海事つれづれ五目めし 200322

 

 

 

 

 

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土佐市波介山展望所より横波半島を望む190507

 

土佐の高知は、太平洋に向けて室戸岬足摺岬が両手を広げ、地震津波もどうぞいらっしゃいという至って開放的な地形です。しかし自分は大きな地震は経験がないし津波も知識でしか知らないので、南海トラフが崩れたら早い所で数分後、場所によっては40mを超える大津波が寄せてくるなどと言われても現実感がありません。さすがに3.11後は、車で海沿いを走るときなど目の前の風景が揺れ、海が盛り上がってきたらどこへ逃げようか、トンネルの天井が崩れたらどうしようと恐怖を覚えたものですが、それも今となっては体の反応が鈍くなりました。

 

 

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春野町甲殿の津波避難所より太平洋を望む190317

 

2011年の夏、宮城県は女川町を訪ねたとき「祖父は海に出て戻らなかった」という人の話を聞きました。水が攻めてくる現場を目撃した女性から「数秒の差が命の別れ目です」と言われると文字で読むこととは違うリアリティがあります。津波の映像はYouTubeで繰り返し見、漁船に揺られて波間を走ったことは何度もあるので女性の訴えはよく分かる感覚でしたが、いつしか怖さは薄れ、今では海を見て風を読み、車からゴムボートを引っ張りだして沖に出ることしか考えなくなりました。

 

 

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四万十町志和 釣り客を乗せた遊魚船が戻ってきた200223

 

ヒトは忘れっぽいのか、忘れることはいけないことなのか、しかし忘れなければ記憶が積もって処理できず先に進めないではないか、むしろヒトが忘れる力を持つことの評価も大切ではないかとまあ得手勝手に考えるのはゴムボートと目先の快楽に引きずられてのことでしょう。それではいかんぞという警告のためか日本代表の卓球選手のユニフォームにはwasurenaiと書かれています。

 

 

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中土佐町押岡の渚200223

 

バスでどやどやっとやってくる観光客は桂浜か足摺へ行けばよいので、自然が好き、海が好き、見る目もあるという特別な客人を秘かにお連れしたい場が探せばまだ高知にはあります。この渚もそのひとつなのですが、惜しむらくは風情のないテトラポットが目前にデンと鎮座ましますことで、これ何とかしてくれんかなと思うわけです。台風で波頭が砕ける日にタイムマシンで葛飾北斎を連れてきたら果して「神奈川沖波裏」第二弾のインスピレーションが湧くかどうか、、完璧主義者の黒沢明なら撮影の邪魔になるので退けてくれと言うかもしれません。とはいえこの消波ブロックは渚の砂を守るためにありゴムボートの出航地探しにやってきた自分が文句を言ってはいかんのですけども、、

 

 

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中土佐町押岡の渚より海を望む200223

 

カメラはバカだから入ってきた光を全部定着させますが、ヒトの目は優秀で、脳内フォトショップのアプリを立ち上げマウスをこしこしすれば、見たくないものは見ない、見たいものしか見ないという離れ業をやってのけます。場末の飲み屋街を昼間に歩くのは興ざめなものですが、これまた脳内処理し夜の光に変換すれば別世界です。

 

 

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高知市千松公園200220

 

昨年12月ダイヤモンド・プリンセス号は高知の外洋港に停泊しました。乗客の相当数がバスに分乗し高知城で下車したりイオン高知に囲われたりしたかと思われます。大枚はたいてこの世の見納めを夢見た高齢者もいたはずですが残念ながらあのようなことになりました。日本政府はイギリス船籍のDP号を追い返すことだって出来たはずですが、高知県でいえば馬路村の3倍もの人口を乗せた船を善意で着岸させ、重傷感染者には高度医療の場を提供したはずであり、そのことにより得べかりし医療を受けられなかった日本人患者もいたことでしょう。コロナウィルスによって医療崩壊という新造語を目にし奇異な思いに囚われています。

 

 

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高知新港に停泊したダイヤモンド・プリンセス号190406

 

そのDP号に潜入し録画しネットに拡散させた神戸大学岩田健太郎教授の行動に共感する友人からメールが届きました。あれはインパール作戦と同じだと断罪する岩田氏の記述を精読しましたが、どうにも納得できないので次回自分なりの解釈を掲示します。

200322記