ひとり旅 211112  対馬の寄り道(1 湯布院の磯崎新と坂茂 梼原町の隈研吾 南の島のカメハウス

 

 

 

 

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湯布院駅 2021.09.30

 

磯崎新氏は大分県の生まれです。たぶん出身地というご縁もあってのことでしょう湯布院にユニークな駅舎が立ち上がりました。1990年代の初め、この駅舎を見学するためバイクに跨がってトバしたことを覚えています。二次元写真と四次元の現物では印象が違い、現場に立って改めてお洒落な建物やなあと思いました。黒い駅舎を見たのも初めてで軽いショックを受けました。ちかごろウチの団地でも黒系ガルバリウムで外壁をまとめた住宅が流行っています。駅舎の脇に催し物展が開ける空間があることもちょっとした驚きでした。磯崎新の建築はどれも頭よさげな線が特徴ですが、じっと見つめていると自分がバカに見えてくるという欠点があります。

 

 

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駅舎から見た由布岳 2021.09.30

 

「お前がいちばん好きな駅舎はどこだ?」 と問われたら、もちろん湯布院駅舎も素敵ですが、ぼくは迷わず内藤廣氏の「高知駅」と応えます。内藤廣高知県五台山にある流線型の牧野富太郎記念館も手がけており、建築に興味があるお客さんが見えたら必ずこの二つをご案内することしています。

 

 

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湯布院駅舎に隣接した観光案内所 2101.09.30

 

駅舎の隣になんやこれはという建物があったので寄りました。集成材を曲線で組み合わせ、円筒を直交させた教会を思わせる空間を演出しています。高性能CADを使い複雑な計算式をこなしつつデザインしたであろう坂茂氏もえらいですが、図面通りに施工した職人さんもたいしたものだと恐れ入りました。造られて間もないためか人肌になじんでいないところが残念かなという空間です。ネットを探るといろいろ説明文があります。ご興味の方はどうぞ。

 

 

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梼原町総合庁舎 2021.10.10

 

東京オリンピックスタジアムを設計した隈研吾氏の建築が高知県梼原町に4つほどあります。山の町で「隈さん」と呼ばれる建築家は木材が大好きですが、欅の一枚板を張り付けるわけにはいかないのでスギ板や集成材を使います。四角いデザインがお好きらしくガラスも金属も木材も茅葺きの茅もぜんぶ四角です。

 

 

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雲の上のホテル別館マルシェユスハラ 2021.10.10

 

マルシェだなんてお洒落なフランス語で飾ったホテルと道の駅の複合空間は、2階の通路から売場を見渡せるように設計されています。建設当初ホテル内部も見学させてもらいました。ネットのるるぶには「絶対泊まりたいホテル」と書かれていますが、ぼくは絶対泊まりたくないホテルです。人の動きを上から見下ろす空間は収容所の設計思想です。見る方は悪くない気分でしょうが、知らぬ間に見られるのは嫌ですね。四角いデザインが隈さん的といえば言えますが、意図するところは分かるにせよ、外観がみすぼらしく、どん臭く、田舎理解が深いとはとても言えません。邪推にすぎませんが、忙しい隈さんが門下生に図面を引かせてハンコ付いたのではないかと疑っています。

 

 

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新設された図書館

これは紛れもない隈さんデザイン  2021.10.10

 

人口3000人ちょいの山間地にこれほど贅沢な図書館がつくられて誰も不思議に思わない日本国は何と文化レベルの高いクニでしょう。大都市はどの国も似たような顔をしていますが田舎の風景はそれぞれです。ソウル一極集中の韓国では田舎に向けた投資はとても少なく、その分田舎が田舎らしくたたずんでいます。

 

その昔この町に韓国人学生を迎え町の人たちとどんちゃん騒ぎをやって愉しんだことでしたが、日韓のややこしい話は当時からありました。松山空港からバスに揺られ、小枝が窓を打つ森の道をずんずん行くうちに日は暮れ、不安になった女子学生がひそひそ声で「わたしたちはイアンフにされるのではないか」と本気とも冗談ともつかない話し声が聞こえたと同行の大学教授が笑って伝えてくれました。高知県須崎市出身の植村隆元朝日新聞記者が所謂「従軍慰安婦問題」を提起して間もないころの話です。

 

そのような森の田舎町に立派な建物があり、こともなげに高級車が走る日本とは何か、ソウルは東京と同じですが、田舎がこれほど豊かであることに韓国の若者はみな驚いたようです。言われてみればそうやなと彼らの目で日本を再発見できたことが日韓交流のいちばんの成果でした。ソウルには興味がもてず、反日嫌韓のお芝居にも飽き飽きしましたが、韓国の農山漁村は今でもリュックを担いで歩きたいなと思っています。撮り溜めた写真が山ほどあるので、いずれご紹介します。

 

 

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雲の上のホテル 2021.10.10

 

橋本大二郎氏が高知県知事をされていた1990年代に、たぶん慶応大学のよしみで隈研吾氏に依頼した作品です。隈さんまだ有名ではなかったからデビュー作といってよいでしょう。テンション構造で吊った複葉機を思わせる屋根が雲のように見えます。

 

都会から来た子どもが梼原町で「雲の上」ということばを口にしました。これはイケると気づいた大人が雲の上をホテル名に冠し、雲の上がこの町のキャッチコピーとなって、となり町が羨んだというオチがあります。建設当初この建物を見るためバイクにまたがり、胸突き八丁の辞職峠^^!を越え、トンネルを抜けたとたん目に飛び込んだ雲の上ホテルが強烈な印象を残しています。その思い出のホテルが竣工後30年も経っていないのに老朽化したらしく近々建て替え工事に入ります。やがて消える建物と一緒に「雲の上」で遊んだぼくの記憶も薄れることでしょう。年々歳々花ハ同ジク、歳々年々人ハ同ジカラズとやや感傷的になったりします。

