ちょっと道草 210609  写真で Go to西表島18 波照間島が最南端 ? c

 

 

 

 

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波照間島が日本の最南端 ?  170712

 

はて?! 日本国の最南端は沖ノ鳥島のはず

ここ波照間島に「日本最南端平和の碑」があるのは何故だろうと

ネットを検索しているうちに妙なものが見えました。

 

 

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日本最南端の碑 170712

 

ここを訪ねた2017年7月には

白地に赤の日の丸が印象的でした

 

 

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傷ついた日の丸  *ネットより

 

ところがネットにアップされた2018年7~8月の日の丸には、金槌か何かで叩いたような傷痕が残り、明らかな意図と憎しみが読み取れます。それが日の丸を好まない日本人によるものか、日本を憎むように仕向けられた外国人によるものかはわかりませんが、国旗をないがしろにするからには訳と覚悟があってのことでしょう。ふざけてやったのだとすれば人格に問題があります。確信犯であれば政治的意図が問われるべきです。

 

通報を受けた行政が修復したのか

民間有志がパテとペンキで塗り直したのか

2018年11月以降は元に戻っています

 

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沖ノ鳥島  *wikiより

 

それにしても波照間島

なぜ日本最南端なのだろう?

それは沖ノ鳥島ではないのか…

 

子どものころ日本は小さな国だと教えられました

下の日本地図のごとく離島を起点に円を描けば

排他的経済水域がつくる面積は広大であり

日本は決して小さな国ではありません

 

 

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波照間島の路傍に置かれた立て看板 170712

 

西の端に与那国島⇒隣に波照間島

南の端に沖ノ鳥島が見えます

 

 

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沖ノ鳥島  *wikiより

 

6000mの深海から立ち上がった沖ノ鳥島は、海面ぎりぎりに2つの島が顔を覗かせています。高潮時に海面から16㎝しか顔を出さない岩を日本人は「島」と呼びますが、Chineseは島ではなく「岩」だとして日本の排他的経済水域に侵入しました。2020年の出来事でした。

 

沖ノ鳥島は岩ではなく「島」だとする日本の主張は、国際海洋法第121条第1項「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう」を根拠にしています。ところが同法同条第3項には「人間の居住又は独自の経済的生活をすることのできない岩は排他的経済水域又は大陸棚を有しない」とあります。

 

沖ノ鳥「島」は「自然に形成された陸地」ではありますが、「人間が居住」できるか否かについては微妙な判断を伴います。上記写真の東小島、北小島が「島」であるのか「岩」であるのかは、法解釈というより法の背後にある見えない意図をどう読むかにかかってきます。

 

 

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沖ノ鳥島  *ネットより

 

それが「岩」なら日本の支配領域は12海里(22㎞)に限定されますが、「島」であれば200海里(370㎞)の排他的経済水域が設定できます。かくて日本最南端の「島」は微妙な立ち位置にもどり、その矛盾をついたChinaは沖ノ鳥島は「島」ではない「岩」だとして2020年7月、調査船を日本の排他的経済水域に侵入させたわけですが、これには伏線があります

 

 

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南沙諸島 西沙諸島  *ネットより

 

2016年にオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は、南シナ海西沙諸島南沙諸島の領有権をめぐりフィリピンが中国を相手に提訴した裁判において「中国の主張に法的な根拠はない」との判断を示しました。それを不服とした中国共産党は裁判結果を「紙くず」とし西沙諸島南沙諸島の軍事拠点化を続けています。

 

下に引用した日経記事、小原凡司氏の見解末尾をお読みになれば分かりますが、仲裁裁判所の判断は、当時、国際海洋法裁判所長を務めていた柳井俊二氏が任命した裁判官によるものです。日本人の所長が、日本人の裁判官を任命し、判決を出したのであり、これは「公正でない」「紙くず」だとして中国は非難しました。

 

だから中国が、柳井氏にやられた西沙諸島南沙諸島での遺恨を「沖ノ鳥島でやり返す、と考えることは十分にありえる話です」と小原凡司氏は指摘しています。かくて南シナ海固執するChinaが日本に対し沖ノ鳥島で意趣返しをしたと考えられ、であれば小原凡司氏は2016年の時点で2020年の事態を予測し、きっちり当てたことになります。見事な分析です。

 

 

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波照間島の「平和」の碑 170712

 

国連で平和執行と言えば

軍事行動を意味します

退却は転身、全滅は玉砕と

美しく言い替えられたこともあるので

政治の言葉は要注意です

 

