美浜原発の送電線下で稲刈り2021.09.06
いま4人の議員によって総裁選が行われており、議論のテーマにCO2をめぐる原発vs再生エネルギー論があります。原発には事故と廃棄物にまつわる「放射能」の問題があり、再生エネルギーには「出力」が小さく不安定であること、設置・廃棄において「環境」を圧迫する問題があります。
太陽光を押すA候補がエネルギーをめぐって官僚とやりとりした際の音声がネットに流出しています。原子力と太陽光の本質に触れる政治家のスリリングな見解であり、まちがいなく我々の近未来をしばる発言なので喋った言葉のまま抜粋します。文字に直すと現場の迫真力が失せますが、立場上位の怒気を含む発言はURLの掲示をはばかられるものがあるので、ご関心のむきにはご自分でお探しください。
・日本が再エネ入れるのに不利だ。みてえな記載が一杯あっただろ
・日本は核燃料、使用済核燃料を捨てる場所も狭くてありませんと全部書けよ
・石炭は日本の国の中じゃ採れませんと
・天然ガスも採れませんと全部書いたらどうだ、エネルギー一個一個に
・じゃあなんでそんな再エネだけあれするんだ
・再エネ最優先と言ってるのに
・使用済み核燃料が危ねえのはもう自明の理じゃねえか、おめえ
・北朝鮮がミサイルを打ってきたらどうすんだい
・テロリストの攻撃を受けたらどうすんだい今の原発
・そんな恣意的な記載を認めるわけねえだろうが
・いい加減にしろよ
・日本語わかる奴、出せよ
A候補は「放射能」をめぐる事故、攻撃、後始末の問題をあらわにし、対案として再エネ⇒太陽光パネルを使えと説くわけです。ところが、その太陽光パネルの製造元は中国産が想定され、A候補の身内の会社が関係していることが分かって大問題になりました。一国のトップが他国に生殺与奪の権を奪われれば国家は自立できません。
飛行機の窓から見た空港近辺の山々は
オニヒトデのようにゴルフ場が手を伸ばしています
加えて今は太陽光パネルが森を伐り至るところで
脳天の丸い禿げのように光っています
B候補は、その著書で、太陽光パネルの問題点に論及しています。
・太陽光パネルの耐用年数は20年から30年とされている。
・山の上の畑に設置された太陽光パネルの傾斜が時に地面を削り取る原因となっており、畑の下にある集落では土砂崩れの恐怖に怯えている。
・太陽光パネルには鉛やセレンなど有害物質を含む製品があり、適切に処分しないと「土壌汚染」が発生する。~ 日光が当たるかぎり、太陽光パネルは発電を続けるので、パネル面を表にむけたまま廃棄した場合「感電の危険」がある。
・パネルの2割を締めるアルミフレームはリサイクルに回るが、7割を占めるガラスは、分解が容易でなく、再生利用先の確保も困難であることから、破砕され、埋められる。
立法府に身を置く著者は
記述の背後に法的裏付けを持つので
否定するにせよ肯定するにせよ
論理に説得力があります
火力はCO2を排出し、水力は村を沈め、風力は景観を壊します。仮に太陽光で充分な電力を得ようとすれば日本中がパネルで埋まる計算になるそうです。そもそも太陽光パネルの製作・設置・廃棄時に必要とするエネルギーが、耐用年数内に電力で回収できるものかどうか。さらには太陽光発電の目的がCO2の抑制にあるのなら、豊かな森を伐らずに残し、樹木にCO2を吸収させ、O2を吐かせた方が温暖化防止の為になるかもしれません。(どなたか正確に計算してくれないだろうか)
大分県八丁原地熱発電所展示館 での説明スクリーンより130727
「地球白書」のレスター・ブラウンは、日本は火山国ゆえ地熱発電に注力してはどうかと提案しています。それは困る。熱源が枯渇したら大変だという温泉業界の反対もあるようですが、個人的に思いますに地熱発電が低調なのは、戦後日本の経済戦略として原子力に予算を回し、地熱は研究程度に押さえておけとしたからではないでしょうか。良いことずくめのエネルギーはないので最後はどこで妥協点を見つけるかの問題になります。
八丁原地熱発電所展示館のタービン130727
原子力館で見たタービンの美しい流線型ではなく
素朴な作りの羽にちょっと残念な気がしました
政治家の発言には対案が要ります。
B候補は原発を肯定しつつも新たなエネルギーとして「核融合炉」を提案しています。「既に世界中で74機の実験炉が存在し、15機が計画されている。核融合の実証プラントが建設ラッシュになりつつある中、日本は絶対に遅れをとるわけにはいかない」とし「量子コンピュータ」と合わせ「核融合炉」を国家戦略の二つの柱としています。その一文を読み、
はて?と考え込みました。ぼくのアタマのなかで核融合は、高速増殖炉と同じく兆単位のカネ喰い虫であり、何年経っても30年先50年先に追いやられる夢の技術だったからです。
忘れもしない1989年、米国ユタ大学とプリガムヤング大学の物理学者が「常温核融合」を発見したというニュースを目にしました。常温で核融合が起こるなら1億℃の熱は要らない。地上に太陽があらわれた。これでエネルギー問題は解決するとひとりで興奮したことですが、やがて話は萎み、夢から覚めたような気がしました。
ところが世の中には夢を見続けた研究者がいるのでした。東北大学といえば、ぼくなど光ファイバー他でノーベル賞を取り損ねた故西澤潤一博士を連想しますが、あの大学には一風変わった研究者がたくさんおいでるようです。
下記URLは「グリーンプラネット」の吉野社長、東北大学の伊藤客員教授、同大岩村特任教授らの凝縮系核反応⇒常温核融合の記事です。彼らが目指す壮大な目標は「火力発電や原子力発電をも代替しうる、世界の人びとの生活を支えるベースロード電源」なのだそうです。目下のところ現象はあっても説明する理論がないので「似非科学と見る研究者は多い」そうですが、「現在、日本とイタリアが主導しており、ロシア、中国、イスラエル、インドが開発資源を投入しつつある」とのこと夢のある研究です。
ネットを探れば、核融合のみならず東芝とビルゲイツ財団による小型原発を含め、世界はさまざまな形で核分裂、核融合の研究にしのぎを削っているようです。考えてみればレシプロエンジンでやっと空を飛べるようになった第二次大戦時に人類は核分裂を形にしたわけですから21世紀の今とんでもないイノベーションが展開されても不思議ではありません。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO06252800Z10C16A8000000/
付記
今の今まで政治と選挙には特段の関心をもたず(仕合わせに)暮らしてきましたが、昨年の米大統領選と今年の総裁選はずっと追い掛けました。昭和・平成とつづいた平和の賞味期限は過ぎたようです。本日の選挙において投票権をもつ党員および議員が党利党略・私利私欲ではなく天下国家のために一票投じてくれることを祈ります。
210929記 つづく