 

 

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梼原町の「草葺」の家 2021.10.10

 

で「お前はどんな家が好きなのか?」と問われたら

茅葺きの在来家屋をウォッシュレット付きの

近代空間に仕上げてもらいたいなと思っています。

 

 

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南の島のカメハウス

じつはこのような家にも

憧れています^^

おひまい

2021.11.12日記 つづく

 

 

ひとり旅 211104  対馬のイカ イズスミ 漁礁 沖縄の魚屋 奄美の夜光貝

 

 

 

 

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ネットより

 

足摺岬の近くに松尾があります

マツオはカツオにつながり

鰹節の産地でもありました

 

生きのよい鰹を4つに割って黴付けし

カンナで削れば出汁がとれます

藁火で炙りニンニクを添えたタタキよし

脂の乗った戻り鰹の刺身よし

カツオを運ぶ黒潮はめぐみの海です

 

栄養豊富な海流はカツオのみならず

様々な魚種を育むのでオレら高知の釣り好きは

黒潮接岸と聞けば矢も盾もたまらず釣り竿片手に

仕事を放っぽらかして海へ向かったものです

 

本流から分岐した黒潮東シナ海へ向かい

対馬海流となって日本海へ流れ込み

寒流と混ざって豊かな海をつくります

 

 

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対馬の漁港 2021.10.03

 

リアス式海岸がつくる複雑な入り江には至る所に港があり

ずらりと電球をぶら下げたイカ釣り漁船が浮かんでいます

小回りの利くバイクでこちらの港あちらの港と渡りながら

これが噂に訊く対馬イカ漁船かとわくわくするものがありました

 

が、どうも様子がおかしいのです

港に人影が薄く、たまにすれ違う漁師の表情は冴えず

船はいたずらに係留されているかのごとく微かにゆれるばかり

競馬でいえば出走間際の荒い鼻息が感じられません

 

イカ漁は夜の仕事だから

真っ昼間に出歩く漁師がおらず

昼間の港が静まりかえっていても不思議ではないのですが

港と見れば寄らずにはいられない自分には

どこか元気がないように思われました

 

残念ながら今次の旅では

漁火がゆれる夜の海を見ることも

海鮮市場に出向くこともなかったので

はっきりしたことは分からないのですが

厳原は半井記念館でご案内いただいた学芸員の女性から

対馬の漁業事情を訊くことができました

 

結論をいえばイカ漁は極度の不振です

温暖化のせいかどうかは不明ですが

海水温が上がったことは確からし

魚種が変わりイズスミの群が

海藻を食べ尽くし、磯焼けし、まわり回って

イカにも影響したのではないかという推論でした

 

対馬の人は、イズスミは食べないのですが

うまく流通に載せれば販路は開拓できるだろう

漁協を通さずネットで販売する手もある等々

ひとりの市民として漁業の先行きを占っていました

 

日中韓北による獲りすぎも大いなる理由のはずですが

短い時間のお話であり、対馬独得の対外深慮もあってか

外国船にふれることはなかったです

 

 

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那覇の魚売場に隣接した屋台にて 2013.09.29

 

うわさのグルクンと

ぷちぷちはじける海ぶどう

久米仙をやりすぎると仙術が弱って雲から落ちたり

強いわりには問題行動の多い亀仙人のようになります

 

高知の釣り好きはキツ(イズスミの高知名)と聞けば

やや首を傾げて複雑な笑いを見せます

釣れば仲間の賞賛を浴びるグレに似た魚で

引きも強く磯で顔を見るまではドキドキしますが

タマで掬い揚げたとたん嫉妬含みの仲間の眼差しがやわらかくなります^^

「なんじゃキツかよ」というワケで食べて美味い魚ではないのです

 

ぼくが初めて磯に渡って釣り上げたのも良型のキツでした

いわゆるビギナーズラックというやつで、引きに興奮し以後

ひまさえあれば釣り三昧の青春を送ることになりますが

その後の推移はだれもが経験するところです

パチンコでも似たようなことが起こりますネ

 

 

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那覇の魚屋にて 2013.09.29

 

グルクンは沖縄の県魚、高知で言えばアジかサバみたいな扱いです

棚の向こうにおかれた青い魚はアオブダイ⇒頭部にコブがあり

デカいのはナポレオンフィッシュのような風格があります

 

むかし土佐清水市で働いていたとき潜水の得意な若い子が

ドヤ顔で訪ねて来て、尾で持ち上げると、おっと

これがたまるかというほどの大物を見せてくれました

ウロコが靴べらを思わせるアオブダイ

彼のおっかさんが、切ったり炙ったりした料理を

仲間と一緒に卓を囲みヌタや醤油でいただいたものです

 

正直なところ身は大味で町場の者にはちょっとなという魚ですが

美味い不味いは趣味と習慣がつくるワザであり

沖縄の店頭には色の付いた魚が所狭しとならび

高知ではナメられるアオブダイもイズスミも

沖縄では高級魚として扱われるようです

 

高知はカツオに象徴される回遊魚が好まれますが、市民大学

高知大学農林海洋科学部の先生が講演した長い話のシメは

やがて海水温があがり魚種が変わる

いつまでもカツオが食べられるとは思うな

色の付いた魚の調理法を考案しておけ、とのことでした

恐ろしい時代になったものです

 

 

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那覇の魚屋にて 2013.09.29

 

これぞ沖縄!!