*まとめ

波照間島を日本最南端とすれば

沖ノ鳥島は「岩」となり

200海里(370㎞)の円は消えます

 

それを喜ばしく思う国はどこかと考えるとき

「平和」に浮かれた正直者の善意が、他者の

悪意を誘うこともあるわけで......桑原桑原です

 

以下2020年のテレビ朝日時事通信共同通信および2016年の日経新聞の記事を全文掲示します。各社が同一のテーマをどう扱ったかを比較すれば、現在進行形のコロナ記事を違う角度から読めるかもしれません。長文です。ご興味のある方はどうぞ^^

2021.06.09記

 

 

 

テレビ朝日は「中国”沖の鳥島は岩”日本の抗議に」と題し、

沖ノ鳥島排他的経済水域内で、海洋調査を続ける中国に日本政府が抗議したことに対し、中国政府は「島ではなく岩だ」と主張しました。中国外務省・華春瑩報道局長:「(海洋調査の)理由は簡単です。とても簡単です。国連海洋法条約に基づけば、沖ノ島礁は『岩礁』であり『島』ではないからです」中国外務省は会見で沖ノ鳥島は「岩」だと主張し、「排他的経済水域や大陸棚を有するべきではない」としました。さらに、中国船の調査は「公海における調査権の履行であり、日本の事前許可を必要としない」と述べました。中国の調査船は沖ノ鳥島排他的経済水域内で日本側の抗議にもかかわらず、同意を得ないまま活動を続けています」と報道しました。2020.07.18

https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000188757.html

 

(筆者注)報道機関がChina側の意志を伝えるのであれば、公平に日本側の意志も伝えねばなりませんが、島ではなく「岩」だとするChinaの主張を3度も繰り返す一方、「日本側の抗議にもかかわらず」と書いたものの肝腎の抗議内容を付していません。いかにも朝日的なChinaよりの報道です。これは報道と言えるのでしょうか?

 

 

時事通信は「中国、沖ノ鳥島周辺で無断調査」と題し、

中国外務省の華春瑩報道局長は~日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)の排他的経済水域EEZ)内で中国の海洋調査船が無断で調査活動を行ったことを確認した。華氏は同島が”国連海洋法条約上、岩礁であり島ではない”として、周辺調査に”日本側の許可を得る必要はない”と主張した。華氏はまた、沖ノ鳥島に関し”EEZや大陸棚を有することはできず、日本の一方的主張は法的根拠がない”と従来の中国側の見解を述べた。中国は過去にも無断調査を繰り返している」と伝えました。2020.07.17

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020071701031&g=int

 

(筆者注)時事もまた「岩礁であり島ではない」とするChinaの主張に重心を置いた記事です。「日本の一方的主張は法的根拠がない」とするのであれば、その法的根拠に触れねば報道とは言えません。朝日と同類です。

 

 

共同通信は「沖ノ鳥島巡り日本が中国に反発“岩でなく島”」と題し、

日本政府は、今月上旬から中旬にかけて沖ノ鳥島(東京都)周辺を航行した中国の海洋調査船の動きを巡り、反発を強めた。菅義偉官房長官20日の記者会見で、沖ノ鳥島に関し、排他的経済水域EEZ)の基点となる「島」だとの認識を改めて表明。岩にすぎないと主張して調査を繰り返した中国に不快感を示した。沖ノ鳥島は日本最南端の無人島。波の浸食で水没する恐れがあり、周囲にコンクリートの保護壁が設けられている。国連海洋法条約が定める「島」の条件を満たすかどうかが論点だ」と伝えました。2020/7/20

https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/kyodo_nor/politics/kyodo_nor-2020072001001865

 

(筆者注)共同通信は「沖ノ鳥島は日本最南端の無人島。」と連帯止めで二様の解釈を残しています。それが無人であっても「島」であれば、国際海洋法第121条第1項の規定通り排他的経済水域を設定できますが、暮しのない「無人」の島であれば、それは「岩」にすぎず、同法同条第3項に抵触し「排他的経済水域又は大陸棚を有しない」ことになります。問題の本質を巧みに回避しつつも「島の条件を満たすかどうかが論点だ」として中国側の主張を支えています。共同通信の立ち位置が伺えます。★だったらChinaが東シナ海西沙諸島南沙諸島で何をしているかについても触れなさいよってことですが、それは言わない約束なので~~! 当方ちかごろ新聞やテレビにはとんと興味を失いました。

