日本ところどころ⑤ 四万十川 アカメ

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平成22年2010年に終了した市町村合併で全国3300市町村は1700ほどの自治体に縮小され、中村市四万十市と改名された。しかし行政が「これからは四万十市と呼ぶ」と宣言しても旧中村市に住んでいた者にとっては、中村市を流れる川が四万十川であって地名と川は別物だからぼくなど未だに馴染めない。名を変えても実態は同じとするのは行政のご都合主義であり歴史と地名は一心同体なのである。改名した時点で過去は消え、新しい歴史が始まる。すなわち旧世代と新世代は違う歴史を背負うことになる。

旧世代のぼくにとってここは中村市八束、四万十川に中筋川が流れ込む合流点だ。上げ潮だったので係留ロープは長く取ったつもりだが、間を置いて戻ると思わぬ高さまで水嵩が上がり浮力でボートが傾いていた。潮の干満を見るかぎりここはもう海だ。石で組んださりげない護岸が嬉しい。

琉球弧のどん詰まりにある西表島の浦内川はマングローブ林を貫いて汽水域が山の麓まで 迫る。そこを観光船に揺られているときサメの姿を見たことがある。上流から流れ込む淡水は軽いので上層に、海から入る海水は重いので下層にあって両者は混じらない。「だから鮫は川に上がってこられるのです」と船頭が教えてくれた。してみれば本来海洋魚である四万十川のアカメも汽水域の下層部を泳いでいるのだろう。

環境庁2017年版でアカメは絶滅危惧種ⅠB類に指定されている。宮崎県では2006年に捕獲を禁止したが、高知県では「釣り師の反発に遭い指定には至っていない。wiki」アカメが微妙な魚種であることを承知してのことか、釣り上げた人は写真を撮ってリリースすることが多いらしい。物の本には食べたら美味いとあるが、アカメを料理したという記事は見たことがないので釣り師はみな紳士なのだろう。野暮なことをおっしゃいますなってまさかね^^!


180317記