なんと魚屋にシャコガイが並んでいました

店の奥でおばさんが貝の口に包丁を差し込んでいましたが

うっかり指を挟まれたりするとえらいことになりそうです

 

 

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これも沖縄!!  2013.09.29

 

夜光貝は真珠と同じ光沢をもちます

奄美大島のスーパーでは身と殻が分けて売られていました

身より殻の方が高いのは土産品になるからでしょう

 

 

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奄美博物館 1707021

 

奄美市小湊フワガネク遺跡(弥生期~古代)から出土した夜光貝匙(下)

それを現代作家がコピーした夜光貝匙(上)

 

 

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現代作家の作品 1707021

 

言ってみれば夜光貝匙は真珠の匙だから

色ツヤ照りハリとも貴婦人の趣があります

オレもやってみたろと夜光貝を2つ買い込みましたが

割るのはもったいないしヒマもないしで

花瓶になりました⇩

 

 

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御不浄の花活け^^  2021.11.03

 

夜光貝の外殻は伊賀焼の壺を連想させますが

人間国宝の陶芸家でも天然自然の芸術には勝てないでしょう

 

 

閑話休題

イカにもどって

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回転式イカ干し機 2021.10.03

 

高知のイカは洗濯物みたいに干しますが

対馬の漁村ではブン回します

 

 

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ここにも回転式イカ干し機 2021.10.03

 

いかにも漁がなさそうで

写真に撮っても絵になりません


錆びたモーター音とともに

わびしくまわるイカ干し機  2021.10.03

 

 

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大型の回転式イカ干し機 厳原 2021.10.03

 

最盛期にはこのような風景が

対馬の至るところで見られたはず

イカも不漁つづきのように思われました

 

 

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漁礁造り2021.10.02

 

では対馬の漁業はどうあるべきかと

侃々諤々の議論が展開されたにちがいありません

どこかの政党みたいに対案なしの批判でお茶を濁さず

魚の棲み家をつくれという具体策が出されたのでしょう

漁礁をつくる現場を初めて見ました

 

漁礁とは何か?

それは海の生き物が身を隠す場なので

かたちの美的形体に囚われる理由はありません

 

なんとアメリカでは

ご用済みの電車600輌、上陸用舟艇200隻

もちろん海を汚さぬよう清掃した上で

戦車、艦船、空母まで漁礁として海に放り込みました

その漁礁は、魚のみならず海好きの

ダイビングスポットにもなったようです

 

 

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完成した漁礁は

クレーン船で沖へ運ばれます 2021.10.02

 

対馬の港にも、イカを含めて、現代を読み解くテーマが山と積まれています。ネットを探ればそれなりの情報は手に入りますが、忙しい記者がちょこっと話を聞いて記事化してもまあ悪かないけどという程度のものです。テレビクルーがチーム取材したにせよカネと人生を賭けた職業人の真実に迫ることがたやすくできるわけもなく、メディアにはおのずと限界があります。逆に職業人が内部事情をわかりやすく解説してはどうかとも考えられますが、それは原理的に無理です。暇がない説明する理由もない。そもそも業界用語を駆使して精密に解説したところで一般人にはちんぷんかんでしょう。

 

そうはいっても一定の漁業事情を外部の人間が共有することは大切なので、この辺りに大学人の登板チャンスが生まれます。大学という恵まれた場を活かし、学生を連れて住み込みで取材に没頭すれば、イカにかぎらずぐんと視野が開けるはず、研究成果は社会に還元できるし気の利いた学生なら博士論文だってものにすることでしょう。若い世代は燃料満タンなので、きっかけが与えられれば年寄りとは違う動きをするものです。人生が繰り返せるならオレもあんなことこんなことをやってみたいものだとバイクで走りながら考えました。

2021.11.04記 つづく

 

 

追記

よそ事のように対馬イカ漁に触れましたが、経営危機はなにも漁業にかぎったことではありません。コロナ禍のいま街を歩けば、あったはずのお店が更地になっていたりします。高知空港の前を通って仕事場に向かう毎日ですが、心なしか以前より発着する飛行機を多く見かけるようになりました。コロナ後は爆発的に需要が伸びるという嬉しい予測もあります。めげずに頑張るほかありません。

 

日経新聞2021.11.03に「モデルナ首位15兆円増」とコロナ禍における稼ぎ頭の一覧表が載っています。ふざけんな! と心の中でつぶやき、1000人をはるかに超える隠しようのないワクチン犠牲者の方が、数字の扱いが怪しいコロナ死より多いのではないだろうかと思いました。数えてみれば身近な知り合い10中4人までもがワクチンの副反応で苦しみましたが、コロナに感染もしくは亡くなった人が身内にいたという人はおりません。要するにワクチンで稼いだのはアメリカ、中国、スイスその他の国であり、ぶっちゃけて言えば、ネットで世界が結ばれ、詐欺師が地球規模で展開したのではないかと疑っています。桑原桑原です~~!

 

 

 

ひとり旅 211029  90度回転地図 プレートがつくった日本列島 ドラゴンの爪

 

 

 

 

 

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対馬市厳原の半井桃水館で求めた90度回転マップ

 

はじめてこの地図を見たとき

Google earthを回したような戸惑いを覚えたものですが

紙の地図を壁に貼り、写真をパソコンの壁紙にして

毎日ながめていたらだいぶ目が慣れました

 

太平洋にむけて出張った臍が東京なら富山は背中にあたります

富山県で作られた地図だから日本の中心は富山です^^

 

 

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島根県須佐湾のホルンフェルス 2019.08.03

 

島根県の友人によると

山陰だ、裏日本だと言われるのは

どこか日陰者めいてイヤだとのことですが

90度回して日本海から見れば陰でも裏でもないですね

 

世界に島国はようけありますが

1億を超える人口を乗せた先進国で、これほど

奇妙な形をした列島は他にないでしょう

 

太平洋プレートは千島列島と小笠原諸島を点でつなぎ

フィリピン海ブレートに圧迫される高知沖をGoogle mapで見ると

弓なりにしなる南西諸島弧(琉球弧)が台湾につながります

 

 

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Google map より

 

地球温暖化説はあやしい

寒冷化説もあるぞということから

「温暖化」というフレーズが「気候変動」に変わった今

むしろ地球は寒冷化に向かい、あと何万年だかすれば

海水位が下がることだってあるのかも、、

 