 

 

▼産経ニュースは「沖ノ鳥島 日本の最南端を守り抜け」と題し、

「中国が日本の島や海を脅かしているのは、尖閣諸島沖縄県石垣市)をはじめとする南西諸島の方面だけではない。

 日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)周辺の海でも、中国は海洋調査船を使って、不法な現状変更の試みを執拗(しつよう)に続けている。中国は直ちにやめるべきだ。

 中国の海洋調査船が7月9~18日、沖ノ鳥島周辺の日本の排他的経済水域EEZ)で、日本の許可を得ずに海洋調査を行った。海上保安庁の巡視船が中止を命じたが無視した。連続10日間の居座りは平成23年以降で最長である。

 調査船は遠隔操作型無人潜水機(ROV)を海中に降ろしていた。海底から資源サンプルを採取した可能性がある。同じ調査船は同月24~27日もEEZ内に戻り、航行、漂泊を繰り返した。海洋調査を続けたとみられる。

 政府は外交ルートで抗議したが、中国側は、沖ノ鳥島は「島」ではなく、EEZを設けられない「岩」だとして応じなかった。

 沖ノ鳥島は、高潮(満潮)時には2つの小島が海面上にわずかに頭を出すだけだが、国連海洋法条約第121条1項にいう、自然に形成された陸地で高潮時にも水面上にあることを満たす、れっきとした島だ。中国の主張は認められない。

 日本が天然資源への主権的権利や海洋科学調査などの管轄権を持つEEZで、中国船が勝手に調査することは許されない。この海底にはメタンハイドレートレアアース(希土類)が眠っているとされる。資源サンプルの採取は、日本の資源を盗んだことになる。

 さらに見過ごせないのは、中国調査船が、軍事目的のために海底の地形や海流、海水温などのデータを集めているとみられる点である。西太平洋上の孤島であっても沖ノ鳥島は軍事的要衝だ。沖縄と米領グアムを結ぶ航路のほぼ中間に位置しているためだ。

 中国潜水艦が沖ノ鳥島周辺の海域に潜(ひそ)めば、南西諸島や台湾海峡をめぐる有事の際、来援する米海軍の艦隊や輸送船団、日本本土への民間のタンカーや貨物船を攻撃できる。大変な脅威となる。

 安全保障と経済権益の双方を守るため、中国調査船の横行を防がねばならない。政府は、調査船を拿捕(だほ)する権限を海保に与える法整備を急ぐべきだ。海保巡視船の増強も欠かせない」と伝えました。2020.08.11

https://www.sankei.com/article/20200811-3WUMP5BXYNLVFKHGZ3TV5GQIUQ/

 

(筆者注)「中国の海洋調査船が、日本の許可を得ずに海洋調査を行った」こと。沖ノ鳥島国連海洋法条約でいう「れっきとした島」であること。海底にはメタンハイドレートレアアース(希土類)が眠っている」こと。「中国調査船が、軍事目的のために海底の地形や海流、海水温などのデータを集めているとみられる」ことに論及した詳細かつ反Chinaの姿勢を隠そうとしない報道です。

 

 

日経新聞は「中国、ハーグでやられたら沖ノ鳥島でやり返す」と題し、

「オランダ・ハーグの仲裁裁判所が7月12日、中国が南シナ海で主張する権利について国際法上の根拠がないとの判断を下した。提訴していたフィリピンの主張をほぼ全面的に認めるもの。ただし、中国の軍事に詳しい小原凡司・東京財団研究員・政策プロデューサーは”短期的には緊張を高めるもの」と見る。(聞き手は森 永輔)」として防衛に詳しい小原凡司氏の見解を載せています。2016.7.14

 

航行の自由作戦に向かう米海軍の駆逐艦ラッセン

(写真:U.S. Navy/The New York Times/アフロ)

 

仲裁裁判所が、中国が南シナ海で取っている行動についてついに司法判断を下しました。小原さんは、どこに注目していますか。

 

小原:フィリピンの主張をほぼ全面的に認めた、中国にとって非常に厳しいものであったことです。ここまで厳しいものになるとは予想していませんでした。

 

小原凡司(おはら・ぼんじ)

