のイメージが置かれています。言うまでもなく情報戦の一環です。▼今ロシア軍はウクライナで苦戦を強いられています。原発の近くで爆発が起こり、核使用が示唆され、若者は徴兵を恐れて国外脱出し、誰が何のためにやったのかは不明ながらロシアから欧州へ向かう天然ガスのパイプラインが破壊され…戦争の行方は混沌としています。

 

 

カワサキに跨がる若き日の高市早苗 ネットより

 

若いころヘビメタのロックバンドで

ドラムを担当したという高市女史は

視界180度のバイクで風を切り

風景の向こうに何を見たのでしょうか

 

高市早苗(現)経済安全保障担当大臣は、かつて高速道路でのバイク2人乗りが一般道路より危険というわけではないという自身の経験から2005年に条件付きで高速2人乗りok法案を通しました。取り立てて日本国をゆるがすような法律ではありませんが、立法府の議員はこんなことにも目を向けているのだなとバイク好きにはちょっと嬉しい話でした。ぼくも若いころ彼女と同じカワサキGPZ400に乗っていたので感じるところがあります。

 

という可愛らしい法案はさておき2021年の総裁選において岸田、河野、高市3者が争った際の凛とした発言に驚き、彼女の本をKindleで買って読んだところ当たり前のことが当たり前に書かれているのでした。30代で国会議員に当選したころ政界で「この小娘が」と言われ「30過ぎて小娘と呼ばれるのはちょっと嬉しい」と洒落で返した彼女は政界のオトコ大物が口ごもって言えないことを堂々と語れる人物でもあります。法案を作る過程で徹底的に調べ、いったん文字化し、誰にでも分かる政治語に置き換えて語るから聞き手の耳にすッとなじみます。「政治は言葉だ」と言ったのは「鉄の女」サッチャー女史ですが、そのサッチャー女史を信奉するという彼女は、不要な間投詞を入れず、ロジカルな語り口が爽やかです。

 

とはいえ彼女の言い分が正しいかどうかは反論を含めて検討せねばちゃんとした考えにはなりません。議論は正⇒反⇒合の三角形を繰り返して深化するという哲学を思い出し、彼女の記述に対する具体的な反論を探しましたが今のところ見つかりません。野党のチェック項目には入っているはずなので反論と提案を選挙民の前で具体的に示して欲しいものです。彼女が先にカード切ったのだから野党もメディアもしっかり語れよと思うわけですが、議論がない骨がない批判はあっても提案がないのがわが日本国の政界事情なのかなあと寂しい思いです。敗戦後の平和?教育と経済の成功に酔い痴れ幸福を支える背後の存在を見失ったツケが今にしてやってきたように思います。▼高知駅前には坂本龍馬武市半平太中岡慎太郎の像が並んでいます。三者とも歴史の変革期に身を挺し暗殺されました。令和のわが高知県選出代議士には語りにくいところを語ってくれんろうかと願うのですけど…

 

9月27日の国葬儀で3度涙を拭ったという高市早苗経済安全保障担当大臣は翌28日、BSフジのプライムニュースで「セキュリティー・クライアンス⇒スパイ防止法」に触れ、これを「しっかりやらないと欧米のサプライチェーンから外される可能性もある」ことを示唆しました。同時に「中国という言葉は出すな」と言われたと曝露発言したことからネットが炎上しています。それに対し、

 

岸田首相との会話を「信頼関係を壊してまで曝露するのは許せない」という至って常識的な解説があれば(岸田首相の目論見として)「法改正は中国を刺激せずに粛々と勧めていく狙いがある~手法の違いではないか」という違う角度からの説明もあります。解釈の仕方は様々ですが、高市経済安全保障担当大臣が焦っていることは確かです。(ネットに各種記事あり)

 

高市大臣は高速2人乗り法案とはまるで違う大きな法案を狙って当面挫折したわけですが「クビになったらさようなら」と笑顔で番組を終えた彼女はどこへ行くのか? 子どもじゃあるまいし捨てぜりふを残して政界を去るわけはないので、ふと彼女は国葬儀のあと命を張る覚悟を決めたのではないかと思いました。暗殺された故安倍首相の精神的直系といえる彼女もまた物理的な危険にさらされているはずです。

 

 

佐渡島の歴史伝説館「山椒太夫」のフィナーレ  2022.08.03

 

そのようなことを考えているうちに今夏バイクで走った佐渡島を思い出し⇒森鴎外の小説「山椒太夫」を連想しました。人買いにだまされた姉と弟は奴隷としての生活をつづけるなか逃亡を謀ります。追っ手に迫られた姉は弟を逃がしたあと池に身を投げ、やがて成長した弟は佐渡で母と再会するという粗筋です。とかく男は迷いの多い存在ですが、思い詰めた女性は誤魔化しのない行為に至るように思います。▼いま世界の民主国家には女性のトップが増えています。独裁国の首長は男だらけですが、血の気の多い男より女の方が平和的政治を実現してくれるのかもしれません。

 

2022.10.02記 つづく