すると津軽海峡も豊後水道も干上がって

点在する南西諸島が線となり

樺太から台湾までバイクで一気に走れるぞと

90度回転地図は色々考えさせてくれます

 

 

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対馬北部の海沿いに置かれていた看板より 20010.10.01

 

尖閣竹島択捉島沖ノ鳥島

しっかり描かれています

 

北海道は宗谷岬から先島諸島西表島まで

細切れでひと通り走った今

つくづく日本は長い国だと知りました

 

タテの長さだけで言えば、アメリカ合衆国中華人民共和国に匹敵し

海洋面積を含めれば「小さな島国」どころか広大な領域を占有します

 

気候的にも亜寒帯から亜熱帯まで揃っている国が

そうたくさんあるわけではないでしょう

四国の感覚でいえば北海道の秋はとても短く、冬は長く

旭川は夏37.8度+冬-41.0度⇒なんと最大寒暖差が78.8度もあります!!!

 

 

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戦車で大根堀り 北海道 2015.10.16

 

自走したり日本海フェリーに乗ったりして

北海道には都合1ト月ほど滞在しました

仕事柄どうしても目は農業に向かいます

広い大地でアメリカや北欧の農業機械が働く風景を見て

本州、四国とはだいぶ違うなあと思いました

 

知床半島西表島の時差はざっくり1.5時間ほど

日暮れが早い秋の北海道で南の島を思うとき

妙にちぐはぐな感じがしますね

 

 

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グローバルマップより

 

沿海州ないし韓国側から見れば日本海は東海です

だからJapan seaをトンヘに改名せよと

Koreanはイミフなことを言います

 

たしかにこの地図で見れば「東海」ですが

残念なことに世界の中心は韓国ではないので

それは言いがかりとしたものです

 

しかし個人ないし民族がアタマの中で

世界サイコーと思い込むのは勝手だから

他国人が批判するには当たりません

 

 

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台湾ドラゴンは爪が4つ 台南市にて 20017.10.18

 

世界一優秀な民族は「中原」に鹿を追う漢民族です!?

その華北から見れば「辺境」に位置するものの

2番目にえらいのが朝鮮民族であり

海の向こうのヤマト島は3番手の「蛮国」と

決めつけるのが、いわゆる華夷秩序です

 

その証拠に?

Chinaドラゴンは爪が5つもあり

Koreaドラゴンは爪が4つであり

Life誌「過去1000年で最も重要な人物100人」に

パブロ・ピカソと並んでランクインした葛飾北斎

Japanドラゴンには爪が3つしかありません(~~

 

画狂人北斎先生、草葉の陰で薄目をあけて

「へえそんな寓意があるとは知らなんだ」と

こっちを見るかも知れませんが

日本人は人間をランク付けすることが好きじゃないから

爪が三つだろうと五つだろうと、どうでもよかったのかも

 

ヒトを上下で分けねば暮らしが成り立たない儒教国あるいは

神を失った国では、序列上位が下位に落ちることは

気も狂わんばかりの屈辱でしょう

 

一方、日本人はこの世の生を終えたら

とりたてて努力せずとも天国なり極楽なりに行ける

あるいは命あるものに輪廻転生し

ウサギかカメかは知りませんが、水平移動し、

次々と生まれ変わると思っています

 

組織運営上序列を付けることはあっても

それは仮の世のお芝居であって、役を終えれば

同じ立場で酒を酌み交わすことに何の抵抗もありません

生あるものを横に並べ、みな平等とする仏教ないし

神道のやわらかさを誰もが心の奥底に秘めています

 

サナエノミクスという語呂が合わないネーミングをしてからかわれた

政治家某女史は「日本にはリアルに墓をあばくような文化はありません」

「刑を執行された方、刑期を終えられた方はもう罪人ではありません」

と述べました。男の政治家が口ごもって言えないことを

しっかと前を向き堂々と語った度胸にぼくは感動しました

ヤマトの「水に流す」文化は大陸ないし半島儒教とは相容れぬ思想です

 

 

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博多湾元寇防塁」の看板に描かれていた絵 2014.09.10

 

さて、その誇り高い漢民族=中原の人々は

モンゴルに国を奪われて元となり、13世紀の日本を襲います

高麗兵はモンゴル軍の手下として対日攻略戦を手伝い

対馬壱岐を落としたものの九州を占領するには至らず

博多のヤマト防衛隊に追っ払われました

 

 

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博多湾元寇防塁史跡 2014.09.10

 

対馬で「ゴーストオブツシマ」なる

人気ゲームがあることを知りました

へえと思いながらもこの手の知識はさっぱりなので

「こんなん知ってます?」と博学の某編集長に尋ねたら

当たり前のように詳しくご存じでした

次回金田城址の段で触れます

 

2021.10.29記 つづく

 

 

 

ひとり旅 211024 対馬の森の音楽堂 古武道 ラマダン 断食

 

 

 

 

 

f:id:sakaesukemura:20211024123145j:plain対馬北部舟志の森に残されたコンサート会場 2021.10.01

 

むかし昔の話ですが学生のころ上野や虎ノ門へバッハやモーツァルトを聴きに出かけました。音響工学の粋を尽くした空間だとステージがよく見えない安席でもバイオリンのくすんだ音色がはっきり聴こえます。本物の音に触れた耳なら電蓄でLPレコードを回しても、脳内変換ソフトで、それらしく聴けるとしたもので、、

 

天然素材の楽器が奏でる古典音楽だと演奏中の咳払いさえ要警戒ですが、耳より体に訴える演奏会なら神経質になることもありません。むしろ客席の自由度を広げた方が気楽に場を愉しめるとしたもので、杉木立でコンサートを開いてもよいじゃないかという自由な発想から生れたのが写真の舞台ではなかったかと想像します。ぼく自身、四国の山奥に内外の学生を迎えてどんちゃん騒ぎをやってきたのでハングルの横断幕を見て思い出すことが一杯ありました。