東京財団 研究員兼政策プロデューサー
専門は外交・安全保障と中国。1985年、防衛大学校 卒。1998年、筑波大学大学院修士課程修了。1998年、海上自衛隊 第101飛行隊長(回転翼)。2003~2006年、駐中国防衛駐在官(海軍武官)。2008年、海上自衛隊 第21航空隊副長~司令(回転翼)。2010年、防衛研究所 研究部。軍事情報に関する雑誌などを発行するIHS Jane’sでアナリスト兼ビジネス・デベロップメント・マネージャーを務めた後、2013年1月から現職。

 

 最も大きいのは、中国が南シナ海に九段線を示し、その全域に管轄権を持つとしているのを、国連海洋法条約に照らして「全て認められない」としたことです。さらに、中国が主張する歴史的な権利 についても証拠がないとしました。歴史的権利については触れないものと考えていました。

 南シナ海で中国がしている行為が違法であることが、法の支配の観点から明らかにされたわけです。この司法判断は法的な拘束力を持ちます。

 

今回の判断は、九段線内の管轄権を否定してはいます。けれども、中国が埋め立てや軍事拠点化を進める個別の礁について、どの国が主権を有しているかは判断していません。岩*1と認められた礁について、中国が主権を主張し軍事拠点化を続けることはあり得るのではないでしょうか。

 

*1:国連海洋法条約は次のように定めている。島:領海も排他的経済水域EEZ)も設定できる。岩:領海は設定できるが、EEZは設定できない。低潮高地:どちらも設定できない。低潮高地は、満潮時には水面下に没してしまうものを指す。 

 

小原:それは言えます。しかし、いくつかの岩で中国が軍事拠点化を続けても、南シナ海全域に影響が及ぶわけではありません。主権が及ぶのはその島の周囲12カイリだけですから。国際社会に影響を及ぼす大きな問題にはならないでしょう。中国が九段線の内側全体、つまり南シナ海のほぼ全域を対象に管轄権を主張していたことが問題だったのです。

 

中国は決して妥協しない

中国外交部が出した声明をどう評価しますか。「この司法判断に効力はない。中国は受け入れないし、認めない」「国際海洋法条約の権威を損ない、中国の主権国家としての権利を侵すもので、不公正だ」としています。

 

小原:「受け入れない」というのは非常に強い態度だと言えるでしょう。

 

ということは、中国が妥協することはない?

 

小原:できないでしょう。具体的な理由は3つあります。まず南シナ海の海底にある資源を放棄することができない。ブルネイベトナムの周辺に油田があります。このほかにも開発される可能性があります。

 第2に、海上輸送路を保護できなくなる可能性があるからです。

 第3は、南シナ海が持つ軍事的な意味です。中国は米国に対する核抑止の最終的な保証は、核兵器を搭載する原子力潜水艦であると考えています。しかし、搭載する弾道ミサイルが米国の東海岸を射程に収めるためには、常にこれを隠密理に太平洋で活動させる必要がある。そのためには南シナ海から米海軍の活動を排除する必要があるのです。

 南シナ海をコントロールできれば、米海軍が中国大陸に近づくことも困難になります。中国は東に向かうと米国と衝突する可能性があるため、西に活動を展開しています。一帯一路政策はその表れですね。中国は、西での経済活動にも軍事的支援が必要だと考え、中国海軍の強化を図っていますが、それでも米国には適わない。米海軍との軍事プレゼンスを均衡させるべく、米艦隊が南シナ海を自由に通過できないようにして力を削ぐことが考えられます。

 具体的な理由とは別に、そもそも中国は今回の司法判断を、「中国の発展を欧米諸国が妨害するもの」と位置づけています。中国は、南シナ海でしていることを正当な権利の行使と考えており、悪いことだとは思っていません。ゆえに、この判断を受け入れません。

 ただし、中国はこの司法判断を無視して、国際社会で孤立するわけにはいきません。欧米諸国が築いた国際秩序を変えると宣言しているからです。実現するためには他の国からの支持が欠かせません。

 

孤立できない中国はどのような行動に出るのでしょう。

 

小原:3つのことを進めると思います。第1は、フィリピンとの和解です。これが成れば、司法判断を問題にする必要がなくなります。

 

具体的には、どのような和解条件が考えられますか。

小原:フィリピンに有利な条件での援助や投資を提示するでしょう。新たに就任したドゥテルテ大統領は地方の市長として犯罪を撲滅することで力をつけてきました。次は国政の場で基盤を固めるために、経済を浮揚させること重視すると思います。ここを突くわけです。

