ひとり旅 230911 日本所々(26) 山口県上関町 核廃物中間貯蔵施設検討地

 

 

 

 

山口県上関町  2023.08.27

 

「現在地」周防大島から

青い囲みの上関(島)へ向かいました

 

 

推進派の看板  2023.08.27

 

上関大橋を越えた道沿いの看板には

「活力ある豊かな町を原発で」とあります

かつてこの島は上関原発の建設予定地であり

推進派と反対派のせめぎ合いの場でもありました

 

 

推進派の看板  2023.08.27

 

原電を妨害する人は

上関町に来ないで

私たちは建設を望んでいます

なぜ妨害するのですか? ...とあります

 

この看板は道行く者を威圧するかの如くでしたが

2011年の東日本大震災を経て原発建設案は立ち消えとなり

2023年現在、看板は草に覆われ文字も読めない状態です

 

 

上関の尖端「田浦」へ向かう旧道より  2023.08.27

 

「白鳥は悲しからずや空の青 海の青にも~」

若山牧水の歌を想起させる良く晴れた日の午後

白鳥ならぬ鳶が羽を広げました

 

かつて瀬戸内の島や半島がそうであったように

上関もまた農民がせっせと耕した段々畑の島でしたが

やがて畑は放置され土地の樹種が道や畑を覆いました

 

 

路傍の看板  2023.08.27

 

島の一部は中国電力の所有地ですが

飛び飛びに町民の私有地があり

道はみんなのものだから

「誰が通ろうとそれは勝手ですよ」

と警備の方から聞きました

 

 

路傍の看板より 原発建設地の見取り図  2023.08.27

 

しかし原子炉2基の設置予定地であった「田ノ浦」は中国電力の所有地であり一帯は鉄条網で囲われ、行く手に何枚も並ぶ看板には「おやめください」「お願いいたします」「監視カメラ等による警備を行っています」との文言があります。敬語を抜けば冷やかな命令形であり、とりわけ「監視カメラ」の一言が気にかかります。公道を歩くだけなんですけどね…

 

福井県若狭湾にある新型転換炉「ふげん」を訪ねたとき道端の駐車場入口にバイクを停めたところ小さなレンズの付いた門柱のスピーカーから”ただちにこの場を離れなさい”と注意されました。長いこと生きてきましたが門柱に命令されたのは初めて~~!  2000年に物故した核化学者・高木仁三郎が描いた「核管理」と「監視社会」を想起しました。技術が巨大化すると人間が小さくなります。

 

 

反対派の看板  2023.08.27

 

封鎖された舗装路脇に小道があり

木漏れ日がゆれる空き地にバイクを置いて

急勾配の杣道を歩きました

 

 

中国電力敷地脇の「公道」 2023.08.27

 

所々に「立入禁止」のパネルが張られた細道で

イノシシと目があったりするとヤバイです

 

 

反対派の歓迎看板  2023.08.27

 

「道路 河川 海岸は公道です」と

スナメリが可愛く案内してくれます

中国電力所有地の鉄条網には

「立入禁止」の看板が張られています

 

 

太陽光パネルと木造小屋  2023.08.27

 

おそらくは反対派が設置した

太陽光パネルと立派な山小屋ですが

悲しいかな訪問は途絶えたらしく

草と樹木に埋もれていました

(Google mapでも確認できます)

 

「田ノ浦」につづく舗装路には警備員がいます。トンビとイノシシ以外めったに人が通ることのない道に朝から晩まで立ち尽くすのは退屈らしく、やっと出会えた人間ぼくと、さりげないチェックの後、四方山話に花が咲きました。電力の内部事情までは伝わってきませんが、話の端々から推進派と反対派の微妙な空気が感じられました。

 

見かけないバイクだが、どこ製ホンダか? 実はわたしは退職前まで自動車会社に勤務していた。家の倉庫には大型バイクを置いてある云々ここでも初対面の挨拶をバイクが取り持ってくれました。

 

この仕事に就いて3年になる。反対派の団体がバスでやって来て道の草刈りや渚のゴミ拾いをして帰ることもあった。集めたゴミを持って帰る人たちもいたが、団体によってはせっかく集めたゴミを岩の上に置いて帰るものだから波が寄せたら元の木阿弥ということもあった。おトシの方が多い。暑い日に慣れない作業をしているうちに熱中症で倒れ救急車を呼んだこともある。今年は中間貯蔵地の話が出たので反対派が集まるかなと思っていたが、意外に少ない。というか滅多に来ないのは高齢化のせいだろう…2本目のタバコに火をつけ何気なく発した「高齢化」という言葉にガンと打たれました。

 

逆にいえば若い人は、暮らしに追われ

それぞれの思想信条をもってエネルギーの本質を問う

心の余裕がないのかなとも思われます

 

 

森の向こうが核廃物中間貯蔵施設検討地の四代  2023.08.27

 

ここもまた少子高齢化の波に押され

子どもの声は聞こえず、60代はまだ若手という

全国どこにでもある「限界集落」です

 

道端の看板を見ればわかるように原発誘致のとき四代の住民は強く賛成した。しかし今は前回ほど情熱的でない。むしろ冷めた雰囲気だ。原発ならどんとカネが落ちるが、中間貯蔵地だとさあどうなんだろ、得るものと失うものを差引するとパッとしない感じだ。四代も高齢化し住民の大半が70代80代、若い人で60代だから⇒ (今更カネをもらって知らない土地で新生活を夢見るトシでもないのかなと...ぼくは想像しました)

2023.09.11記 つづく