 

 

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愛媛県西予市の喫茶?庭園?「こけむしろ」 21.10.10

 

愛媛県西予市の杉木立に似たような着想でつくられた喫茶店があります。もとは大変な労力をかけて組んだ石垣に芋や麦が植わっていたはずですが、先祖伝来の段々畑はスギを植えたまま放置され、長い年月をへて杉木立になりました。カネに換算すればさほどの価値はないのでしょうが、かつての風景を思い出せる人にとって、捨ておくのは忍びなかったのかもしれません。スギの森を喫茶店にしようという大胆な着想が生まれました。

 

散策ご希望の方は

小箱に100円入れてご自由に

ゆっくりしたい方は奥の席で

コーヒーをどうぞという仕掛けです

 

仲間と大声で語り合っても

まわりは吸音材だらけなので

叱られることもないでしょう

 

休日だったこともあり

駐車スペースがなく

Uターンする車もあるほどでした

 

 

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こけむしろ 21.10.10

 

よく手入れされた杉は

迷わず空をめざし、緑の天蓋から

教会のステンドグラスのごとく

きらめく光が落ちてきます

 

杉の列柱がつくる背の高い空間で

コーヒーを愉しみ、物思いに耽けるのも

人生のひと駒です

 

ただ、よくよく見ていると

椅子が置かれた喫茶席は

杉の合間にぽつんと植わった楓の木の下でした

落葉広葉樹の傘を透かした緑の光が

ヒトの心をなごませるのでしょう

 

*持病をひきずって無理やり出かけた旅だったので杉木立の斜面を歩くのは控えました。ご興味の方はネットで検索すれば写真が一杯あります。苔の莚だから京都は苔寺を思わせる雰囲気なのかなと、、

 

 

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向かいの山裾に道場を建設中  2021.10.10

 

「こけむしろ」を紹介してくれたのは西予市で民宿を営むご主人でした。アメリカはペンシルバニア州の出身、京都で古武道を修行し、縁あって愛媛に移住したそうです。古武道は実践武道だから刀剣のみならず棒術、弓術、砲術等あらゆるものを武器として闘う武術のはず、不謹慎にも子どものころマンガで見た忍者を思い出し「ひょっとして鎖鎌なんかも使うのですか?」と訊けば「何でもありです」命のやりとりを前提とした武だから「スポーツ剣道とは違う」「あれは斬られても生き返りますもんね」「そう」というような話をしているうちに意気投合し、翌朝は山裾に建設中の道場を案内してくれました。

 

 

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建設中の合宿所?  2021.10.10

 

妻側一面にベンガラを塗り

広い窓に透明ガラスを張ったつくりは

「日本のものではありませんね」と呟くと

ニヤと笑いました

 

驚いたのは材料の大半が

ご近所さんからのいただきものだったことです

ムラには余所者には見えないルールがあり

そこを踏み外すと村八分にされます

外国でこれだけの人間関係をつくれるのは

人徳だろうなと思いました

 

室内にはまだ乾いてない土の断熱材に

ドラム缶を埋め込んだオーブンもあります

「ピザも焼ける」そうだから

「次に来たときはご馳走してよ」と

 

 

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建設予定の道場の礎石 2021.10.10

 

ユンボも借りもの

借りたまま「もう1年になります^^」などと

ほのぼのとした笑いがとれる外国人は珍しいです

遠からぬうちに円形道場が立ち上がります

 

恐らくは古武道修行の一環なのでしょう、彼は断食の経験があるそうです。それも20日間に渡ったと言うから俄かに信じられず何度も問いただしました。3日目が一番苦しい。そこを越えると楽になる。もちろん水は飲んだ。不思議なことに食べなくても通じはあったが10日目あたりからそれもなくなった。仕事は普通にしてきた。特に期間を決めていたわけではなく20日で終えることにした等々、ぼくに信じ込ませようとか、何かを伝えようとしてレトリックを駆使したということは全くなく、涼しい顔で淡々と語るから聞かされた自分は考え込みました。

 

ぼくも三畳一間で浪人していた二十歳の年に水だけ飲んで3日を送ったことがあります。月に2万円の仕送りが途絶えて飯が食えなかっただけの話で、断食という高度に哲学的な行為ではなく、好まない絶食を強いられたわけですが「3日目が一番苦しい」という言葉には納得できるものがありました。

 

かつてインドネシアで働いていた友人が「ラマダン(断食月)の季節になった。お前も一緒にやらんか」というメールを送ってきたので「じゃ付き合うわ」と軽い約束をしました。しかし仕事で歩き回っていると腹が減ります。お昼になって皆がお弁当を開けているとき知らんぷりして水場へ向かう自分がみじめでした。好き好んで断食しているのだから文句を言う筋合いはないのですが、それは頭で考えるロジックであり、体の感覚は別物ですね。同僚がご飯をいただいている傍らで腹を減らした自分は、除け者にされたように思われ、そうか哲学でいう疎外とはこのことなのだ。それは除け者、はぐれ者の意味なんだとばかなことを考えたことでした。

 

結局、自主的ラマダンは昼飯を抜いただけで終わりましたが、インドネシアの友人はやり遂げたようです。思いますに、それは友人の意志が強かったということでは必ずしもなくて、みんなで一斉にやるから出来たのではないか。真面目なムスリムラマダン時には唾も飲み込まないというが、断食とはいえ日の出前、日の入り後は飲み食い自由なので命にかかわるほどのことではないだろう。むしろ皆が一斉に断食を強要されることで宗教的一体感を共有できるのではないか。ラマダン明けの解放感ってどんなだろう。祭りの歓喜に似ているのではなかろうかといろいろ考えました。

 

誰にも見られず、誰にも知られず、孤高を誇りつつ自滅することは不可能です。しかし他者への強い愛があり、看取ってくれる人がいれば、あるいは可能かもしれません。「東北に即身成仏した人のミイラがあるけれど知っていますか?」と問うたところ「もちろん」とのことでした。かつて車中泊しながら東北を旅していたとき山形県は海向寺を訪ね、飢饉、天災、疫病から人々の救済を願い即身仏となった2体の住職の前で小一時間滞在したことがあります。断食どころか地の下で自滅を予定した修行って何だろうと骨に皮が貼り付いた上人のお手やお顔を拝見し思うところ多でした。

 

剣道や柔道ではなく古武道を極めに日本へやってきた

修行上の必然性はあったかもしれないが、とりたてて

強要されたわけでもないのに20日に渡って断食した

そのことを誇る風もなく普通に語れるアメリカ人って何なのか?

