台湾ひとり旅⑦ スクーター
台湾はスクーターの国だ。朝晩のラッシュ時にはエンジン音がビルの壁に反射して爆音のトンネルができる。鈴鹿の耐久レースのように消音器を取っ払ったマシンが直線コースを駆け抜けるほどではないけれど善男善女が無数のスクーターで作る騒音はかなりのものだ。信号に合わせて都市の音圧が変わる。
台湾でも50cc以下の二人乗りは禁止されている。というより原付に2人乗ったらバイクは前に進まない。このスクーターは後部座席用のステップが付いており車体の大きさから見ておそらく125ccだ。2人乗りはかまわないけれど3人乗りはイケナイ。たまに父ちゃんと母ちゃんの間にもうひとり子どもを挟んだ4人乗りを見かける。日本なら間違いなくパトカーの追跡を受けるが、台湾警察の許容度はとても大きいようだ。走るスクーターの上で一家団欒する光景は微笑ましくはあるけれど事故ったらヤバイで、、
125cc超は馬力があるからスピードが出る。流れに乗るには一定の速度が必要で、ゆっくり走れば道は安全というものではないのだが、後部座席に人を乗せると重心が上がって不安定になる。3人乗ったら重さでブレーキが甘くなる。交差点に差しかかると急激に危険度が増すから少なくとも4人乗りはやめた方がよい、とまあエラソーなことは言えないぼくも思う。
ヘルメットは顔を露出した簡易型ばかり、頭からすっぽり被るフルフェイスは見かけなかった。日本の高校では事故を起こしたとき少しでも安全だからという理由でフルフェイスを勧めるが、あれはむしろ危険だ。顔を覆って視野を狭めると妙な安心感に包まれる。意識が前を向き運転が荒くなる。しかるに危険は四方八方から迫る。フルフェイスで頸から上だけ保護するより目と耳にゆとりを残し恐怖感で体全体を防護すべきではないだろうか。お母さん、くれぐれも事故には気をつけて!
日本ではぢいばあ御用達の電動アシストという中途半端な自転車が秘かな人気だが、これはペダルの付いた電動バイク。それなりにスピードも出る。次代の燃料は電気か水素だ。プリウス以来日本ではハイブリッド車が急速に増えたが、自動車産業のない台湾は電動バイクに力を入れている。2300万人の国では国内需要に限界があるのでPM2.5で汚れた大陸への進出を考えているのだろう。
音叉のマークのYAMAHAトリシティーは、前が車で後ろがバイクの変則三輪車だ。普通のバイクはコーナーで前輪をロックさせると恐ろしいことになるが、こいつはタイヤが二つあるので曲がり角でも安定感が半端じゃない、そうだ。高知ではたまに見かける程度の稀少バイクだが、まさか台湾の市場でおばさんライダーに出会うとは思わなかった。停止状態での取りまわしは厄介な気がする。
180201記