ひとり旅 220505 ロシア編(14 宗谷海峡の米軍潜水艦 奄美大島の対馬丸 ジパング ウクライナ

 

 

 

 

北海道宗谷海峡 平和の碑1015.10.10

 

碑文には「太平洋戦争のさなか1943(昭和18年)10月、ここ宗谷岬の沖合で日本とアメリカ合衆国との間で5時間に及ぶ戦いが繰り広げられました。この時、旧日本海軍の攻撃で、アメリカ海軍潜水艦ワフー号が乗組員80名を乗せたまま撃沈されました」「そのワフー号は日本海を北上してきましたが、その途中、関釜連絡船『崑崙丸』をはじめ商船などへの攻撃を繰り返し、多くの日本人が犠牲になっています」とあります。

 

戦争終結後に「鬼鹿沖」でロシア潜水艦の攻撃を受けた樺太引揚げの「三船」と違い、戦時の商船は間接的に戦争に加担するので攻撃側が100%悪いとは言い切れないところがあります。その商船を沈めた潜水艦も日本軍に沈められたというから、海上で光を浴びつつ意識を失った人々も、海中の狭い空間であえいだ兵士も、この世の生を全うできなかった恨みは残ります。戦争を遠くから見れば、いのちのいたずらな消耗にすぎません。

 

 

奄美大島宇検集落の対馬丸慰霊碑 2017.07.19

 

碑文には「太平洋戦争終戦の1年前、昭和19年8月22日午後10時すぎ、沖縄から学童、一般疎開者を乗せて長崎へ向かっていた『対馬丸』が悪石島付近で、米国潜水艦ボーフィン号によって撃沈されました。犠牲者およそ1500人、そのうち学童780人余、就学前の幼児をも合わせると1000人余りの幼き命が一瞬にして奪われました。当時、ここフノシ海岸や枝手久島をはじめ周辺一帯には多くの遺体が漂着しました。あまりの無残さにとても正気では埋葬できず焼酎を煽り、感覚を麻痺させながら浜に横穴を掘るなどして、村民が手厚く埋葬しました」とあります。

 

 

かわぐちかいじジパング」巻12より

 

 

多くの遺体が漂着したフノシ海岸 2017.07.19

 

子どもを含む「犠牲者およそ1500人」の遺体が散乱したであろうフノシ海岸を歩きながら73年前の夏を想像しました。これが映画なら突然の雷撃または砲撃によって大混乱に陥った船上の光景をフラッシュバックさせるシーンですが、ぼくの想像力は貧弱なので、漂流物とてない渚を占有し、水中眼鏡にシュノーケルを付け、透明度の高い海で珊瑚を探したことでした。誰もいない海辺で過去を思い出させるのは石碑に書かれた文字だけです。

 

 

対馬丸碑  2017.07.19

 

ウクライナはロシアに対し一般市民を退避させる「人道回廊」をつくれと訴えています。ロシアはウクライナに対し一般市民を「人間の盾」として使うのは卑怯だという論陣を張っています。どちらの言い分が正しいのか、地球の裏側で二次情報を組み合わせて考えるぼくにはわかりません。ただ、戦争という愚かな行為の背後に、勝者敗者を超えた大いなる存在の意志が感じられるばかりです。

 

なぜプーチン大統領は「特別軍事作戦」を執行したのか、目的は何か、まだ誰も充分な説明をしていません。NATOに傾いたウクライナをロシア側へ引き寄せ、NATOとロシアの間に緩衝地帯をつくるためというのが専らの理由ですが、5月現在その目論見は逆に回り、ロシアと国境を接するフィンランドおよびスウェーデンNATO側に着くと腹を括ったようです。5月9日の対独戦勝記念日プーチン大統領は虚飾の賞賛を浴びることでしょう。しかし歓喜の拍手は無言の体制批判であるかもしれず、今後の状況によっては体制崩壊さえないとは言い切れないようです。

 

いま世界は新たな冷戦に向かっています。世界の核の半数をもつロシア、西側の資本と技術を取り込み急激に台頭した中国、西と東の間を揺れながら自国ファーストを貫くインド、理念ではなく利得で大国に追随する南米・アフリカといった東側vsアメリカ、カナダ、西ヨーロッパを中心としたNATOすなわち西側の対立です。

 

ずらりと戦車を並べても尖端技術で見劣りするロシア軍は、西側の最新兵器を持ち込んだウクライナ軍に苦戦しています。ロシア・ウクライナ戦争という兵器展示場において西側の歩兵携行式多目的ミサイルが有名になりました。1~2㎞も先にある戦車に向け、ロックオンして発射すれば目標の直前で舞い上がり戦車の上部を狙って落下するのだそうです。ネットには戦車内部の砲弾に誘爆し、砲塔が吹っ飛んだ映像が無数に置かれています。

 

玩具のドローンならぼくも持っていますが、ミサイルを搭載したトルコ製のドローンは絶大な戦果を上げているようです。結果として赤茶けた鉄が散乱する光景は、ネットの視聴者をゲーム感覚で楽しませますが、配信者は狭い戦車の内部にいた3人の兵士がどうなったのかは語ろうとしません。茶の間の映像として相応しくないという言い訳もできますが、悲惨な映像を見せられ、戦争忌避感情が蔓延すると兵器市場に影響があるからかもしれません。

 

侵攻当初キエフは2日で陥落するだろうと言われましたが、「芸人あがり」の大統領は逃げずに立ち向かいました。NATO諸国は、核使用の脅しにめげず、ウクライナへ武器支援をつづけています。親ロ親中のメルケルと交替したショルツ首相は、対ロ政策を180度転換しウクライナへの武器支援を決断しました。日経新聞2022.05.05には「EU ロシア産石油禁輸」とあります。ロシア産天然ガスの将来的禁輸と合わせてEUは、返り血を浴びることになっても、ロシアに軍事支配されるよりはマシだと判断したのでしょう。一方、戦争の大義を確信できないロシア兵は意欲を失ったのではないかとの報道もあり、ロシア内部には政変を予想させる事態が進行中のようでもあります。

2022.05.05記 つづく