世の中には不思議な人がいるものです

2021.10.24記 つづく

ひとり旅 211020  対馬の森のシカの巻

 

 

 

 

 

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対馬北部 シカ 2021.10.01

 

ちょっとだけ自慢させてもらうと

森の中で出会った鹿の写真を撮るのは

けっこうコツがいるのです

ミラーレス22㎜単の標準レンズだから

もっと近づきたいけども

間合いを詰めるとテキは逃げます

中央部を拡大してご覧ください

 

比田勝の宿でまかないをしてくれた女性によると対馬ではシシもシカも増えすぎてもう大変「鹿なんて群で歩いているんですよ」と教えてくれました。「ムレってあなた奈良公園じゃあるまいし」ほんまかいなと半信半疑で問い直したことですが、舗装道路でばっこり出くわして、やっぱ本当らしいと思いましたね。

 

 

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こちらを向いたシカ 2021.10.01

 

一定の距離を置いた鹿は、やがて体を正面に向け、真っ直ぐこちらを見つめます。相手が敵対する存在かどうか、逃げようかどうしようかと迷っているのでしょう。鹿から目をそらさずバイクに跨がったまま手元でシャッターを切りました。鹿は腰のバネを活かし1回のジャンプで三段跳びの選手くらい歩幅を稼ぐので、走る姿はスローモーションのビデオを見るように優雅です。ヒトが鹿になりたかったら重力1/6の月面を行く他ないでしょう。北海道はサロベツ原野の夕刻エゾシカが連れ立って大波のような軌跡を残した姿が忘れられません。四国の林道で鹿に出くわし、驚いて逃げる後ろ姿をバイクで追ったこともあります。短足の猪は回転数で駆けますが、鹿のように脚が長いと歩幅で跳ぶのでカッコいいです。三塁打を放った大谷翔平選手みたいなものです。

 

ところがその鹿も

増えすぎて森を壊し

人里に出て悪さをするので

害獣認定されました

 

奈良公園で煎餅をねだる鹿を見て

美味そうだと呟いたら人格を疑われますが

今どきの野生鹿は撃たれてジビエ料理にされます

 

可哀相な気もしますが、捕る側にしてみれば

オオカミがやっていた仕事を代替するわけだから

苦労は多く、採算にのせるには問題が山積みで

仲介する行政も悩み多いことでしょう

 

今昔物語にふたりの女性を妻とし、ひとつ家に住まわせるというふざけた野郎の話が出てきます。男は丹波篠山の田舎で娶った「元の妻」に飽き、京美人の「今の妻」を迎えました。そこに届いたのが哀愁に満ちた鹿の鳴き声でした。「京のものなれば」恋に目覚めた秋の牡鹿をタネに歌のひとつも詠んでくれるだろうと期待し、厚化粧の「今の妻」に「いかが聞き給ふか?」と問うたところ女は「煎りものにてもうまし焼物にてもうまきやつぞかし」と応えたので男はがっかりしたという話です。「煎っても焼いてもジビエ料理は美味しいわ」だなんて情緒もへったくれもなく百年の恋も覚めちまったという次第、、

 

同じ問いを「元の妻」に投げたところ

妻は心移りした男に皮肉をこめて

やんわりと歌で返しました

 

われも鹿なきてぞ君に恋ひられし今こそ声をよそにのみ聞け

 

昔はあたしのこと可愛いね、きれいだねって言ってくれたのに今は都の女にぞっこんなんだから悔しいのよというわけです。この手の感情を露な言葉でぶつけられたら男は辟易しますが、ジェラシーを三十一文字に包んでそっと返した元妻のほどよい距離感に打たれた男は「今の妻」を都へ返し「元の妻」と寄りを戻したとさというお話です。歌を詠むとは、趣味や教養にとどまらず、夫婦間の安全保障にもつながるという寓意があるのかも^^!

 

恋人を呼ぶ牡鹿の声はこちら

https://deerinfo.pro/call-of-deer/

 

 

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猪鹿蝶の花札 ネットより

 

 

和歌のみならず

おいちょかぶの花札には

紅葉の下に牝鹿の姿が描かれています

刺青もむくつけき博打打ちが

猪鹿蝶の優雅な花札を並べて争うなんて

ヤクザがお姫様と貝合わせして遊ぶようなものです

 

ヒトの世に賭け事は付き物ですが

所詮はカネの遣り取りなのに

かくもエレガントな札を並べて

勝ち負けを競う民族は珍しいのではないかと、、

 

 

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挿絵は源氏物語  ネットより

 

やがて新札に切り替わります。千円札は野口英世北里柴三郎というお医者さん、五千円札は樋口一葉⇒津田梅子の女性リレー、おカネの金メダル1万円札は福沢諭吉渋沢栄一という商哲学のおふたりです。どの国も通貨のカオは政治家ないし軍人が幅を利かしていますが、戦後日本は文句なしの平和主義で一気通貫しています。きわめつけは沖縄サミットを記念した2000円札でしょう。全編これ恋だらけの源氏物語「鈴虫」の段が印刷されています。

 