 2つめは、「今回の判断は欧米諸国が勝手に言っているだけで、中国の行為は正当である」という主張を支持する国を増やす外交努力です。小さな国ばかりですが、既に60カ国が支持していると中国は言っています。

 特にASEAN諸国には強く働きかけることでしょう。フィリピンにあやかろうとする国が現れかねないからです。今回の司法判断は、フィリピンの主張通りになりました。さらに、中国から多くの援助と投資がやってくるかもしれない。他のASEAN諸国も「提訴されたくなかったら…」と中国に仕掛けることでしょう。

 今回と同様の司法判断が連続することになれば、中国の立場は苦しいものになります。なんとかこれを避けようとするにちがいありません。

 もう一つ注目すべきはロシアとの関係ですね。中ロ関係は相互不信に満ちていますが、中国はロシアを味方に引き込むべく動くでしょう。プーチン大統領は今頃ほくそ笑んでいるに違いありません。もちろん、ロシアは大人ですから表に出てくることはないでしょうが。

 

3つ目は何でしょう。

 

小原:既成事実の積み上げです。フィリピンが中国に対し今回の司法判断に従うよう求めたにもかかわらず、中国が従わない場合、中国を非難する国際世論が高まることでしょう。そうなり中国包囲網が強まる前に、人工島のさらなる造成や軍事拠点化を進めると思います。短期的には緊張が高まる可能性があります。

 

習近平の意向を恐れる外交部

日本の岸田文雄外相が「仲裁判断は紛争当事国を法的に拘束する。当時国は今回の判断に従う必要がある」と談話を出しています。「従う」とは具体的に何をすることを指すのでしょう。

 

小原:「中国は退け」ということです。既に出来上がっている人工島や滑走路を撤去しろとは言わないでしょうが、現状のまま立ち退くことを求めていくことになるでしょう。声明で明らかにしているように、中国が従うことはないでしょうが 。

 

中国は、外交辞令として「仲裁裁判所の判断に従う」と言っておき、フィリピンと妥協することで現状を実質的に維持するという手もあったのではないでしょうか。

 

小原:それはできなかったと思います。王毅外相もスポークスマンも、今回の件に関わった人々はみな習近平国家主席の意向を恐れていますから。

 司法判断を巡って中国の世論は二分されるでしょう。一方は、ナショナリズムを背景に司法判断に反発するもの。もう一方は、中国政府もしくは外交部の失敗を非難するものです。彼らは、「そもそもフィリピンを提訴に至らせたことが失敗だ」と2012年までさかのぼって非難するかもしれないですね。あまり表には出ないでしょうが、中国政府が恐れているのは、この後者のグループです。

 習近平国家主席は第1のグループの側につく確率が高いでしょう。そのほうが国内をまとめ、権力を維持しやすいですから。

 

今回の司法判断が中国の内政に影響を及ぼすことはありますか。

 

小原:あり得るでしょう。来年には人事のからむ中国共産党大会が控えています。中国には習近平国家主席を支持する勢力と、そうでない勢力があります。後者は、習政権を揺さぶる材料があるなら、何でも利用しようと考えるかもしれません。

 権力闘争とは別に、「外交を見直すべき」という意見が出てくることもあると思います。中国は最近、内政に集中する姿勢を示してきましたが、方向転換を促す動きが力を得ることは考えられます。

 

ハーグでやられたら沖ノ鳥島でやり返す

仲裁裁判所が「南沙諸島に島は存在しない」と判断したのを受けて、中国が「日本の沖ノ鳥島も岩にすぎない」と主張する可能性が指摘されています。国連海洋法条約は、岩には領海は設定できるものの排他的経済水域EEZ)は設定できないと定めています。沖ノ鳥島周辺の地下資源に期待する日本とっては憂慮すべき事態です。

 

小原:その可能性は高いですね。中国はやられたらやり返す国です。

 

「やられた」という意味では、日本を非難していますね。今回の判断を下した仲裁裁判所の裁判官は、当時、国際海洋法裁判所長を務めていた柳井俊二氏が任命したものです 。これを「公正でない」として中国は非難しています。

 

小原:はい。なので、中国が「柳井氏にやられた分を、沖ノ鳥島でやり返す」と考えることは十分にありえる話です。ただし、南シナ海の問題を落ち着かせることが最優先でしょう。中国は、日本はアジアの国であるにもかかわらず欧米諸国のお先棒を担ぐ、と考えて不満に思っています。

https://business.nikkei.com/atcl/interview/15/238739/071300190/