ひとり旅 230326 Korea所々➁ WBC 大谷翔平 韓国野球

 

WBC勝戦  日経新聞 2023.03.23より

WBC準決勝の対メキシコ戦9回裏、2塁に達した大谷選手は足のように太い両手を高々と掲げて吠え、村上の一打で逆転しました。決勝の対アメリカ戦9回表に登板したショウヘイ投手がトラウトに向けて投げた最期の一球はiPadでもスライダーの曲がりがはっきり見えました。

 

アメリカ野球が怪物たちの個人技の集約であることに対し、日本野球は個人技よりチーム戦です。2年計80本も打ったホームランバッターが迷わずバント出塁を企てることから、つくづく日本は和の国だなと、涙がでました。

 

勝戦に向かう前、大谷選手は仲間に向け「憧れるのはやめましょう」と語りました。アメリカ野球をリスペクトせぬかのような意外性をもって耳目をひき「憧れてしまっては超えられない」「今日一日だけは彼らへの憧れを捨てて勝つことだけを考えていきましょう」と結んだ声かけは、勝負師の心をつかみ、かつアメリカ野球への敬意を含む発言でした。あの場面でこの発言をして許されるのは大谷翔平と鈴木一郎くらいのものでしょう。

 

大谷選手の「憧れ」に対し、2006年のWBCにおけるイチロー選手は「むこう30年」発言をして韓国に敵をつくりました。両者とも仲間を鼓舞するため刺激性のある言葉を置いたわけですが、イチローの不幸は相手が韓国チームだったことです。そもそもイチローは「(韓国などのチームには)向こう30年、ちょっと手を出せないな、みたいな、そんな感じで勝ちたいなと思っています」とやんわり語ったのであり、決して韓国チームを見下した発言ではないのですが、ここぞとばかり飛びついた韓国メディアは得意の切り取り記事で憎しみを煽りました。細部の事実を局所拡大したフレーズが相手の感情に忍び込むと相互作用で憎しみの応酬になります。

 

今でもはっきり覚えていますが、2015年のサッカー日韓戦の応援席に「日本の大地震をお祝います」という横断幕が掲げられました。日本の不幸が清涼剤であることはまあ分からぬでもないが、3万人の命が失われた災害を「お祝います」と言われたらよい気持ちにはなりませんね。対日戦にかぎらず韓国では、敵選手のモノクロ写真に葬儀の黒リボンを斜め掛けし、呪いの応援をすることだってあるので、日本だけが特別の敵ではないのかもしれません。また必ずしも悪意をもって意地悪するのではなく、軽いノリで新手の応援方法を編み出したのかも知れず、むしろそれがかの国の文化であり恨(ハン)のあらわれかも知れませんが、呪われてなお敵を愛せるのはキリスト様か仏様くらいのものでしょう。ネットの書き込みは荒れています。

 

「しつこく反日をやるのはなぜか?」と韓国人弁護士に問うたら即座に「反日は政治がつくった」と応えました。国内統治のため国外に恨みの言葉を向ける政策は万国共通であり、日本だって78年前には鬼畜米英を合い言葉にしていたのだからエラソーなことは言えませんが、それにしても…です

 

毎夏大学生を連れて四国の山奥で合宿した教授に「しかし韓国には日本の文化が溢れている。韓国人は日本が好きなのか? 嫌いなのか?」と問うたところ「大好きで大嫌い」と応えました。やつら短いフレーズで笑いをとるのがうまいです。

 

別の女性教授に「戦後の韓国経済が急成長したわけは?」と問うたところ彼女あっけらかんと「隣に日本があったからでしょ」と応えました。現象の背後に何があるのか、分かる人は分かっているのですが、反日をインプットされた庶民感情が常に冷静なわけではありません。余裕を失った人心に政治が介入し、恨(ハン)の歴史家が話題を提供し、メディアが群がり、人心は攪乱され...日韓関係はややこしいことこの上もありません。

 

ところが今次WBCにおいて大谷翔平選手は「日本だけじゃなくて韓国や台湾も中国も、もっともっと野球を大好きになってもらえるように、その一歩として優勝できたことがよかった」と発言し、優勝の価値を韓国台湾中国に広げました。かりに優勝したのが韓国であったら彼らはアジアの野球国を見下したにちがいありません。また大谷の発言にわずかでも斜め下の視線を読み取ったら韓国メディアは鋭く反応したにちがいありませんが、プロレスラーのような肉体に童顔をのせたショウヘイがさわやかに語る「野球大好き論」には、あの韓国人さえ共感したようです。これは凄いことです。

2023.03.26記 つづく