平安時代のスズムシは

今のマツムシだそうです

チンチロリンの松虫の声はこちら

https://www.youtube.com/watch?v=ZBdSUrSZQAg

 

賭けてもよいですが世界中を訪ね歩いても国家の威信たる紙幣にあやしい恋の物語を置いた国は日本くらいのものでしょう。四海に守られ、美しくも風変わりな文化を育んだヤマトはもともと平和の国でした。外圧でこじ開けられ、明治よりこの方、多くの戦争を挟み、一旦ボロボロにされて終わりましたが、縄文以来の美風がすべて消えたとは思われません。

 

地質学者は日本列島を(なぜか自虐的に)「大陸の破片」と呼びますが、ハンチントン教授は日本を「一国一文明」として扱いました。日本海東シナ海は小船で渡れる距離ですが、文化文明の本質は半島や大陸とはだいぶ違うぞと思うに至り、じつはそのようなことを考えながらの対馬行でした。

2021.10.20記 つづく

 

ひとり旅 211017  対馬の森のシシの巻

 

 

 

 

 

 

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対馬南部の森 2021.10.03

 

観光マップに「原始林」という凄い言葉が置かれていたのでわくわくしました。原始林、原生林、処女林といった言葉の正確な定義は、人跡未踏の森を意味しますが、もはやヒトが足を踏み込んでいない森は地球上どこにもありません。しかし厳密なことを言っても仕方がないので、そのむかしモンゴルの兵士が見上げた対馬の森はまぎれもない原始林であったろうとアタマの中に巨樹が葉を繁らせる映画を作りながらバイクを走らせました。

 

対馬の最高峰は矢立山648mです。北海道の利尻山1721m、屋久島の宮之浦岳1936mに比べればどうということのない高さですが、海から立ち上がった照葉樹の森が谷間を挟んで広々とした空間をつくると、走るバイクからチラと見下ろす危なっかしさも手伝って森のスケールとスリルを同時に味わえます。脳内映画には昼なお暗い森蔭からゲゲゲの鬼太郎が妖怪を連れてあらわれそうな気配です。

 

 

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対馬北部 スギ材を乗せたトラック 2021.10.01

 

対馬の森を4日かけて北から南まで走り

スギ・ヒノキの植林は北部に多いかなという印象を受けました

 

わが高知県は森林率日本一! なんと県土の84%が森面積であり、その大半がスギ・ヒノキの植林です。子孫のために良かれと願い、山のてっぺんまで植えまくった林業家のご努力に敬意を払いつつも「緑の砂漠」は奥山まで続き、春もなければ秋もない森を見て、よくもまあこれほど植えたものだと溜め息が出ます。手入れを怠った植林の森は昼なお暗く、下草は生えず、根元の土は瓦礫です。豪雨にやられて洪水を起こし、根の浅いスギ・ヒノキを連れて土石流が谷を埋めることもあります。

 

先人の願いも空しく木材の値は安く「スギ1本、ダイコン1本」と自嘲気味に語られるほどです。林道脇のスギ・ヒノキは何とか採算がとれるにせよ、道なき道の傾斜地に植わった植林は間伐されぬまま価値を落とし、鳥の声もなく静まりかえっています。

 

すべては1964年(昭和39年)の「木材輸入の自由化」から始まりました。工業立国を選択した日本は、輸出と引き換えに外国産材を輸入し、あおりを食らって国産材は値を落とし、山の民は暮らしの場を失いました。やがて村人は山を下り、廃屋が広がって廃村となり、都市部で高齢化した村出身者は、年に一度の神祭で古里に集うことさえあやうく、遠く室町時代、戦国時代に遡る山村の歴史が戦後わずかの期間に人々の記憶から消えようとしています。

 

下記の動画「日本が捨てた村」は

高知県安芸市の山間の村「別役」の風景を

過去と現在を織りまぜ、淡々と映しています

ご興味の方はどうぞ

https://www.youtube.com/watch?v=ts2GmFKLvdk

 

 

 

 

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対馬北部の植林の森 2021.10.01

 

対馬は照葉樹の島かと思っていたら

意外にも植林が多く

それなりに林業も盛んでした

 

 

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対馬北部の原木椎茸 211001

 

しっかり鉄柵で囲われた

対馬農業の稼ぎ頭です 

 

林業、漁業、観光と並べ、旅館のご主人に

「儲かってますかね?」と訊いてみましたが

はかばかしい返事はもらえませんでした

ちょっと見の旅行者の目にも

楽に暮らせる業界はなさそうです

 

ただ一時的な現象かもしれませんが

いま世界的に木材価格が上昇しています

カナダのBC州で松くい虫が大流行した

中国各地の洪水によって住宅需要が生れた

コロナ隔離で疲れたアメリカ人が家を立て始めた

等々の理由があるらしいです

木材価格が上がれば高知の山は

宝の山になるので後日調べてみます

 

 

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イノシシを捕獲する罠 2021.10.01

 

この森を走っていたとき

バイクの音に驚いたシシが目の前をよぎり

ぷりぷりの尻を見せて崖を駆けあがりました

 

 

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ここにもシシ檻が 2021.10.01

 

対馬の人口3万人弱に対し

シカが4万頭!

