<2022年の現在史 >
ウクライナでは、短期決戦の予定が狂い、苦戦を強いられたロシアが苦し紛れに大量破壊兵器を使うのではないかとの観測が流れています。戦時の流言飛語かも知れませんが、ロシア軍は既にクラスター爆弾、燃料気化爆弾を使ったようであり、考えたくないことですが、あとはABC兵器のC⇒B⇒Aとエスカレートする可能性が無いわけではありません。
ANN ニュースビデオより(以下同)
ヒトに内在する凶暴性が国家レベルで解放されると相互確証破壊Mutual Assured Destruction(奇しくもMAD気違い)という名の核戦略につながります。やられたらやり返す。核には核で対抗するという破れかぶれの戦略です。そのためにロシア、アメリカとも5000発を超える核爆弾を保有していると伝えられますが、地球文明の破壊が目的ならそれほどの数は要らないという説もあり、われら人類の日常はMAD状態の中で営まれていることになります。
熱核戦争を防ぐ最期手段として相手国トップを暗殺する方法もありますが、それを見越したロシアには「死の手」があり、最高意思決定者の不在をAIが認識すれば、自動的に核ミサイルが世界各地に向かうとも言われます。その後の地球がどうなるかはメキシコ湾に衝突した巨大隕石を思い浮かべればよいのかもしれません。
世界を否定するために自分を殺しました
ところが「死の手」は
恨みを晴らすために世界を殺すという
恐るべき思想の産物です
ついに日本でも核の共同保有という相互確証破壊論が議論され始めました。やったらやり返されるので、やることはないとする考え方ですが、それは相手に正気が残っている場合に有効な戦略です。MADなトップが頭に来て核ボタンを押せば、報復のミサイルが撃ち戻され、この世は終わります。双方とも自滅するわけだから、それで恨みが晴らせるのかどうか、死屍累々たる光景の中でいったい何が残るのか、まさかこのような事態を本気で心配せねばならない時代が来るとは思いもしませんでした。武器技術の進展に生存の哲学が追いつかない悲劇です。
2021年5月21日付News Weekの見出しに「チェルノブイリで再び核反応くすぶる。中性子線量が上昇中」とあります。2022年3月現在ロシア軍の管理下に置かれた同原発敷地内で、ロシアの兵隊が侵入禁止区域に塹壕を掘り、強い放射線を浴びたというニュースを見ました。20代前後の若い兵士は、36年前の核事故を知らなかったのか、教えられていなかったのか、そもそもロシア軍は何を考えてチェルノブイリ(チョルノービリ)原発を制圧したのか、その目的がよく分かりません。▽4月3日現在ロシア軍は当原発から撤退したようです。
ぼくが見た操作室もずらりと計器が並ぶ静かな空間でした
建屋の床を震動させて唸る蒲鉾状のタービンを横目に
とりたててすることもなさそうな操作員がたむろする空間に案内され
「これが出力調整のメーターです」と
どこにでもあるような計器を意味もわからず見せてもらい
温排水が河口のように海へ流れるさまをみて
そのことをどう考えるべきか
整理がつかぬまま今に至ります
ANN ネットニュースより(以下同)
相互確証破壊は核の応酬を意味しますが、核爆弾はなくとも世界に434基あるという原子力発電所を通常弾頭で狙えば手軽に核報復できます。(その可能性をロシア軍がウクライナ南部の原発で実証しました) 核爆弾と原子炉のちがいは、瞬時に吹っ飛ばすか、じわじわ殺すかの違いにすぎず、ヒトが住めない世界がつくられることに変わりはありません。▽もしも福島第一原発が、水素爆発による原子炉建屋の崩壊にとどまらず、原子炉そのものが露出していたとすれば、東日本の住民は西日本または他国へ逃げる他なかったわけです。今おそろしい数のウクライナ難民がわずかな荷物を提げて周辺国へ移動していますが、あれは11年前に日本人が見るはずの風景だったのかもしれません。
文明は人間に幸福をもたらすはずでしたが
むしろヒトの野蛮性が剥き出しにされ
破壊の規模は拡大し
文化は痩せ細ったように思います
2022.04.03記 つづく