イノシシは6万頭!!も棲息するそうです

 

イノシシ除けの鉄柵、電気柵は今や

全国の農地に張り巡らされています

昔はなかったことで様々な理由が考えられるのでしょうが

植林が増えたこと、山にヒトがいなくなったことも

関係しているように思います

 

むかし高知の山間の町で暮らしていたとき友人から「シシが捕れた。みんなで囲んでいる。来んか?」というお誘いの電話をもらいました。さっそく出かけたところ今しも解体を済ませた現場の脇で、部落の人たちが炭火を囲み、ものも言わずひしひしと食していました。海の近くで育った自分は、尾頭付きのサカナ料理には慣れていますが、ずらりと並ぶ食卓の上座にケモノの頭をデンと据え、新鮮この上もない肉を焼いて頬張るのは初めての経験でした。友人は「昔はタンパク源が捕れたら村人総出で栄養補給したものだ」ということをぼくに伝えたかったのだそうです。

 

呼ばれて出向いた自分は、焼き肉屋の暖簾をくぐったようなものでしたが、当たり前のことながら肉を喰うためには生きた肉を捕らえねばなりません。知り合いに「どこで捕まえたの?」と問うたら、いわく「田んぼで悪さをしていたから呼んでジャンケンした。こいつ馬鹿だから何度やってもチョキしか出さねえんだ。棒切れで頭をぶっ叩いてやった」のだそうです。猟好きの土建屋さんは「犬と一緒にシシを追い詰めた。鉄砲もって狙ったところで、よろめいて足元の溝にぶちこけた。慌てて上を見上げたらシシのキン○が揺れていた」と炭火の煙をよけながら取って置きの武勇たん?を披露してくれました^^!

 

バイクに乗っているとしばしばイノシシに出会います。五島列島上五島をトコトコ走っているとき凄い勢いで影が飛び出しました。猪突猛進とはよく言ったもので、あの瞬発力をつくるシシ君の腰のバネは相当なものです。道を横に抜けてくれたからよかったけれど直進してきたらどうなるんだろ。小さなバイクだからオレはコケる。誰もいない森の中で身動きできなくなったらどうすべいとまあ一人で旅をしているといろいろ考えるものです。ちなみに一昨年シシの腿肉をもらい、時間をかけて煮込みましたが、堅くて歯が立たなかったです。

 

2021.10.17記 つづく

 

 

ひとり旅 211013 ツシマヤマネコの巻

 

 

 

 

禁足令を厳守した方には申し訳ないのですが

一足お先にバイクで対馬を走ってきました

アタマが若いうちにレポートします

 

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ツシマヤマネコ/ボスターの写し  211001

 

望遠レンズでピントを瞳に当てた見事な写真です。

これが野生のヤマネコなら大した写真家ですが

顔と体に緊張感が欠けることから

おそらく「対馬野生生物センター」に囲われた

ツシマヤマネコなのだろうと思います

 

 

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対馬北部の佐護  2021.10.03

 

野生のヤマネコが棲息するには

食と安全を確保するための条件が要ります

対馬一の農地面積をほこる佐護には

餌もあれば隠れる場所もあり

地元の人は年に2~3回ヤマネコを見るそうです

 

9月末に対馬北部の比田勝港に着き

ときに旧道林道に分け入りながら

4日かけて南端の豆酘崎ツツザキまで走りました

走って感じたことですが、対馬南部には

高い山はあっても平地が少ないことから

ヤマネコは農地が多い北部が好きなのでしょう

 

 

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石になったツシマヤマネコ  2021.10.01

 

 

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コロナで閉館中の

対馬野生生物保護センターに

貼られていたポスター  2021.10.01

 

 

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ポスター 2021.10.01

 

5枚の写真は2020~2021年のものであることから今なお

ツシマヤマネコは健在であることが確認されます

 

西表島でもイリオモテヤマネコの交通事故は多く、道路脇に夜間の暴走をいさめる立看が置かれています。特別天然記念物カンムリワシが、怒りの脳天に羽毛が逆立つ冠を戴き、羽で頭を指差して「飛ばすな、ワシおかんむり!」と言う傑作がありました。思わず笑ってバイクのレバーを戻したことですが、そのカンムリワシも夜道で餌をついばんでいるとき車に跳ねられることがあるそうだから悲しいです。ヒトが電磁波や放射能に反応できないようにネコやタヌキのDNAには夜道で探照灯を見たら逃げろというプログラムが組み込まれていないわけです。

 

 

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2021.10.02

この顔写真はよく使われています

 

 

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小学生が作った立看

瞳に反射材が嵌め込まれています  2021.10.02

 

 

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哀願調の立看  2021.10.02

 

 

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命令型の立看  2021.10.02

 

 

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指名手配風の立看 2021.10.03

 

 

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怒りの立看  2021.10.02

 

レンズを寄せて

この角度で撮るとトラみたいですが

よくよく見ると子ネコっぽいですね

 

 

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芸術的な立看  2021.10.04

 

怖い顔で睨むネコを拡大してご覧ください

なんとこれ写真ではなくペン描きの絵なのです

大したワザの持ち主です!

 

 

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トンネルの入口にも  2021.10.02

 

 

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お店の案内にも  021.10.02

 

 

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トイレにもネコが待つ対馬

ヤマネコの島なのでした  2021.10.02

 

 

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わが家のイエネコは手枕が得意  2021.05.23

 

お城の下の日曜市でもらってきたのが昨日のことのようですが

はや15歳⇒ヒト換算すると74歳のおばあちゃんです

 

昔は三角の耳がピンと立つ

凛々しい猫でしたが

ワケありで耳が固まり、やる気が失せて

ネズミにも興味がなくなったらしく

 

天気のよい日は道の真ん中で

ひなたぽっこするのが日課です

 

そういえば

ドラえもん

ネズミに耳をかじられた

ネコだとか

 

 

 

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どこでもベッド  2021.05.23

 

お隣さんはネコがお好きでない方ですが

なぜか道端でハナちゃんを見つけると

しゃがんで頭を撫でて話しかけてくれます

 

アメリカからやってきた猫好きの女性は

ハナを抱き Happy cat! とつぶやきながら

クニに残してきた愛猫を思い出してました

 

イヌは縄文時代からヒトの友だちですが

ヒトとネコが並んで埋葬されていたという

事例は聞いたことがないです

 

ネコはイヌほど感情が豊かではありません

喜怒哀楽とりわけ喜と哀をあらわすには

悲しいことに大脳容量が足りないそうですが

その不足分をヒトが想像力で補ってやれば

まあ可愛いものです

 

2021.10.13記 つづく